はじめての波乗り体験
気晴らしに海に散歩に行く。街の反対側にあるビーチまで車で20分強。本当にいいサイズの町で好きだ。
海はいい。遠浅の海はもっといい。なんというか、心の状態って海みたいな液体のイメージなので、遠浅の海を見ていると心が落ち着く。音もいいし、足首を優しく触ってくる感覚も好きだ。少し前に息子たちとビーチで、波が引くたびに貝殻や石やいろんなものが転がっているのを見て、「なんか海と一緒に遊んでるみたいだね」と話したのを思い出す。
いつかサーフィンしてみたいなぁと思っていたら、なんと駐車場にボードもウェットスーツもレンタルしているとの看板があるではないか。
レンタル料金に2000円追加すればレッスンも受けられるとのことだったので、思い切って前払いの料金を払い、やってみることにした。待ち時間は40分間。ビーチを歩きながら時間を潰すことにした。
ペタペタと歩いていると、だんだんと迷ってきた。
水が冷たいな。風も濡れるとかなり寒いな。初めてのサーフィンはもう少し暖かくなってからの方がよかったかもな・・・
ビクビクの根性なしは40分間決断することもできず、トボトボと集合地まで歩いて行った。すると背の低いエディレッドメインのような青年が立っている。「あなたもレッスン受けるんですか?」と尋ねると、「いや、コーチなんだ。今日レッスンがあるんだけどやってみない?」
「Coach!」
勝手なイメージでゴツいおっちゃんか、ハンサムなおねーさんが乗り方簡単に教えてくれたら、行ってこい!みたいなレッスンだと思っていたので、ひょろっとした青年に驚いた。
全て初めての体験なのでお願いしますーと、マゴマゴしてるとニヤニヤと嬉しそうにしているエディ。本当の名前はルイ。初めてのウェットスーツは着方も分からず、やたらと伸びるしグネグネしながらようやく着ることができた。「手伝ってあげればよかったね!」とお茶目なエディ。
「海ではちゃんとサポートするから大丈夫だよ」
砂浜に移動し、5分くらいの簡単な講習を受けると、「よし、ここで練習してみよう」というので砂浜にボードを置き、ウミガメのように砂浜でパドリングをしたり、立つ練習をする。こういう時に知り合いがいないのは気が楽だ。ちょっとも恥ずかしなく、大いに砂を後ろに掻いて見せた。
さて、いよいよ海に入る。レッドメインがボードを持って先頭にたち、後ろについていく。ザブザブ。
ウェットスーツの威力に驚く。案外寒くない。「大丈夫だろ?」と爽やかに振り向くエディ。いいやつだ。
もう一度注意事項やパドリングのやり方など教えてもらい、いざやってみる。砂浜から眺めていた優しい波は、無情なまでに自然の力をぶつけてくる。最初のトライ!考える間もなく、あっけなく吹き飛ばされ、アワアワー!となるが、エディはニコニコしている。何回か一緒にチャレンジしていけばできるよ。と親指を立てる。爽やかだ。
確かに回数を重ねていくと、だんだんとタイミングが掴めてくる。そして同時に、エディことルイとのパートナー関係も良くなってくる。
エディ「OK!のれ!」
僕「イエッサー!」
エディ「パドルパドル!」
僕「パドルパドル!」
エディ「立て!」
僕「イエス!ボス!」
こんなやりとりを40分ほどやっていると本当に立つことができ、倒れそうになっても持ち堪えられたりする。
一度も同じ波は来ないってなんか本とかで読んだことあったけど、何度もチャンスをくれる波には感謝の念が芽生えた。何より、自然と一緒に遊べている感じがするのが気持ちが良い。きっとスノーボードやダイビングなんかもできるようになれば同じように自然と一体になる感じがあるのかもしれないと思った。
チラチラと時計をみるルイ君。きっと次のレッスンがあるんだろう。「疲れたからあと2回やったら終わるね」と伝えると「どんどん上手になってるから楽しいでしょう!」と返してくれる。次の仕事もあるだろうに、いいやつだ。
最後の波はなんかすごいいい感じで長く乗ることができて、めちゃめちゃ嬉しかった。
はたからみると、きっと小さな波で大喜びしている阿呆にみえるだろうが、充実した1時間30分だった。初めての体験は開眼させる。
「やってみたいことができて本当に嬉しい。いいコーチのおかげでずっと続けてみたいと思ったよ。ありがとう!」と伝えると、ちょっと照れながらも「良かった。またね!」と颯爽と走っていくエディ。やはり次のレッスンがあったのだろう。
海パンが乾くまで砂浜でぼんやりしていると、小学生くらいの子も両親とブギーボードや砂で遊んでいるのが見えた。 あと少しで家族に会える。家族とここに遊びにくる情景が思い浮かべた。