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デンマークのMaaS事情

東亮佑:著
北欧研究所:編集
2020年3月発行

デンマークは、公共交通機関やライドシェアで先進的な技術を取り入れていると思われがちである。しかしながら、実際のデンマークにおけるMaaSは、近未来のイメージより、地に足のついた取り組みが特徴的だ。例えば、デンマークでは、自転車を持って電車に乗り込める。これは、特段先進的な技術を要するものではないが、デンマークのMaaSに大きく貢献している重要な取り組みの一つだ。
デンマークでのMaaSの発達は目的ではなく手段なのである。政府発表の2050年を目標にしたスマートシティ化の実現、そして、何よりも国民のより快適で幸せな暮らしを実現することが最終目的であり、MaaSはその一つの手段と位置付けられる。
そんな国家レベルのMaaSを具体的事例と織り交ぜて、紐解いていく。


MaaSとは

MaaS発展の背景には、少子高齢化・人口減少などの問題がある。このような社会問題により、自動車の数が減り、効率化の必要性に迫られて、フィンランドでノキアが総スマート化を行ったことから、MaaSという概念は注目を集め始めた。

このようなMaaSは、広義の意味で捉えられる。広義MaaSの最終目的は、車が運転できなくなっても、年をいくつ重ねても、安心してこの街に住み続けていられるという世界観を作ることである。

それとは別に、狭義の意味でのMaaSも存在する。これには、観光型MaaSが挙げられる。観光型MaaSの目的は人口低下の著しい過疎観光地域などの地域の課題を先端技術で解決して世直しをするすべてのプロセス、「IT世直し」に貢献することである。例えば、日本では、国内外の観光客が駅、空港から二次交通(バス、タクシー、カーシェアリングなど)をスマホで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できるという観光型MaaSの実証実験を行った。近年のAIや深層学習の影響もありアルゴリズムなどでオススメをプッシュし,特定の施設に案内することなどもできるようになっており、ビジネスの面でも注目される。例えば、東急グループはスタートアップと連携して、商業施設の駐車場や伊豆蒲田間の混雑状況によるダイナミックプライシングを行うIzukoも開発中である。しかしながら、過疎地域では、高齢者が多く,オペレーション指導に苦労することが指摘されている。

デンマークのMaaS

以下にデンマークのMaaS事例を3つ挙げる。事例1は広義MaaSで、事例2,3は狭義MaaSの事例である。

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