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着物基礎知識 番外編1「今から着物販売を考えている方へ」

※この内容はあくまで1個人的な経験をもとにした考え方ですので、業種などによって差が出ると思います。いまから販売関連を始める方の参考になればというつもりで書いています。

1 まずは必要な仕入れ数。

 着物販売を始めるにあたり、とても重要(というか、すべての小売業において当たり前なのですが・・・)なのが「仕入れ」です。

 結構安易に考えて始める方がメルカリなどの台頭により多くなりましたが、それで生活できるまで売り上げを上げようとするとした場合、あとから問題になる内容になります。

 最初は親から、もしくは祖母からもらった着物や帯を出すと結構簡単に売れます。

 もちろん、色や模様や種類で売れるかどうかは左右されますが、正直、最初は簡単に売れるので「これはいけるのではないか?」と思ってしまいます。

 でも身内が持っていた着物が、たとえば母親がお茶の先生で良い着物ばかり買ってて、全部で600枚とか持っているとかになるとしばらくは持ちこたえますが、それ以外のケースで100枚程度だとはっきり言ってすぐに在庫が尽きます。

 では在庫がどのくらい必要なのか?そういった点をもっとわかりやすく、金額に換算して考えてみましょう。

 以下、まずは仮定金額を決めます。

 ・1ヵ月で稼ぎたい金額=30万

 ・1着の平均売上=3000円

 ・ネット販売での売れる基準数=出品数の1割(だいたい在庫の1割が売れていきます)。

 上記3つの仮定から計算してみましょう。

 30万÷3000円=100(つまり一枚3000円の利益なら100枚を1ヵ月で売らないといけない)。

 ここから 100枚×10割(つまり10倍)が今度は出品数の必要総数になるので、1000枚。

 ということはまず単純計算で毎月1000枚出品数の状態を維持する必要があるということです。

 この時点で、かなり大変ですよね?

 もちろん、着物なので商品の中には高額品も含まれますが、あくまで平均値でまず計算しています。

※この平均値はネット販売のみでの計算です。実店舗を持ってる場合は1枚の平均利益は極端に変わる場合がありますが、それでも在庫数に対して売れる個数の割合は1割程度です。

 ということでまずは1000枚という仮定でさらに話を進めます。

2 どこで仕入れをするのか?

 続いては1000枚の仕入れをどこで行うのか?という問題です。

 普通に考えてはっきり言って素人では「無理」です。

 ですが今の段階(※令和2年にこの記事を書いています)だとまだその部分をクリアすることは可能です。

 そこで、ここでは着物をどこで仕入れるかを書いておきます。

 a ヤフオク

  ヤフオクでは、業者が着物100枚や帯50枚などの出品をしています。

  資金がある人はそこでまとめ買いするほうが早いです。

  ただし、このヤフオクには問題があります。

  それは「まとめ販売なのでごまかしやゴミに近いものが入っている」という事です。

  はっきり言って、一部の大量販売業者は悪質です。

  その根源には「着物はもともと高いから少々汚れなどがあっても文句言うな」的な考え方もあります。

  なので100枚を2万円程度で購入した場合はそのうち80枚は売れない商品と考える必要があります。

  ということはヤフオクで買う際は写真に写っている情報だけで、仕入れた金額は最低でも取り戻す商品が入っていることを認識できないと失敗します。

  ただし、ものは考えようで、100枚を2万円ぐらいで買って、5枚程度のセット販売でリメイク用の生地素材として販売してしまうという手もあります。

  もし90枚がいまいち売れない商品としても90÷5=18。

  18×1000円の利益で18000円取り戻すわけです。

  となると残りの10枚が全部で3万の利益をあげた場合、粗利は28000円になって、とりあえずマイナスにはならないわけです。

  b 仕入れサイトもしくは問屋で購入する。

   定番の方法としては仕入れサイトに登録して購入していくか、問屋で購入するかになります。

   こちらはどちらも正規の仕入れになりますので、比較的割高仕入れることになりますが、そのかわり売る自信があるなら1級品を扱うことが可能です。

   仕入れサイトはネットで探せばありますし、問屋も探すといがいとあります。

   ヤフオク等だと良い品が破格で手に入るときもあれば、そうじゃないときもあるし、まとめ買いだとサイズもなかなか融通が利きません。

   なので、問屋等から仕入れるのは理想ではあります。

   着物販売のための問屋を探す場合は、できるだけ中古も新品も扱っている問屋に打診してみましょう。

   ※ただし、ネット仕入れではなく現地で仕入れる問屋の場合は、あまり選り好みして売れそうな品だけ購入すると「二度と来ないで」と言われます。これは問屋の性質上の問題です。昔ながらの問屋で、しかも西日本最大とかになってくるとそれだけその傾向が強いです。まとめて仕入れて、売れる商品だけ買われると、問屋は通常の販売値より安く卸さなければならないので、商売にならないからです。そこは注意しましょう。


  c リサイクルショップやフリマ販売の商品を集める。

  あまり好ましくありませんが、近場のリサイクルショップをまわってお買い得の時に売れそうな着物を買う、もしくはフリマアプリ等で素人が出している商品を購入し、しばらく寝かせてから販売するという手段がありますが、オススメできません。

 リサイクルショップをまわるのは結構時間とガソリン代の無駄使いですし、フリマアプリ等で買ったものをあとから出品するのもトラブルの元になります。

 実店舗を持っている方は実店舗用で買う分にはトラブルなどはほとんどありませんが・・。

  d 買取を行う。

  買取業者になるという手段もあります。

  ただし、ほとんどの買取業者は着物+αを狙っているのが現状です。

※+αとはつまり貴金属など、一発で利益が出る商品のことを指します。

  なので、着物だけの買取でやっていけるのは、実店舗を持っている人か、よほどネットで販売することが可能な方です。

  また、買取はどんなにサイズが小さくても買取しなければなりませんし、軽くチェックして買って帰って見てみると致命的なカビがあったなんてことも多いです。

  ということは、そのリスクもふまえて、かなり安く買い取る必要があります。

  だいたい中古業は昔は現在売れる値段の10分の1で買わないと商売にならないという考え方が主でした。

  そうなると、3000円の着物を300円で買取しなければなりません。

  買取を始めるとして、当時の人が10万円で購入した着物を300円で買うことができますか?

  商売と割り切ってしまう人は大丈夫ですが、そうじゃない人は難しいですよね。


 以上abcdの仕入れパターンを紹介しましたが、こう考えるだけで結構大変ですよね?

3 まずは在庫数の問題をクリアしよう。

 ここからは、ではどうしたら良いのか?という問題を考えていきましょう。

 たとえば在庫が1000枚必要とします。

 単純に考えて、実店舗とネットショップ1件を運営したとしたらどうなりますか?

 世間の目に触れるのは実は2倍の2000枚ということになります。

 こう考えると、もし1000枚の在庫が必要なら2店舗のうち実店舗1件、ネットショップ1件運営すれば在庫は500枚でこと足りるわけです。

 さて、この問題をこんどは現在主流?のフリマアプリで考えていきましょう。

 メルカリ、ラクマ、ヤフオク(もしくはpeypeyフリマ)で重複で出したとします。

 メルカリ、ラクマは片方だけしか見てないというのは少ないので、メルカリ、ラクマに500枚出したとしたら、1.5倍ぐらいの感覚で考えて良いと思います。

 ヤフオクに関しては、メルカリやラクマと重複して見てる人は少ないので、3つのフリマアプリに500枚を出したらだいたい1250枚ぐらい販売している形になるでしょう。

 ですが、ここの難点は在庫管理でミスが起きやすいし、3つのサイトのチェックや購入者返信などを含めて、ほぼ24時間管理してないと厳しくなります。

 ひどい時には3つのサイトでほぼ同時に同じ商品が売れた場合は、そのうち2つをキャンセルしなければならず、日本人は海外の人にくらべ、そういった部分に寛容ではありませんので、非難を浴びることでしょう。

 またそれが続くとアカウント停止のペナルティなども増えてきます。

 そう考えたら、結構リスキーなわけです。

ということで、ラクマなどは購入申請という機能がありますので、購入申請機能をONにしておけば、事前にこちらが購入承認しないと買えませんので、そういったトラブルは回避しやすいです(ただし、購入申請をONにすると売れる可能性が一気に減るという難点はあります。

 とまあ、フリマアプリだけで考えると、リスクが大きいですよね。

 ※ですが、商売している人のほとんどはその部分のリスクな招致で販売しています。

と、2パターン紹介しましたが、要はそうやって同じ商品を色々なところで出すと世間の目に触れる数が多くなるので、結果、在庫が多くなったようになるという考え方ですね。

これ以外ではやはり意地で在庫をかかえるという方法しかありません(笑)

※ちなみに無在庫販売が流行ってますが、着物などはお問合せが多い商品になります。また、フリマアプリ等での販売をお考えの方は基本無在庫販売は禁止していることが多いので注意してください(まあ、どちらにしろ、無在庫だと、在庫というリスクが無いかわりに、儲けが少ないです)。


 4 売り上げを伸ばすための仕入れ方。

 上記までは例として1着3000円という考え方で進めてまいりましたが、着物は特に物によって値段に差が出る商品です。

 見る目さえあれば、格安で着物を仕入れてほどほどの値段で売ることも可能な商品ではありますが、逆に見る目が無かったら在庫ばかり残ってしまう商品でもあります。

 とはいえ、ここではとりあえず着物の知識がある程度ある!ということで話を進めていきます(そもそも着物の知識が薄いのに販売などをすると結構損しますのでオススメしません)。

 a まとめ買い仕入れの考え方。

 まとめ買い100枚をヤフオク等で落とす際に写真に詳しく写っている商品がカビなどもない美品として考えず、ある程度シミヨゴレがあるという考えから、その状態でいくらで売れるかを計算します。

 金額を計算して、写真に詳しく載っている着物だけで仕入れ金額を、できれば仕入れ金額の倍で販売できるなら購入しても良いでしょう。

 これなら、最悪、仕入れ金額以上は取り戻せるわけです。

 ※ここで、100枚のうち10枚しか売れないという1割概念を考える人がいるかもしれませんが、それはあくまで「1ヵ月」で売れる枚数の話です。仕入れの段階ではそれは考えません。出しているうちにボチボチ売れていくので、100枚買って1年後に残るのは10枚から20枚ぐらいでしょう(もちろん、これも着物の質や柄、販売値段などで左右されますが・・・)。

 b 単品をヤフオクなどで買う。

 買取業者が良い着物を1着2000円~でオークションしています。

 もちろん、シミがあったりしますが、親切な業者はシミがどのくらいあるか説明書きがちゃんとしてあります(ただ、そういったものを書かない業者もいるのでその辺は見極めが必要です)。

 かなり良い着物であって、シミが基本目立たない、もしくは目立たない場所であるなら、普通に売れます。

 中には2000円で落とせたけど、実際昔は120万で販売されていた着物なんてパターンが沢山あるのです。

 そういったもとは高額品で、なおかつ、現在でも十分通用する色合いやがら、サイズのものを探せば、2000円前後で仕入れても、8000円~25000円(ものによっては50000円以上でも売ることが可能です)。

 ただし、この仕入れ方はとにかく知識がないと仕入れ失敗しますが、知識さえあれば、仕入れ値を大幅に超えて販売可能なので十分、売り上げを伸ばすことが可能です。

 c 買取を行う。

 買取業者になるという方法もあります。

 その場合の買取基準と考え方を例として書きます。

 まず、特にこの不況での買取の場合、買取をした商品(もちろん買取数によりますが)の数によってある程度の基準を考えなくてはなりません。

  1 10枚程度の買取の場合。

    10枚程度の買取の場合は、はっきり言って買取した合計金額の最低4倍、欲を言えば10倍の値段を1枚で取り戻さないと厳しいです。

    そうなると、全部で3000円で買取した場合、その4倍の12000円を1枚で回収できないといけないということです。

※なぜ4倍かは、後で説明します。

  2 50枚程度の買取の場合。

    だいたい50枚買い取ったとして、そのうち5枚が売り物になる商品のケースが多く、となると5枚で50枚買い取った金額を以上を取り戻さなければならないということです。

  3 100枚程度の買取の場合。

    100枚ぐらいの買取の場合は、けっこう売り物になるものが多めのケースがあります。

    というのも、相当ご年配の方は除いて、100枚以上持っているということは、それなりに裕福であったか、もしくは方々からもらっているケースが多いからです。

    そういったパターンは売れる商品が多いですので、販売する値段と照らし合わせながら買取金額を考えてください。

 d 貰う。 

  これはあまりオススメしませんが、いらないからあげるという方を地域で広く募集するという方法があります。

  これが意外に集まります。

  不動産屋とか解体業、遺品整理などをしている方で、着物はどうしようもないので捨てているというパターンは実は多いのです。

  この場合、事業者は廃棄料金がかかりますので、もらっていただけるととても助かります。

  また、個人でも着物をなんとかしたいけど捨てるに捨てられないという方がいますので、貰うことも可能です。

  今は様々な地域掲示板的なアプリなどがありますので、そこらへんで募集すると結構もらえます。

  このパターンだと仕入れ値がタダなわけですから、あとは売ることができればけっこう儲かります。

  ですが!基本的にこれらは貰っているものですので、高値で販売しているなどがバレた場合、噂になりますし、継続的に手に入るかとなるとちょっと怪しい部分です。

  また、貰う以上、カビがはえたものとか、ゴミに近いものとかでも貰わなくてはなりませんので、やっぱり大変ですよね。

5 儲かるための販売値

 着物を売る(というか物売りの場合は同じかもしれませんが)際の値段の付け方の基準を考えていかないと、仕入れるにも仕入れられないし、売るにも売れません。

 そこで、ちょっと販売値について考えてみましょう。

 まず、正直、商売としてやっていくには仕入れ値の最低4倍で売らないとすぐ手詰まりになります。

 なぜ4倍かというと、セールなども視野に入れてイベントなどを定期的に行わないと、なかなか売れないからです。

 これが新品の着物を扱うなら10万で仕入れて30万で売っておけば、半額セールしても粗利5万は儲かりますが、これを中古着物の3000円で考えてみてください。

まず、3000円で販売しているものは仕入れ値750円(仕入れの4倍が3000円なのでということは750円が仕入れ値)とします。

 3000円を半額セールした場合は1500円、仕入れ750円で計算すると粗利750円しか儲かりません。

 でも、とりあえず利益が出るのですが、ちなみにこれが仕入れ値の2倍で最初から設定していたらどうですか?

 3000÷2=1500円が売値。

 1500円から半額セールしたら750円(笑)。

 儲けどころか労働力考えたらマイナスです。

 そして、購買意欲を刺激するにはセールはどうしても必要なんです。

 そう考えたら、最低でも4倍の値段で設定しないといけないわけです。

 また、よく間違えがちなのは仕入れた商品を1枚1枚で考えてしまうケースです。

 1枚1枚の利益で考えていくと、その商品に固執してしまいます。

 そうなると、なかなか手放せなくなり、セールすれば儲かるものをずっと在庫で持ったまま遊ばせてしまうという結果になります。

 なので、とりあえずはまず全体の仕入れ値から考えてください。

 たとえば、50枚の仕入れが20000円とします。

 20000÷50=400 つまり1枚の仕入れが400円なわけです。

 これをその50枚のうちの5枚で4倍、つまり80000円回収できればまず儲けとして成り立ちます。

 また、残りの45枚を最終的に400円の倍の800円で計算すると、

 45×800=36000円

 全部トータルで116000円、ここから仕入れ値引いて96000円の儲けになります。

 こうやって考えると、セールの戦略とかが組めるわけです。

 良いものと自分で思ってもなかなか売れないケースもあります。

 そんな時、その商品に固執した考え方で商売すると、立ち行かなくなるわけです。

 なかには「いや、そのうち売れるし」と思う方もいるかもしれませんが、それは1ヵ月ごとの売り上げがばらついても良い場合の考え方なだけで、とにかく「1ヵ月で30万売りたい」という場合は、仕入れた商品がガンガン無くなっていくような売り方を考えなくてはなりません。

 そう考えていくとセール含め、できるだけ儲かるように動いた場合、仕入れ値の4倍が販売値の最低ラインなわけです。

 ただし、着物の場合は上記にあるように5枚で80000円回収できる商売ですので、必ずしも1枚1枚が4倍じゃなくていいわけです。

 そういったことを考えると、着物というのは知識さえあれば意外と儲かる商売なわけです。

※ちなみに、基本的には仕入れ値の10倍以上が理想です。4倍はあくまで最低基準ですので注意してください。

(世間には仕入れ値3000円ぐらいの商品を2倍で扱う事業ケースなどもありますが、最初は景気良いです。それは安いから。でも、人間というのは安く良いものを手に入れたら、その値段以上で買うようなことはほとんどありません。となるとそれから儲けが減り、事業維持のため割引して売り出すともう儲けはほとんどなくなっていきます。結果、倒産や自転車操業になるでしょう。自転車操業でやっていけるのはある程度の大きさの事業をやってる人だけです(笑)個人でそんなことしたらすぐ失敗します)。

6 最後に

長々と説明を書きましたが、軽く触れるとこんなところだと思います。

今回はあくまで小規模の販売での考え方です。

また、中古着物は年々減っています(というのも新品を作ってませんし、安く買った着物を洗い張りなどには出しませんから、リメイク素材か廃棄になります)。

どこまで続くかわかりませんが、今からお考えの方に参考までにと書きました。

あとはできれば融通の利く仕立て屋さんとシミ抜き屋さんなどがいると販売率が上がります(リメイクや裄出し、シミ抜きに対応できると、それだけ販売パターンの幅が広がります)。


※なお、着物というものははっきり言って「娯楽」です。現在のような景気の悪い世の中になると病気の蔓延などの要因で一気に売り上げが左右されますので、本当に注意してください。

 



  




着物の基礎知識を裏の話も含めて記事にしています。初歩の初歩から裏話まで。飾り内容無しの本音で書いています。よろしくお願いします。