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悲しすぎず、苦しすぎず

 今、カンボジアにいて大人から小さな子どもまでさまざまな病気の人たちと向き合う。
 相変わらずミャンマーは国際便は離発着せずに、都市間の移動も制限している。どこの国でも同じことが起こっていると思うけど、コロナウイルスだけをみて対応をしている限り今までは普通に治療を受けれていた患者たちは治療から遠ざけられ、あるいは治療の時期を逃しきっとたくさん亡くなってるかもしれないと思っている。特にミャンマーやカンボジアなどはテング熱やマラリアで毎年散々、多くの人命が失われていて、それはコロナウイルス対策の現状のようにここまで本気でやってなかったのに、なんでコロナだけこんなにやってるの?と嫌味をかましたくなる。
 また、元々、生活レベルも低い人も多く農業関係に従事している人も多いし、経済が悪くなっても日本人ほど自殺はしないので、こういう経済封鎖による二次的ダメージは少ないのかもしれないけど。

今日の話はそこでなく。
例えば、子どものがんの様な難病を扱えばカンボジアだと頑張っても半分程度は死んでしまう。
私たちは日本の子どもたちに対するように全く手を抜かず本気で治療に当たる。けども、この国の現状とか私たちの力不足、何よりも子どもたち病気そのものの状態によって亡くなってしまう。

 ここの子どもたちで亡くなる子も多くは手術を受け、しかし回復せず、あるいは再発し手の施しようもなく亡くなってる。もちろん、ここに来たときには既に手の施しようもない子もいる。
 ほんの小さな子どもたちが呼吸器につながれたくさんの管を身体中につながれている様は多分、普通の人たちからみるとグロテスクに映るかもしれない。
 日本では、一旦、始めた治療は誰もやめることはできない。たとえ100%死ぬとわかっていても息絶えるまではその治療は続けていかねばならない。子どもたちは美しく死んではいけない。そのグロテスクさの中で死を迎えることになる。

 その姿をいつもそばでみてなんだか悲しくなるのだ。人間の尊厳などとはほど遠いからかもしれない。
 昨日も一人の子どもが死んでいった。
多くの医療者たちがたった一人の子の生還を果たすために莫大なエネルギーを投下し毎日毎日昼夜を問わず治療続けてきた。
 この子が死ぬ前の夜、夜中に一人、この子のベットサイドに立ってこの子をながめてみた。顔は浮腫み、身体や手足も腫れている。頑張り過ぎてきた証のようだった。
 その小さな紅葉の様な右手に誰が握らせたのか小さなキャラクターの人形があった。
 その顔、その身体、その手足。
とても大切なもののように感じた。
その人形をその小さな手の中深く押し込んだ。
そして日本語で、静かな声でよく頑張った!と呟いた。
付き添っていた父親はその光景をずっと見て、別れ際に私に両手を合わせる。
でも、私はこの子を助ける力などないことを自分でよくわかっている。
胸一杯の悲しみは感じながらも、もうすぐこの子もこの親も、そしてこの子を生かそうと必死に治療している医療者たちも、この苦しみから解放されるのだと思うと打ちのめされる事はなかった。
 親たちは元々、治療を諦めていたからここまでやってもらったと感謝していた。そう思うしか家族もないのかもしれない。
 
 全力で立ち向かい敗北した時の虚無感は格別だ。
次回、同じような子どもが来てもまた、同じような戦い方しかできない可能性が高い。
 それでもまた、全力でやるしか私たちには方法がない。

カンボジアでは今も治療が受けれずにたくさんの子どもたちが亡くなっている。
たとえ治療が受けれてもその医療レベルの問題から却って死期を早めている子どもたちもあとをたたない。
 ここに集まる子どもたちはかつては医療機関から治療はできないと見捨てられていた、あるいは金銭的な問題から治療を断念せざるを得なかった子どもたちだ。
 ここで治療をはじめて生存率を0から50%までもってこれたけれど、ここからはさらに凄いエネルギーが必要になるだろう。
 きっと戦いははじまったばかりなんだと思う。

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(認定)特定非営利活動法人ジャパンハート 創設者・最高顧問。小児外科医。1995年、ミャンマーで海外医療活動を始め、その後、カンボジア、ラオスと活動の幅を広げる。現在も年間3分の2を海外活動地での医療活動にあてている。 https://www.japanheart.org/