見出し画像

アンパンマンシアターと眠らない娘

深夜二時の公園は不気味なほどに静かだった。

誰かの忘れ物だろうか。砂場にはおもちゃのシャベルがあった。
持ち主の子供はお家で眠っていることだろう。

娘はそのシャベルで砂を持ち上げては落とす遊びをしていた。
私が「おもしろい?」と尋ねると「おもしろいの。」と応えた。
娘は時折、嗚咽を漏らしながら「ヒックヒック」としゃっくりをした。

あれだけ泣いたんだ、仕方がないか。

娘は二歳半になったあたりから、夜眠るのを嫌がった。

眠るのは嫌だ。
目を瞑るのは嫌だ。
布団に入るのは嫌だ。
ゴロンは嫌だ。
寝室に行くのは嫌だ。

遊びたい。もっと遊びたい。
テレビが見たい。

電気を落としたり、眠りの雰囲気を娘が察知すると怒鳴りながら泣き喚く。


…2,3日だったらパパも耐えられるよ
でも、これが2週間とか続くとパパも弱るよーーー!!!


深夜の公園で、娘が「どうぞ」と言って木の枝を渡してくる。

私は「ありがとう」と言って、それを受け取る。

すると娘は「アンパンマン描いてほしい」と言った。

私は「良いよ」と言って、枝を使って地面にアンパンマンを描いた。

バイキンマンもドキンちゃんも描いた。

公園のライトがそれらを照らしている。

娘は「ヒックヒック」言いながらも「パパありがとう」と、大喜びしていた。

なぜだが私は泣きたくなる。

「何度も時計を見てしまう」

「明日の仕事について考えてしまう」

「娘の成長が不安になる」

「寝不足でイライラしてる」

ああ、これが子育てだ…!

そんな日々の中で、仕事帰りに西松屋で眠れるグッズを買うのが日課になっていた。

アンパンマンの枕

アンパンマンの布団

アンパンマンの布団が暑いって言うから、アンパンマンのバスタオル

天井に貼るアンパンマンのポスター

オルゴール

……

ダメでした。

娘は全然眠りません。

恐ろしい…。

湯船に長く浸かったり、仕事終わりに一緒にお散歩に行ったり、絵本を読んだり、色々試したけれど…

ダメでした。

娘よ。

人生はまだまだ長いぞ。

今は眠りなさい。

眠った方が生産性が上がるんだぞ。

……

娘は朝方にならないと眠らなくなりました。

朝方04時、05時に抱っこして外をお散歩。

気付くと眠っている。

そんな日々。

仕事が終わって、帰るのが憂鬱になっていました。

「今日も徹夜か」と。

ああ、これが子育てだ…

しかし!

そして!

運命の日!!

そんな悩みを知っていた義両親が娘にプレゼントを送ってくれた。


それが!

タイトルにある、アンパンマンシアターだ。

アンパンマンシアターはスイッチを入れると、オルゴールが流れながら、映像が天井に投影されるオモチャである。

「どうせ今回も無理だろう」

と、思いながら娘に見せると大喜び。

時刻は22時

私「アンパンマンシアター見てみる?」

娘「うん!みたい!」

布団へ行く。

22時に布団に行けた…?!

私「アンパンマンシアター、電気消さないと見えないよ。電気消す?」

娘「うん、けす!おれんじのでんき!」

電気をオレンジにする。

部屋を暗くできた…?!

これは…娘が拒絶し続けた、眠りの雰囲気…?!

私「ほら、ケムリイヌだね!コキンちゃんもいるねぇ」

娘「こきん♪こきん♪こきんちゃんー♪」

眠りの雰囲気の中で、娘が上機嫌…?!

私は妻に目配せをする。

妻は頷き、娘をトントンする。

私はオデコをゆっくり撫でる。

時刻は22時30分

娘は穏やかな寝息を立てた。

奇跡を目撃した気分だった。

妻と布団から出て、感動を分かち合いながら、久しぶりに晩酌をした。

駄々をこねる日もあったが、娘はアンパンマンシアターを付けると布団に来てくれた。

そして、眠る時間も段々と早くなり、2歳10ヶ月には22時には絶対に眠るようになった。

3歳になり、自分でお気に入りの布団を持って、寝室へ行くようになった。

3歳3ヶ月には21時には眠るようになった。

今では娘は朝06時に起きて、20時30分には眠るようになった。

嗚呼、眠れるって幸せだ。

穏やかな娘の寝顔を見ると、仕事の疲れなんて吹っ飛んでいく。

ああ、これが子育てだ…!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?