見出し画像

MUFGオンライン座談会【挑戦が生まれる市場事業本部へ】

先日、MUFG市場事業本部長・副本部長3名と、弊社CEO河合をゲストに迎えた4名によるオンライン座談会が開催されました。
今回の座談会ではイノベーティブなカルチャー醸成をテーマに、デジタル化やイノベーションについて、河合が質問に答えています。
本記事にて、その内容をご紹介いたします。

登壇者
 MUFG市場事業本部 本部長 吉藤 茂
 MUFG市場事業本部 副本部長 金森 比左志
 MUFG市場事業本部 副本部長 兼松 政司
 Japan Digital Design 代表取締役CEO 河合 祐子

Q.個人における2つのカルチャー(深化と探索)をどう融合させる?

吉藤  成熟事業の資産や組織能力を振興事業に活かす『両利きの経営』の必要性が叫ばれる中で、「深化」と「探索」のバランスをどう取ればいいのでしょうか。DXは全社員に自分事として取り組んで欲しいのですが、「探索」にフィットするカルチャーへバイアスを掛ける方が望ましいのでしょうか? 

河合 金融経済環境が大きく変化し、それに対応した金融政策やその実行手段を考えないといけない中で、「深化」だけではなく「探索」が必要でした。日々市場の情報を収集し、データを分析しグラフを何十枚も描き提案する。その繰り返しからイノベーションが生まれたと思います。「需要に応じて創り出す」、それを目的として取り組むことが結局カルチャーを変えていくことにつながります。

吉藤 カルチャーを変えるための議論をいくらしても変わらないですよね。それから、社内で純粋培養された人たちだけではなく、さまざまな背景を持つ人たちと一緒に進める必要があると感じています。

河合 多様な意見の中から開かれた考え方が身に着いていくはずです。

吉藤さん


Q.デジタル化された未来における人間の役割はどう変わる?

兼松 デジタル化について、社員と話すと、「自分たちは今後どうなるのか、どういう役割を果たしていくか」が見えていないように感じます。デジタル化されていく市場業務の中で、人がすべき役割を見出し、その役割変化に伴う新たなビジネス機会を創出できるチャンスがあるのではないかと考えているのですが。

河合 チャップリンの映画「モダンタイムス」を見てもわかるように、人類の歴史はイノベーションに不安を覚えつつも、それをこなして次の新しい世界へ向かっていく。その繰り返しで、デジタルイノベーションについてもそうなるでしょう。自分が使いこなすことで便利になる、仕事が自動化されて別のやりたいことができるようになる。そんなふうに良い面を見て単純に受け止めれば良いのではないでしょうか。私自身は、データを自由自在に操ることができるようになれば、トレーディングの才能のない私でも勝てるかもしれない、そう考えるとワクワクします。

兼松 未来志向でポジティブに考える発想が必要なんでしょうね。一人ひとりの個性に応じて背中を押してあげたいです。

河合 まずはご自身が楽しく革新に挑戦する姿を見せることをお勧めします。トップが楽しそうでなければ部下の方も楽しくはなれませんから。

兼松さん (1)


Q.本邦金融機関の特性に沿ったDX推進のあり方とは?

金森 本邦金融機関の特性、例えば「堅確な事務」を考えた場合、DXを進める上では、ゼロトレランス、失敗を許容しない文化が、チャレンジを妨げ新しいアイディアやビジネスモデルの創造にマイナスに作用するのではないかと思います。一方で、これを粘り強さとみれば、本邦企業や組織の強みと考えることもできると思います。こうした特性を活かしたDX推進へのアドバイスをいただけますか。

河合 失敗を許容しない文化が問題だとよく言われますが、日本の会社は、小さな失敗は責められますが、大きな失敗に対して実は寛容すぎるのではないかと考えています。問題はむしろ、多くの日本企業が、失敗を振り返らず経験を生かせていないことだと思います。

金森 失敗の理由を分析し、共有し、次の失敗を防ぐために役立てなければいけませんね。


Q.不確実性の高いプロジェクト、進めるか止めるかの見極めは?

吉藤 Sandboxは、成功するか失敗するかわからない不確実性の高い案件にトライするわけですが、事業化がそううまくいくものでもないと思っていますし、また時間もかかるでしょう。事業推進の可否をどこで判断すればいいのでしょうか。また、「前向きな失敗を推奨する」というメッセージが、安易なトライや負け癖がつくことにつながりはしないでしょうか。

河合 もちろん当事者の方には、100%の成功を目指して情熱を持って取り組んでいただきたいですよね。一方で組織としては確率論、例えば成功と失敗の確率が7:3だとして、3割の失敗時に損失をいくらまで許容すべきかをあらかじめ考えるべきだと思います。100%成功のシナリオしか作らないのでは、失敗を振り返って次のプロセスに生かすことにもつながりません。ご質問で思い出されるのは米国の金融機関に勤務していた時のことです。新しい案件について、いろんな確度から検討して成功、失敗のシナリオを複数準備しました。特に大きな挑戦については、必ず撤退条件を決めていました。もう一つ、新しいプロダクトにかかわる全員でリスクを取ることが大切で、全員で検討し、撤退時には全員の失敗として撤退する。そういうロジックを決めておくと迷わずに済むと思います。

金森さん (1)


Q.デジタル化が進む中で、今後可能性のある市場取引は?

金森 米国不動産投資などは、非流動性資産でありつつも、急速に市場のデジタル化が進んでいます。日本において、同様に急速なデジタル化が進む可能性を感じる市場取引、政府や当局として強力に推進する可能性のある市場について、どのようにご覧になっていますか。

兼松 金森さんの質問に関連して、私からも質問です。デジタル社会では現時点は想定できないモノ・サービスに価格がつき、その売買を行う新たなマーケットを創出できるのではと期待していますがどう思われますか? DXを活用することで幅広いお客様に対して我々が提供してきたものとは異なる新たな価値を創出し、それを市場で取引できるようにしていくという発想、すなわち我々のビジネスのネタを作り出すということを考えていく必要があるのではと思っています。

河合 私の妄想ワールドですが、今考えている新商品は3つあります。1つ目が気候変動リスクに関連するもの。例えば、天候デリバティブはどうでしょう。開発者とも言われたエンロンが倒産してしまったためマーケットが縮んでしまいましたが、もう一度挑戦してみてもいいと思います。当時と比べてデータの数も、コンピューティングパワーも違いますから。

金森 古くても新しいものにも大きな可能性がありそうですね。

河合 2つ目は、保険的なリスクのリプライシングです。今、保険の仕組みの発想そのものが変わりつつあります。例えば中国のある企業は、個人向け保険の新商品を年間100本以上生み出し、保険期間は30分というごく短期のものなど様々だと聞きます。

吉藤 保険は大数の法則で成り立つ世界ですが、保険のプライシングの前提が変わっていくと、数年後の保険の世界はどうなるのでしょうか。

河合 保険のカスタマイズ化が進んでいくと思います。リスクを数値化することで、宇宙飛行士も加入できる保険ができるかもしれません。安全運転をすれば保険料が下がるというようなテレマティクスはもっと高く評価されても良いと思いますし、データをきめ細かくモニタリングできる時代には、保険会社でなくても再保険リスクの引き受けができるようになると想像しています。そして3つ目はNFT(非代替性トークン)です。これまでプライシングできなかったものがプライシングされ、デジタルトークンで流通していく。市場規模も広がりつつあり、今まで売買の対象にならなかったものが伸びてくる可能性があると思います。

兼松 セキュリティトークンにすれば何でも価格化できる可能性がありますよね。もともとストレートボンド(普通社債)しかなかった債券も、アンダーライング・アセット(裏付資産)を価格化することで急速に広がっています。CLO(ローン担保証券)なんかはまさにそれですよね。MUFGがいろんな会社のアセットを売買する胴元になるためのトライを今から始められればと思っています。

河合さん


★変革期こそ挑戦のとき

新しいことは「超」楽しい!
河合 新しいことに挑戦するのは、「超」楽しいです。ぜひ楽しんでください。ブロックチェーンが、枯れた技術の組み合わせであるように、枯れたテーマの中にもイノベーションのヒントはあります。いろんなものを組み合わせてみる、見直してみることから始めるのも一つのアイディアだと思います。JDDには、デザイナーや、AIによるデータ分析、ブロックチェーン、プログラミングに精通したエンジニアなど様々な人材がいます。協業できそうだ!とひらめいた方は是非お声がけください。


Japan Digital Design 代表取締役CEO 河合 祐子
プロフィール米系金融機関市場部門、独立系シンクタンク、日本銀行(金融市場分析、金融機関リスク管理、FinTech、香港・ロンドン・高知勤務など)を経て、2020年11月JDDに入社。2021年3月代表取締役就任。