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栃木県那須町「森の編集室」誕生物語──化学物質過敏症の引越②

「ごく微量のさまざまな化学物質によって引き起こされる頭痛吐き気、自律神経の異常など」を「化学物質過敏症」といいます。1990年代にアメリカのビルの中のオフィスで、新築時やリフォーム後に「化学物質過敏症」は始まったと言われ、「Chemical Sensitivity=CS(化学物質過敏症)」ということになりました。

「化学物質過敏症」とは、悩ましい命名です。人の作った薔薇の香りも、庭で端正された薔薇の花の香りも、化学物質。靴下のむっとした臭いも、糞尿の臭いも化学物質。でも、すべての化学物質で健康憎悪が起きるということではありません。量やタイミング、といったことも、また単体ではなく大抵の場合複合的なものによって発症すると言われています。

過去、「化学物質過敏症」はシックハウス症候群によって、発症する人が多かったのです。建築基準法などが改定されて、24時間換気や原因物質(ホルムアルデヒド)の除去などが進み、発症者は減ったとも言われています。

でも、香害ガイダンスに伺ったある地域で、新築住宅で乳児、幼児、そのお母さんが体調を崩し、化学物質過敏症を発症したというお話を伺いました。調査をしたら室内のホルムアルデヒドなどの数値がかなり高くなっていたという事実もあるのですが、なかなか理解を得られずご苦労をされていました。

1990年代当時と比べれば数は少なくなったものの、住宅の新築、改築時はとくに注意が必要です。近年はそこに香料をきっかけとした「化学物質過敏症」が増えている、と専門医たちは注視しています。

……とここまで前振りを書いて。いやいや、このブログを読まれている方は、このようなことは先刻ご承知。そうでない方は、弊社の本を読んでくださいということで。

どうしてそんな症状がでるのか? ということについては、かつて毒物が溜まってデトックスできない人や、解毒できない人が発症する(「バスタブ説」)で語られていきていましたが、昨今は神経系統の「刺激」が注目されています。→ここだけが、今回のめぼしい情報。

原因はともかく被害があるのだ、という方を優先したいのですが、この原因を誤ったままこの症状に向き合うと、精神症状がつよくなるので要注意です。この話はまたおって書きます。

さて、生活圏のなかに「せめて柔軟剤さえなければ」という人は多い。

これは間違いのないことです。なーんだ簡単なことではないか、と思うのは初心者。近隣や職場、学校などで正攻法で礼儀正しく説明して、撃沈。という方が多いはず。

私もこの柔軟剤臭で刺激を受けます。さきほども人間の来ないはずの拙宅に郵便局員がやってきました。運悪くポストに入らない郵便物がきて、打ちのめされるくらい曝露。おいおい、2日もこもって回復に努めていた(といっても、家にいただけ)のに、一瞬にして神経をノックダウンです。

もう、口の中がしびれ、収まりかけていた咽頭炎にズドンと刺激が。どうしてくれるんだ? 先程まで、ズンと胸骨のあたりから放射するような刺激が続きました。

反応としては重度、症状としては軽度かと思われるわが身も、以前の都内近郊住宅地での暮らしは、「これで生きている甲斐があるのか」と思い詰める日も数ヶ月に一度あるようなことで。これも、あちこちですでに知った方はいると思われますが、私の症状におつきあいください。

私は家の中に柔軟剤臭があれば、その刺激で眠ることはできません。悪いことに、香料は夜中でも近隣から室内に入ってきます。逃げ出すことになります。真冬の公園の星空。真夏の公園の蚊との闘い。グランドの真ん中で幾度も見送った飛行機。偶然見つけた流星。なかなか悪くない発見もありました。

こうした経験は、症状によって反応するものによって全く違ったものになります。まず、私のように「痺れ」というのは、痛みの前兆ですのでその場はやり過ごすことができます。しかし、これが痛み、しかも強い痛みがいきなり起こるという方もいて、それはたまったものではありません。

しかし、単なる痺れであっても、暮らしは不安定このうえないものです。人里離れた無香料空間はないものか? 香害を感じる人であれば一度はそう思うことでしょう。那須で仕事が成り立つとすれば、人里離れた場所はかなりあります。人より牛の多い地域もあり、その牛が食べる牧草やトウモロコシに農薬は禁忌。ありがとう、牛さん。

田んぼには年に数回農薬の空中散布があるので、ある程度高地がよい。那須に暮らす(農薬による)化学物質過敏症の方がアドバイスをくれました。

そして、転居となれば、家探しで不動産屋さんのお世話になります。

化学物質過敏症という「聞いたことのない」症状をもつ借主への理解のある不動産屋さん。なかなかいません……よね。ご苦労されている方も多いかもしれません。

私の困難をお話しするときは、先方の反応を見ながらになり、ほぼ理解されないことを想定します。「感じない、聞いたことがない」人でも、受け止め方、言葉を交わせば、拒否をされているのか、知ろうとしてくれているのかは、なんとなくわかるものです。受け入れられない経験が重なると、それこそ敏感に感じることがあるのです。

那須の不動産屋さん……ここで、2000字を超えてしまいました。

すみません! 碌な情報も入れ込めず、続きは次回で。

偶然読んでしまって、奇妙なことが世の中にあるもんだと思う方は、ぜひ以下の本を購読してください。

私の仕事は本を作ること。作っても売れないとこうした拙文もかけません。どうぞ、投げ銭と思ってご購入ください。あなたと、あなたの大切な人にもかかわることです。p松田


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