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「那須まちづくり広場」とジャパマをつなげたのは、重度重複障害で言葉を持たなかった山口天音さん。

ここのところ、ジャパマのSNSで「那須まちづくり広場」なる高齢者住宅を中心としたコミュニティについて、発信しています。

「那須まちづくり広場」は面白い試み! 『ち・お』や『お・は』の創刊時くらいワクワクしています。

結局、自分の身に差し迫ったことに集中するのは、編集のプロではないということかもしれません。子育てで『ち・お』、教育で『お・は』と公私混同で、本作りを生業にしてきたのは事実です。

編集者生活40年、運がよかったというか、時代がよかったというか、この仕事をしていなければお目にかかれない人、口をきけない人に出会い、親しくしていただいたことは望外の喜び。

いま思えば、赤塚不二夫から山口天音まで、本当に奇跡の人ともすれちがったのでした。

山口天音さんは出産時の医療過誤で重度重複、最上級の障害を負っていて、19歳で亡くなりました。笑顔も言葉もなかった。社会にでようもなかった娘・天音さんを、家の人として共に棲まい生きた母・ヒロミ、父・平明によって人参ジュースとミルクと浣腸で生きた人です。

天音さんはなかなか勝ち気な人で、母・ヒロミさんの「抱っこ」を24時間要求し、その要求が通らないときには、息を止めるという荒技をしでかします。私が打ち合わせに伺ったときも、母・ヒロミさんが仕事をし自分を抱っこしなくなると予感したのか、目の前で息をとめみるみる顔の赤みを消したのです。

おお!と思うしかなかった私の目の前で、母・ヒロミも娘を上回る勝ち気を発揮し身長90センチ体重8キロの娘の背中を、バンバン叩きました。まるで壊れたテレビを叩くように(大昔はそうした)。「あまね! 息をしないさ〜い!」と叫びながら。

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天音さんは「息を止める攻撃」をよくしたらしいのですが、いざ亡くなる寸前にはあらゆる計器が「臨終」を示しているのに、心臓が数日とまらず医師に「なぜ、死なないのだろう」といわしめた人でもあります。

そして、この天音さんは、亡くなったあと、朝日新聞の各界で社会的貢献のあった著名人の中に混じって訃報記事が載るという、これまた偉業?を成し遂げた人です。

なぜ、そのようなことになったのか。それは連続講座にご参加いただければわかるでしょう。

かぞ解放されたい (1)

天音さんを思い出すたびに、私は「重度障害者は意思がない」と殺傷した青年も同時に思い出しています。

『ち・お』編集代表の熊谷晋一郎さんが言われた「10人の人が寄っても意思がわからなくても、1000人寄ればわかることもある」といった言葉も忘れられません。

それから、近山さんとの出会いです。

天音さんが亡くなったとご連絡をいただき、ヒロミ・平明さんの元に駆けつけると、天音さんの葬儀(お寺で僧侶なし戒名なし)のしきり役を仰せつかったのです。でも、天音さんが著名人であることを知っていた私は、「いや、それはとても無理」とお断りしました。

すると、二人は言ったのです。「大丈夫、いま、東京から大きい人が向かっているから」と。やがて、本当に大きい人がやってきました。それが近山さんでした。「ケチ、渋ちん、貧乏が武器」のお手本みたいな二人のタッグはすごかった。ちょうど10年年齢差がありましたが、これは「できうるかぎり葬式に金をかけたくない」という信念をもつ?ヒロミ・平明さんのプロデュース勝ち。

ナニワの葬儀屋のおじさんをも共犯にしていく武勇伝が繰り広げられました。ははは、このエピソードは講座ではでるか、でないかわかりません。ヒロミさんはこの天音さんの葬儀の話が大好き(みたい)ですが。

『ち・お』を編んでいたので、山口さん一家と出会うことができ、近山恵子という人とつながった。でも、葬儀のあと、銀杏の葉舞い散る浪速筋で近山さんとお別れしたあと、20年近くは再会はありませんでした(写真は左からヒロミさん、天音さん、近山さん)。

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その再会のきっかけを作ったのも山口天音。母・ヒロミさんは、娘・天音をいまでも描き続けていて、その銅版画はパリや上海でも好評を博している。それを「那須まちづくり広場」でご披露するというのだ。5年くらい前のことだったと思う。

「松田さんも一緒に行かへん?」とヒロミさんは面白そうに言った。なんで、面白そうに聞こえたのか、今ならわかります。ヒロミさんはよく言うもの。「人の不幸は密の味」って。

不幸かどうか、結末はわからないけれど、以来那須に転居するまでに至った私は、ときどきヒロミさんにもろもろの報告をしている。近山さんの野望も、私の小者ぶりも実に面白そうに、電話口で笑って聞いている。

そんな3人が数年ぶりに連続講座で再会します。みなさんも、一緒に笑ってください。P松田

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