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栃木県那須町「森の編集室」誕生物語──化学物質過敏症の引越④

早く! 肝心な不動産情報にたどり着かねば、と先を急ぎます。

私が那須町に仮転居することができたのは、昨年2021年3月のことでした。不動産情報をググっていて、見つけたのが「不動産・クリス」。それがこちら。

なにやら、アッパーな香り漂うホームページ。那須町での家探しに困り果てていた過敏症としては、縁がない感じだなあと正直そんなことを思いました。でも、一応「賃貸物件をさがす」とあります。ポチ!

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思わず、吹き出しました。すごく個性的な物件名。追いつめられて探しあてたHPだったのに、いったどなたのセンスだ?? 一度見たら、聞いたら忘れられない物件名。嫌いじゃないぞ。

そこには楽しげで、おしゃれな賃貸物件が沢山ありました。でも、今もそうですが、やはり「賃貸中」のところが多く、募集しているのは数件。でも、でも、そこで諦めてはだめということを、過去数々の転居を経験したことから思います。たとえその時、「表にだせる物件」はなくとも、偶然たまたま今日舞い込んできた物件といったこともあります。借主がある程度条件が整っている人かどうかを見て出す物件もありました。それに、その日は物件がなくても、その後の面倒をみてくださる不動産屋さんかどうかを嗅ぎ分けることも必要です。

東京都内でも、その後転居した温泉街でも、スタッフは友人たちの住まいも含めて、内見はゆうに100を超えて経験済み。賃貸だけではなく、売買も複数回の体験から、香りだけではなく、自分は物件にも鼻が利くと密かに思っています。

さて、その勘に従って、この楽しい名付けをする不動産クリスに連絡をしてみました。そして、かろうじて募集中の家の内見(家の中を見ること)の予約をすることができました。ここで過敏症ならではのハードルを越えなくてはなりません。まして、今回は都内から4時間をかけての距離。日帰りはちょっと厳しいですし、不経済。内見は気軽にはできません。

そこで、那須まちづくり広場主宰・近山さんが、那須町のリゾートマンションを所有する方を仲介くださいました。

(写真は、自宅で寛ぐ近山さん)

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まずは、そのマンションに過敏症が泊まれるかを確認する1泊を計画。

過敏症になると、どこに行くにも冒険です。行った先で目的の場所に入れない、入っても香料ユーザーが来て逃げ出すことになる、定宿にしていたホテルが「消臭スプレー」を常設し夜中にチェックアウトなどなど、目的を果たせないことは日常です。

また、過敏症は、問題が瞬時で起こることがあるのです。ふと気がついたときに、鼻の奥にマイクロカプセルが入ってしまった。超絶元気だった次の瞬間、なにものかに反応して目が、頭が、喉が痛くなる。そんなことに対応できずパニクれば、目的は遂行できません。人生がますます空しくなる。

そのため冒険には、準備が大事。けして裸で那須に飛びこんできてはいけません。まずは、一番肝心な「寝るところ」の確保です。近山さんに紹介いただいた方は、那須をこよなく愛し冬でもアロハシャツを愛用されるkさん。リーズナブルなお宿を提供くだり助けていただいたお一人です。

そこからは、一旦は、トントン拍子(って、死語?)で事が進みました。偶然、家の規模(つれあいと二人暮らしで、仕事部屋が欲しいので2DK〜)、家賃の上限、那須まちづくり広場やスーパー、新幹線駅までの距離、冬場の雪の心配などなどの条件に8割クリアした物件があったのです。

その物件は歴史ある大手別荘地内にありました。道路付けもよく管理もしっかりしているけれど、定住者は少ない。国道のある広場からは100メーターほど標高も高く、田んぼもゴルフ上も周囲にはありません。

(那須町の田んぼには8月に2回ほど農薬散布があります)

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気をつけなければならないのは、一も二も近隣の様子。管理がそれなりにされているか。フェミリー世帯か。塗装工事、シロアリ駆除が行われそうな築年数かなどなど。過敏症が長らく住むことができるかを慎重に見ていきます。この辺りはすべてクリアした物件でした。

最初に、入居を決めた家に内見に行ったとき、とくに気に入ったのは掃きだし窓と8メーター道路に向かって広いベランダ。2階に2部屋あるのも希望通り。近隣はそこそこ手入れの行き届いた、別荘使いのお宅のようでした。別荘にきてじゃんじゃん洗濯をする人もそういまい。

室内はほんの少し香りがしたような気がしましたが、締めきっていた家はそれくらいの香りがするだろうと、ここで高を括ってしまいました。窓を明けて換気をすれば何とかなるだろうと。しかし、同行していた家族の1人が、浮き足立つ私に、「本当にここでいいの?」と言ったことが少し耳に残りました。

それでも、契約をすませ、都内から持ってくる家具の配置を考えていたころまでは、順調そのものでした。ですが、それは引越前の掃除をし始めたときに終わりを告げました。きっと多少の香料が桟の上の埃についているだろうから、とつれあいが雑巾で拭き掃除をはじめ、室内の壁にいたったときからが大騒動……

2,000字を超えたところで、つづきは次回で。

不動産のクリスさんの仲介で、今月2組の化学物質過敏症の方が那須町への転居を決めました。こちらの詳細も連載します。p松田

近山さんたちと楽しく本作りをしています。もうじき、その2冊目を刊行します。老若男女すべての人に読み応えのある本です。全国書店、Amazonなどでも取り扱っています。

【OYA.OYA】からも予約できます↓



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