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11月のうた

ビルの間の空気の断層縫ふ風に欅のひと葉漂ひやまず
人影は障子の向かふを往き交ひて法会の後のしばし静けし
蛍光灯八〇本に照らされて影を消さるるコンビニの品
気のつけば吾の影もまた薄まりてレジ待つ人の列に加はる
伏見社の千本鳥居をくぐるなか吾の定めをふと思ひつつ
建礼門院使ひしとふ古井戸に紅葉の揺れて斑日の射す
境内の庭を灯りに照らされて古刹は別の夜の顔持てり
紅葉の盛りやや過ぎ寺庭は落ち葉敷かれて吹く風の音
神将の怒りの眼わが胸のうちに収めて落陽を出づ
建礼門院住みし跡とふ箱庭に幼き声の幻を聞く


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