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あぁ・・・ごめんなさい

 私は誕生日に対する大切度レベルがどうやら他の人より低いらしい。10段階なら3位だろうか。家族とか友人どころか自分の誕生日だってつい忘れてしまう。正確にいうと、日付は覚えている。今日が何月何日かも分かる。ただ、それとこれがリンクしないのだ。私にしてみれば、今日が大安とか友引ということを意識しないで日々を過ごしていることと同じ感覚なのだ。
  
 しかし、私の周囲には誕生日大切度レベル9とか10という高スコアな面々がいる。年齢を聞かれるのはいやなのに、各種SNSやLINEには誕生日を登録している。もちろん生まれ年は書かれていないけれど。そんな面々は、午前0時から正午までがどうやら勝負時間らしい。そこまでに「おめでとう」のお気持ち表明が届くか否かで、相手の中における「自分」という存在の大きさを確認しているらしいのだ。
 
 私がそれに気づいたのは、今から約5年前だった。当時から誕生日には無頓着だった私だったけれど、偶然にも朝の通勤電車の中で親しい友人の誕生日が「今日」だと気がついた。そこでなんの気なしに、おめでとうのLINEを送った。すると間髪入れずに既読が表示され、私の5文字とスタンプ1つという極めてシンプルなメッセージに対し、何十倍もの文字数とけたたましく動くスタンプが返信されてきたのだ。返信内容を要約すると、「これまでは友達として少し不安になることがあったが、これで安心した。」というようなことが書いてあった。なんだかよくわからないけど、それっぽいスタンプを返信してその時は終わった。
 
 その日のランチで同僚女性とこの話になると、その同僚から私の誕生日当日のその友人とのLINEを見返すように言われた。言われるがまま見返えして驚愕した。なんと遡ること5年くらい、午前8時前後には必ずおめでとうメッセージが届いているではないか。正確に言えば、5年以上前のメッセージは消していたのでおそらくそれ以上続いていたのかもしれない。にもかかわらず、私からは送ったり送らなかったり。送ったとしても夜9時頃に、何か別のやり取りをしていて気がついたらしく、会話の途中に「そう言えば」といわんばかりに滑り込んでいる程度ではないか。
 
 何年もの間、反応の薄い私の誕生日にメッセージを送り続けてくれた彼女を思うとさすがの私も心が痛んだ。そこで私は携帯電話のスケジューラーに彼女の誕生日を登録し、毎年、朝9時に通知するように設定した。ちなみに、30分前と5分前に予備通知も設定した。それ以来私は毎年電車の中で、いそいそとおめでとうメッセージを送るのだ。5年経っても通知が来るまでは毎年すっかり忘れている自分にも驚くが、これが誕生日大切レベル3の限界なのだ。しかし、その友人のことはとても大切に思っているので、違う努力(と言ってもリマインドは携帯電話がしてくれるのだが)で彼女になんとか報いたい。

 そもそもそのことを教えてくれた同僚は、なぜ彼女の気持ちが分かったのか。もしやと思い確認すると、彼女のLINE、SNSにも誕生日が記載されていて、私の誕生日にはおめでとうメッセージが来ている。やはり彼女も誕生日大切レベル高スコアホルダーだったのだ。私はもしかしたら私を気遣ってくれている多くの人をがっかりさせているのかもしれない。しかし、これからも私のレベルアップは望めない。であれば仕方がない、これからは「誕生日を覚えていることと、愛情の深さは別です!」ということを声を大にして伝えていくことにしよう。

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