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駅ビルのエレベーターで出会った縁

昨日、期日前投票のために最寄りの駅へ向かった。この駅は私の住む地方では少し大きめで、駅ビルの8階で投票が行われている。いつも通りエレベーターに直行するつもりが、ふとATMに立ち寄ることにした。そして、用事を済ませてエレベーターホールへと向かうと、ステッキを持ったご老人が私の前を歩いていた。

そのステッキがどこか特別なものに見えたが、彼の颯爽とした歩き方はその印象を裏切るようだった。私は無理に追い越さず、彼の歩調に合わせてエレベーターへと向かった。やってきたエレベーターに乗り込むと、ご老人が「上ですか?」と尋ねてきた。8階に行くというので、軽い会話が始まった。

「選挙ですか?」
「そうだよ。若いのに偉いねぇ」
「いえ、最近からです」

他愛のないやり取りだったが、彼が見えているのかどうかが気になってしまった。失礼かと思いつつも、「少しは見えているのですか?」と尋ねた。はっきりと覚えていないが、完全に盲目ではないとの返答だったと思う。その後の会話がとても印象深かった。

「医者にね、『あなたは歩きすぎだから杖を持ちなさい』と言われたんだよ」
「私が医者でも、同じことを言うと思います」と笑いながら返す。

8階に着いて、投票会場まで一緒に歩いた。少し混雑した会場で、私は係員にご老人のサポートを依頼した。お別れの時が来たが、彼は最後に素敵な笑顔を見せてくれた。その瞬間、未来の自分の姿を重ね合わせながら、心に温かいものを感じた。

普段は無機質に感じるこの駅も、昨日は少し違った。人との出会いが、いつもどこかで待っているのだと改めて感じさせられた。