第21回「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定について」―シリーズ2

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーション(2022年7月1日付けでコンプライアンス関連業務を、JAMPフィナンシャル・ソリューションズからJAMPビジネス・イノベーションへ移管する組織体制変更を実施しております)は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
今回は、前々回5月にお伝えしている令和3年4月28日付で、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限を2024年3月に設定」されたことが金融庁のホームページに公表されたことについての、シリーズ2となる「リスクベース・アプローチとリスクの特定について」のお話です。

■「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の改定までの振り返り
ガイドラインの策定・公表から3年が経過し、金融機関等において態勢整備への意識が浸透してきたことから、より実効的な態勢整備を行うよう、今般、ガイドラインで対応を求めている事項に対する完了期限(2024年3月)を設け、態勢を整備することが、各業態団体を通じて要請されました。

・2018年2月「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の公表
・2019年4月に一部改正。
・2020年12月11日から2021年1月22日にかけて公表し、広く意見の募集が行われ137件の寄せられたコメントを踏まえ、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の趣旨をより明確化するために改正が行われました。

今回の改正では、今まで「対応が期待される事項」であった事項が多数「対応が求められる事項」に格上げされ、2019年4月改正時よりも大幅な改正となっています。

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リスクベース・アプローチについて
今回の改正版において、各金融機関等が講ずべきマネロン・テロ資金供与対策は、時々変化する国際情勢や、これに呼応して進化する他の金融機関等の対応に強く影響を受けるものであり、金融機関等においては、こうした動向やリスクの変化等に機動的に対応すること、ならびにマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を有効性のある形で維持していく必要があることから、機動的かつ実効的な対応をとることが求められています。
各金融機関等においては、前記動向の変化等も踏まえながら、リスクベースの管理の一環として、提携先、連携先、委託先、買収先等を適時・適切に特定・評価し、リスクに見合った低減措置を講ずること、いわゆる「リスクベース・アプローチ」が不可欠とされています。

リスクベース・アプローチ」により、リスクに見合った低減措置の実行後の残存リスクが、当該金融機関等のリスク管理上許容できる範囲内に収まることを目的として、リスクベース・アプローチの意義について、「リスク許容度」という文言がこの度の改正で追加されました。

改正版 Ⅱ リスクベース・アプローチ
Ⅱ―1リスクベース・アプローチの意義
マネロン・テロ資金供与対策におけるリスクベース・アプローチとは、金融機関等が、自らのマネロン・テロ資金供与リスクを特定・評価し、これをリスク許容度(下線は筆者)の範囲内に実効的に低減するため、当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。

リスクの特定について
リスクの特定とは、自らが提供している商品・サービスや、取引形態、取引に係る国・地域、顧客の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、直面するマネロン・テロ資金供与リスクを特定するものであり、リスクベース・アプローチの出発点だと記されています。

リスクの特定に際し、具体的に対応が求められる事項として、以下のように記載されています。
① 国によるリスク評価の結果等を勘案しながら、自らが提供している商品・サービスや、取引形態、取引に係る国・地域、顧客の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、自らが直面するマネロン・テロ資金供与リスクを特定すること
② 包括的かつ具体的な検証に当たっては、自らの営業地域の地理的特性や、事業環境・経営戦略のあり方等、自らの個別具体的な特性を考慮すること
③ 取引に係る国・地域について検証を行うに当たっては、FATF や内外の 当局等から指摘を受けている国・地域も含め、包括的に、直接・間接の 取引可能性を検証し、リスクを把握すること
④ 新たな商品・サービスを取り扱う場合や、新たな技術を活用して行う 取引その他の新たな態様による取引を行う場合には、当該商品・サービ ス等の提供前に、当該商品・サービスのリスクの検証、及びその提供に 係る提携先、連携先、委託先、買収先等のリスク管理態勢の有効性も含めマネロン・テロ資金供与リスクを検証すること
⑤ マネロン・テロ資金供与リスクについて、経営陣が、主導性を発揮して関係する全ての部門の連携・協働を確保した上で、リスクの包括的かつ具体的な検証を行うこと
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■「対応が求められる事項」への対応が不十分と認められた場合には、
「ガイドライン」の要請事項に係る各金融機関の取組状況について、検査やモニタリングを通じて確認していくほか、管理態勢に問題があると認められる場合には、報告徴求・業務改善命令などの法令に基づく行政対応を含む対応を実施する旨が記載されています。

このメルマガをお読みになられていらっしゃる金融機関の方々におかれましては、本稿が貴社の取締役会や経営会議などの場における協議のご参考にしていただけるようでしたら幸いです。
引き続き、皆様方の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備」に向けた一助となりますように、シリーズでこのトピックを掲載させていただく予定です。

当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。

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