第33回「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」について(シリーズ2)

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。

今回は、先月6月にお伝えしている令和5年3月14日に提出された第211回国会における金融庁関連法律案「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(以下、「法律案」)についてのシリーズ2となります「金融リテラシー」についてです。

ご存知の通り、令和5年6月21日に閉幕した通常国会にて、今回の法律案は成立されませんでしたが、継続審議となり、今秋の臨時国会での成立を目指すことになっています。

したがって、金融商品取引業者は、法律案の課題点を理解したうえで、今回の改正点に対する適切な対応の実施準備が必要となります。

今回は、「金融リテラシー」に関して、その課題点及び改正内容について正しい理解と、今後必要となる対応について確認したいと思います。

法律案の説明資料において以下の様に「課題」と「対応」が記されています。

金融商品取引法等の一部を改正する法律案の概要

■【金融リテラシー】

「顧客本位の業務運営に関する原則」(平成29年3月30日策定(金融事業者の判断で採択・令和3年1月15日改訂)に基づき、顧客の最善の利益の追求等の取組が進められてきたが、以下の課題が指摘されているほか、「原則」を採択していない、方針等を公表していない金融事業者も多く存在している。

【課題】

〇これまで、政府、金融広報中央委員会、金融関係団体、学校、職場等において、資産形成の啓発や教材の作成等、 金融経済教育に関する取組が実施されてきたが、以下のような課題が存在している。

• 金融経済教育を受けたと認識している人は約7%

• 職域でも、確定拠出年金加入者への継続投資教育が不十分との指摘

• 長期投資や分散投資等のリスク抑制効果を認知している人は約4割

• 投資詐欺などの被害事案も引き続き散見、近時はSNSを通じた投資勧誘のトラブルも発生

• 政府、金融広報中央委員会、金融関係団体等による取組や連携を強化すべきとの指摘

• 金融経済教育の課題として、金融リテラシー調査が行われ (金融広報中央委員会、2022年7月公表)<金融教育を求める声と金融教育を受けた認識>としての以下の調査結果となっており、今回、「金融サービスの提供に関する法律」(注)にて規定が新設予定となっています。

□家計管理や生活設計についての授業などの金融教育については、「行うべき」との意見は71.8%

□その中で実際にこうした「金融教育を受けた」と認識している人の割合は 7.9%

※(注)「金融サービスの提供に関する法律」は、「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」(以下、「改正金融サービス法」という。)に改称されます。

【対応】

〇資産形成の支援に関する施策を総合的に推進するための「基本方針」を策定

「改正金融サービス法」第82条第1項において、政府は、国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針「基本方針」を定めなければならない旨の改定案が盛り込まれています。

〇「金融経済教育推進機構」を創設

「改正金融サービス法」第二節金融経済教育推進機構 第86条(機構の目的)において、金融経済教育推進機構は、適切な金融サービスの利用等に資する金融又は経済に関する知識を習得し、これを活用する能力の育成を図るための教育及び指導を推進することを目的とすることとし、金融経済教育推進機構が創設される旨が盛り込まれています。

〔機構の業務〕

•金融経済教育の教材・コンテンツの作成(家計管理・生活設計、適切な金融商品の選択・資産形成、消費生活の基礎、悪質な投資勧誘など金融トラブル未然防止策等)

•学校や企業等への講座の展開

•個人に対する個別相談•資産形成等に係る相談

•助言を容易に受けられる環境整備(顧客の立場に立ったアドバイザー)

〇資産形成支援のための国と地方公共団体・事業者の協力・連携

「改正金融サービス法」第84条(地方公共団体の施策)地方公共団体は、国の施策に準じて、当該地域の社会的及び経済的状況に応じた安定的な資産形成の支援に関する施策を講ずるよう努めるものとした改定案が盛り込まれています。

また、事業者の協力・連携に関しては、同法第85条において、事業主は、その事業に支障のない範囲内で、その従業員を対象とする国、地方公共団体又は次条(上記で説明している第86条(機構の目的))の金融経済教育推進機構による安定的な資産形成に資する制度の利用の促進のための取組並びに安定的な資産形成に関する教育及び広報に教育するよう努めるものとする改定案が盛り込まれています。

 ―金融商品取引業者としての対応―

金融商品取引業者の皆様におかれましては、今後、政府により策定されます「基本方針」への対応ならびに金融経済教育推進機構に対する協力と連携が求められることが推測されます。それぞれ、具体的な施策は今後行われる予定となっておりますが、【金融リテラシー】に関する現在の課題は、金融サービスの提供を担う金融商品取引業者においても喫緊の課題と再認識し、「基本方針」及び金融経済教育推進機構に対して積極的な対応が求められることと思われます。

当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。

以上


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