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読書日記『妄想する頭 思考する手』暦本純一 著

イノベーションが求められる中で多くの人が義務感に苛まれている。本当にその通りだと思う。自称“発明家”の著者がどのようにして新しいアイデアを生み出し続けているのか読み進めてみたい。

まずは表紙の中に青い中表紙が2枚。そして、もう1枚が「はっ」とするような銀色だ。こういう本ってなんだかワクワクする。

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まずはこの本の重要なキーワードである妄想について。
妄想をするには非真面目であることが望ましい。真面目ではいけない、でも不真面目なのではない、「非真面目」に自分のやりたいことを考えてみよう。肩の力を抜いたほうがいいということか。真面目型というのは「課題解決型」であるため面白い発想ができないのだ。

次に重要な考え方は、黒澤明監督の言葉を借りて、
「悪魔のように細心に! 天使のように大胆に!」というものだ。
天使度というのは、どれだけ大胆に自由に奔放に発想するかが妄想には大事だということで、一方悪魔度は実現するために必要な技術は高いほうがいいものができる。

妄想するにはやりたいことを言語化することが重要である。言語化したものを「クレーム」という。クレームとい言葉は苦情や抗議という意味で使われることが多いが、本来の意味は「主張」や「請求」である。
良いクレームは、1行で言い切れて、仮説として成立するもの。すでに正しいことは「ファクト」であってクレームにはならない。検証を受けるために立てる仮説でなければならない。

後半は著者の妄想を具現化した数々のプロジェクトの話である。読んでいくとなんだか自分にもできそうな錯覚に陥るから不思議だ。例えば、SF小説や超能力が好きだったという話はすごく共感した。おそらく同年代の著者だからかもしれないが、私も子供の頃、手で透視をするという話を信じて、人知れず夜な夜な訓練したこともあった(もちろんそんな能力はなかったけれど)。「ふしぎなメルモ」という手塚治虫のアニメに没頭し、キャンディー(とよばれるけれど見るからに怪しい薬)のすごい力に魅了された。これが薬剤師になったきっかけだったのかもしれない。

まとめると、頭(脳)は天使のように大胆に妄想するために使う。そして実体化するために手(技術)は悪魔のように細心に磨いていく。良いクレームができればアイデアとなりビジョンとして繰り広げることができる。
読みやすいのに、密度が高い。いい本と出会えた。

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