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読書日記『裏道を行け』橘玲著

副題は、ディストピア世界をHACKする、です。
全著『無理ゲー社会』で残酷で生きづらい世界が解き明かされました。
続編となるこの本では、そんなディストピア世界を攻略する方法について考えてみています。

現実は、攻略不可能な「無理ゲー社会」。
だから、ふつうに生きていたら転落します。
そこで、裏をかく(HACKする)必要があるのです。

HACKの例としてはじめに「PUA:ピックアップアーティスト」を取り上げます。いわゆる「ナンパ師」ですが、これもそこそこ成功率の高い攻略法があって日本では「恋愛工学」とも呼ばれています。
しかし、世界的なPUAたちは、ほんとうの愛を手に入れることができたのか?

金融市場をHACKしようとしている人もたくさんいます。
ごく簡単な仕組みを利用するだけで、莫大な資産を築いた人もいます。
無理ゲー社会では、知識社会から取り残された人がそのツケを払っているとも言えるのですが、果たして幸福感とはどこにあるのか考えさせられる問題です。

また、社会をHACKしようとする前に、ヒトの脳はHACKされやすいものだという事実を突きつけられます。ゲームやギャンブルは報酬系をHACKしてヒトの脳をいとも簡単に依存症に陥れます。特にマシン・ギャンブリング(スロットマシーンなど)は自分でコントロールしていると錯覚するため、よりハマりやすいのだとか。

ギャンブルをしなくても、スマホ中毒になる大人はたくさんいます。
特にSNSは、評判をリアルタイムで可視化するというイノベーションで脳の報酬系に極めて強い刺激を与えているそうです。

では、自分をHACKしてレベルアップすることは可能でしょうか。
自己啓発、という言葉の発祥がここで紹介されています。
個人的には、この部分がとても勉強になりました。
マズローの欲求5段階説については聞いたことがある人もい多いと思いますが、マズローがたまたまエスリンを訪ねていなければ、この学説は完成しなかったかもしれません。
そして、巷で数多く開催される自己啓発セミナーもここに原点があったのかと思うと、高額セミナーとか受けたくないかも。真実とは何なのかわからなくなってしまいます。

最後に、可能な限りHACKして常識やルールの「裏道を行け」となります。
デジタル面を含めたミニマリズムで不要なものと関わらない。
経済的自立ができたらFIRE(早期退職)することについても異議を唱えています。あえて失業する必要はないというのです。
それはもっともだな、と感じました。
経済的自立したら、好きな仕事(社会活動)を通して大きな評判を得ていく、という姿の方がいいのではないかというのです。
すでに、そのような人たちは存在していて、ブルジョアとボヘミアンを掛け合わせたBOBOS(ボボス)というニューリッチ層がいます。

ミニマリストやFIREの運動は、フリーエイジェント化した(個人事業)BOBOSというクリエイティブクラスに行きつき、これが主流になるかもしれません。

お金があふれ、欲しいものがなくなってきた世界では、その仕組みを狙ってHACKし、経済的自立を果たす。
そして、富から評判へ。
それが残酷な「無理ゲー社会」を生き抜く生存戦略なのでは、というものでした。

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