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「 数多ある花たちの中で 」

 日の加減か花の向きのせいか。
 散歩の途中ふと花に目をとめたとき、数多(あまた)ある花の中で一輪だけがやけに強い存在感を示し目に入ってくるときがある。
 そんな花を見ると、趣味の写真家としてはやっぱり一枚撮っておきたくなる。
 そしてそういうときは、できるだけ飾らず、花が目にとまった位置で、真っ直ぐ正直に撮るのが良いと私は過去の経験から学んだ。
 もちろん、それでいつも花から感じた感情が写るというわけでもないけれど、花はもともと美しいものなのだ。
 だから、ことさら脚色したり、手練を加えたりするのは違うなあとそもそも思うのだ。
 そうして真正直に撮った写真が、その日、その花から感じた想いや刹那をきちんと撮れているように思えたら、それは写真を撮る人として幸せなことだなあと思う。
 これは、そんな喜びを感じた一枚ではありました。

@杉並区

●撮影ノート
「AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED」+「FtZ」+「Nikon Z6」
焦点距離:210mm
FNo:5.3
シャッター速度:1/500
合成ISO:280
合成露出補正:-0.3EV

 この写真の肝は、歩いていて花が目に入ってきて「あら綺麗」と思った風景をそのまま表現することだと思います。
 同時に、たくさん咲いている花たちのなかでこの花だけ目立っていたといいますか、スポットライトが当たっていたかのように見えたという存在感の表現もでしょうか。

 で、この写真においては、前者の「「あら綺麗」と思った風景をそのまま表現する」というのは、まず撮影時はレンズが大事だなと私は思いました。
 というのも、「たくさん咲いている花たちのなかでこの花だけ目立っていた」というのを簡単に実現するにはレンズのボケを使った表現を使うのが手っ取り早いわけです。
 主役にピンを置いて他の花はボカすというヤツですね。
 ただこれ、他をボカすこと自体は望遠系のレンズを使えば簡単なんですが、前後のボケがどちらも綺麗なレンズじゃないと良くないといいますか、ボケに縁取りが付いちゃう系だと、ボケのザワザワした感じのほうが目立ってしまって、主役の存在感を食ってしまいます。
 ということで、まずは前後のボケに縁取りが付かないこと。
 そして、花があまりキリッとしすぎてしまうと肉眼で見た風景とはまた違ってきちゃいますので、解像感はほどほどで、花びらが適度に柔らかく見えるレンズを選ぶといいかなと思います(そのために、この時ばかりはいつものレンズから付け直しました)。
 また、こういう風景の場合、私のカメラだと色飽和が起きやすいですし、そもそもこの日は厚曇りで暗めだったので、露出はやや落とし気味にしています。

 一方で現像時は、デフォルトだと曇りの日の風景としてはコントラストが強すぎるので、やや落とし気味に。
 逆に、私としては珍しく、色味はやや上げています。
 また、解像感は適度に残しつつも、肉眼で見ていたときの花の高輝度部分のふんわり感は出したかったので、高輝度部分限定でS字っぽいトーンカーブにしています。
 見映えを意識するなら葉っぱのテリの部分を強調してもいいかもですが、肉眼で見たときはそれほどでもなかった(道路に面したツバキの木だったからでしょう)ので、今回はほどほどで。
 私の写真は、特別な状況が来たときのためにも、その日の“程度”が大事なので。

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