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ご飯ちょうだい

「 ご飯ちょうだい 」
 そろそろ夕闇が迫ってこようという頃の、公園の切り株の上。
 一見、イチャイチャしているカラスのカップルに見えますが、実は親子なんです。

 カラスの子育ては、通常は初夏の頃から今月いっぱいくらいまです。
 ところが一方で、巣立った幼鳥のなかには、もう「アンタそれ親よりおっきくなってない?」と思うほどに育ってもまだ親から餌を貰おうとするものがいます。
 詳しい期間を観察したことはないですが、冬間近になってもまだ親のあとを付いて回っている巣立ち雛(見かけはもうとっくに大人ですが)らしいカラスを見たことがあるので、他の鳥と比べると、カラスはかなり長い期間親に餌を貰って暮らすようです。
 このへん、他の鳥が年に複数回繁殖をするのに対して、カラスは繁殖が成功すれば通常一回だけなのが大きな理由とは思いますが、彼らが知能の高い鳥であるというのも若干は影響している気がします。
 一般には怖い鳥として知られがちなカラスですけど、つがい同士の仲睦まじさや子育ての際の母鳥の愛情の深さなどはヒトのそれに似たところもあり、知能が高いゆえに、感情に近いものをもってつがう相手や幼い子を慈しんでいるんじゃないかと思ってしまうほどです。
 でまあ、そのぶんもしかすると、自然界の常よりはちょっとだけ過保護な親鳥みたいなものもいるのかもしれないなあなどと思ったりするわけです。
 親鳥のほうも、普通なら巣立って一月もすればそろそろ餌を貰いにくる子を追い立て始めるんですが、変に甘い場合もあるようですし。

 ちなみに都会のカラスは人間への攻撃性でも知られ、というよりそのために嫌われることも多いですが、カラスがヒトに対して攻撃的になるのは専ら子育ての一時期。――子がまだ卵の状態だったり巣立つ前の一時期のみのようです。
 ようは子供達がまだ身動きもままならないがゆえに、親鳥は、体重で言えば50倍以上の相手に決死の威嚇をしにきているという状態なわけです。
 これ、他の生き物であればまず自分のほうの身を守る行動をするのが当たり前な状況だと思うんですが、このへんも実は、カラスの愛情深さを示している行動と言えるのかもしれません。

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追記
 このカラス達、見ている感じでは切り株に生えているオレンジ色のキノコをかなり熱心に食べているようでした。
 このキノコ、ちょこっと持ち帰って調べてみたところでは人間が食用とするには適さない類いのものみたいなんですが(毒性は無視できる程度に低いものの、硬い上に無味無臭で食べる価値なしらしいです)、食べる者の多いこの時期に親子で延々、割っては食べ割っては食べしていたところを見ると、カラスには有用な食べ物なんでしょうかねえ。

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