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震災×生活保護の闇を描くサスペンス「護られなかった者たちへ」

昨年公開した映画「護られなかった者たちへ」を観ました。日本アカデミー賞優秀作品賞をはじめ多数の賞を受賞した作品です。

とても心に残るシーンが多かったので書き残します。

舞台は東日本大地震から9年後の仙台。阿部寛演じる刑事が、不可解な連続殺人事件の謎を解明していく中で、東日本大地震後の人々の生活や、生活保護の闇が明らかになっていく物語です。

物語では東日本大地震で家族を亡くした人たち、それをサポートしようとする福祉保護事務所の人たちがたくさん出てきます。

各々なんとか状況を良くしようと必死に生きる姿がいろんな角度から描かれており、震災の辛さを立体的に感じました。


ここからはネタバレ含みます。



生活保護で足りるのか?

個人的に作中で特に印象深かったのが、生活保護を受けながらパートで収入を得てるシングルマザーの話です。事務所の人にパートの収入があるなら生活保護は止めると言われますが、娘に塾を通わせたい、娘が学校で虐められていると言って食いつきます。あなたさえ黙っていてくれたらいいのと。

生活保護が受けられたら生活はできると勝手にイメージしてましたが、生活保護の収入ってほんと最低限のお金ですよね。ましてや中高生の娘がいたら、贅沢しないまでも、他の子と同じように最低限のことはさせてやりたいと思うはず。

恥の文化とスティグマ

「スティグマ」という言葉が出てきます。これは偏見や差別を指し、作中では人の助けを借りることを恥と感じ、生活保護を受けない精神という意味合いで使われます。
日本は生活保護の受給率が他国にたいして圧倒的に低く、日本の恥の精神がそれを後押ししていると。生活保護を受けるときに傷つく人の気持ちも考えないと、ただお金を渡すだけが保護じゃないと考えさせられました。

犯人の訴えが刺さるラスト

そんなままならない現状を犯人が訴えます。生活保護は最初で最後のセーフティーネットだと。だから職員は責任を持たないとダメなんだと。
助けられるほうもきちんと声をあげなければいけないと。声をあげれば誰かが助けてくれる、というのも真理をついているのと同時に希望を残してくれていて辛いだけじゃないラストにぐっときました。

見る角度によって違うだけで、困っている人を助けられるなら助けたいと思ってる人のほうが多いだろうし、みんな誰かに支えられて生きている。 

ただ声をあげなければ誰も助けられない、助けたくてもなかなか助けられない、ということもあるだけで。

伏線回収してきちんとサスペンス!

そんな生活保護の裏側を描きながらも、作品全体はきちんとサスペンスでした!阿部寛演じる刑事がぐいぐい事件の真相に迫るのと、被災した人たちを演じる佐藤健や倍賞美津子の熱演で物語に奥行きが出て引き込まれます。

テーマは震災に生活保護と重いですが、しっかりそれらを描きつつサスペンスとしても楽しめ、非常に見応えのある作品でした。

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