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スナイダーカットの第5章のサブタイトルが「王の馬」になっている理由

『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』は6つのパートに分かれていますが、パート5のみサブタイトルが難解だったので解説します。

◆◆ ややネタバレ注意 ◆◆

なぜパート5は馬なのか

公開前に明かされていた情報ですが、スナイダーカットにはサブタイトルがあり、その原文は以下のようになっています。

PART 1: DON'T COUNT ON IT, BATMAN
PART 2: THE AGE OF HEROES
PART 3: BELOVED MOTHER, BELOVED SON
PART 4: CHANGE MACHINE
PART 5: ALL THE KING'S HORSES
PART 6: SOMETHING DARKER

これを直訳すると

第1章: あきらめろ、バットマン
第2章: ヒーロー達の時代
第3章: 愛された母親、愛された息子
第4章: 変化させる機械
第5章: すべての王家の馬たち
第6章: もっと恐ろしい何か

となりますが、他の章は映画のストーリとある程度一致しているので分かりやすいタイトルですが、第5章だけは謎です。なぜ馬なのでしょうか。

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有名な童謡からの引用だった

実はこの All the kings horses というのはある有名な童謡の一節から引用したものなのです。

その童謡とは、『ハンプティ・ダンプティ』です。

ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』にも出てくるこの童謡の歌詞は以下のようになっています。

Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.
ハンプティ・ダンプティが塀に座った
ハンプティ・ダンプティが落っこちた
王様の馬と家来の全部がかかっても
ハンプティを元に戻せなかった

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割れてしまった卵は元に戻せない、というお話ですね。

スナイダーカットの第5章はスーパーマン(とロイス)の復活を描いた章です。復活したスーパーマンは自我を失って混乱しており、ジャスティスリーグの意に反して戦うことになります。暴走するスーパーマンは強く、リーグのメンバーが全員でかかっても止められませんでした

つまり、この第5章のタイトルは、塀から落ちたハンプティ・ダンプティを一度堕ちたスーパーマンに、王家の馬をリーグのメンバーに見立てて、死んだスーパーマンは元に戻せないことを暗示するタイトルなのです。

映画ではどんな会話だったか

スナイダーカットでは全てのサブタイトルがそのパート内の台詞で出てきます。この第5章ではアルフレッドの台詞でした。

You did it!
You put the team together to fight this war.
You've fulfilled your promise.
But to try to do that... I mean... your guilt's overcome your reason.
"Not all the king's horses nor all the king's men..."

Alfred, for once, I'm operating strictly on faith.
Not on reason.
あなた様はやり遂げました!
この戦いに挑むため(超人たちの)チームをお纏めになりました。
もう彼(クラーク)との約束は果たしています。
それなのにこんなこと…あなた様は罪の意識のあまり道理を超えています。
古い歌にもあるでしょう「王様の馬と家来の全部がかかっても…」

アルフレッド、一度だけでいい、信念にしたがって行動させてくれ。
これは道理じゃないんだ。

ここでは「確実に」成功する保証がないのにスーパーマンを蘇生しようと決めたブルースに対して、アルフレッドが警告します。そこでアルフレッドが「All the king's horses and all the king's men」の一節を引用します。ブルースたちがベストを尽くしても蘇生しないかもしれないし、下手をすれば宇宙船ごと大爆発するかもしれないし、そもそも死者を生き返らせることは倫理的に正しいのか。しかし少なくとも、マザーボックスを起動すればステッペンウルフに検知されることだけは確実です。あまりにも危険な賭けです。

あと英語圏では単純にハンプティダンプティは「壊れたものは元に戻らない」という慣用句やことわざのように使われることがあるようです。

読書が好きな人って強いですね

私は映画を観ただけでは意味不明だったので、調べて分かるようになりました。しかし、こういう時にはもっと本を読んで教養をつけておけば良かったと、いつも後悔します。

『鏡の国のアリス』は他にも引用されることが多い作品なので、たぶん英語圏で幼少から育った方なら、「All the king's horses」と言われただけで、ピンとくるのかもしれません。(だとしたら、第4章でリーグがスーパーマンの蘇生を決議した瞬間にドンッと画面が暗転して、そのまま第5章のサブタイトルが出てくるので結構ヘビーな演出に感じると思います)

日本の文化圏で同じような例を挙げるとすれば、「絶対に見てはいけませんよ」とかですかね。これを聞いただけで多くの日本人が『鶴の恩返し』の物語を想起できると思います。他にも「絶対に開けてはいけませんよ」と言われれば、浦島太郎の玉手箱を連想できますよね。「大きな箱と小さな箱どっちがいい」と問われれば舌切りスズメを思い浮かべますよね。

なんかもうちょっと教養レベルが高そうな気もするなあ。『かごめかごめ』の前半を歌うだけで、黒幕がいること(後ろの正面だあれ)を匂わせる、みたいな感じかなあ。少なくとも雰囲気とか格調の高さはそのくらいありそうです。日本語でちょうどよい例が思い付いた人は教えてください。笑

かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ

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ちなみに、先日に投稿した私のスナイダーカットあらすじまとめ記事(↓)ではハンプティダンプティを考慮して、勝手にサブタイトルを大胆に意訳していました。(まだ日本語字幕を見る前だったこともあり)笑

了。

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