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鳴いた鳥は海と雲と太陽で、もう笑う

2月6日

経理業務に苦戦している。
フリーランスで仕事をするようになって8年目。これまでふんわりとやりすごしてきたことが、自分の意識や国の制度とともにすこしずつ変わってきた。
支出と収入という考え方から、「売掛金」という欄に未回収の金額を入力するようになった会計ソフト。請求金額の入金分を登録するのに四苦八苦する(ていうか、できない)。
迫害されている……。ひとりでパソコンで解決を見ない問題と向き合っていると、大げさで被害的な気持ちがむくむくと浮かんでくる。


2月7日

羽田空港に向かう都営浅草線。地下から地上に出る品川駅で、朝日の光線をピッカー! と浴びて「まぶし!」。すっかり目が覚める。

機上のひと。機長の挨拶で、富士山がきれいに見えることを知る。

ふわふわの雲を抜け、飛行機は着陸態勢へ。
綿菓子みたいな雲なのに、中に入るとなぜ風がびゅうびゅう吹いているんだろう?
そんなことを思いながら、身を委ねて気がついたら着陸していた。
島根県益田ますだ市に位置する、萩石見はぎいわみ空港。羽田から1時間半のフライトだ。

空港ほど近くのゲストハウス「ハレテル」にやってきた。
チェックインを済ませ、カフェエリアの窓側に座って過ごす。本を読みながら、ときおり窓の外の海を眺める。曇ったり、晴れたり。雲の動きや明るさが見るたびに変わる。
あの雲は、内視鏡でのぞいた内臓の中みたい。ぽっかり四角い穴があいていて窓の外の窓みたい。
晴れ間が見えると嬉しくて、曇りは曇りの迫力がある日本海。何時間でもぼーっと見ていられる(たぶん3時間過ごした)。

午後は、口紅(色付きのリップクリーム)手づくり体験を。いまの自分に合った香りのアロマと色を選んで、口紅の型に流し込む(わたしはオレンジ系)。

窓に目をやると、青々とした葉っぱのついた大根を抱えて、黄色い帽子をかぶった小学生が海沿いの道を歩いている。

講師は「KURASPA」のサカモトさん。ヘッドスパを生業としているそう。こちらもやってもらいたい……。
できあがったばかりのリップを塗ってみる。みんな、めちゃくちゃ似合ってる……! わたしも褒めてもらう。

さらに、同じエリアのなかにあるサウナ「SAUNA BREEZE」へ。サウナ好きのオーナーによる施設で、外気浴は海を眺めながら。波の音が雲に反響しているのか、雷の轟のような音も聴こえる。
雨が降り出す直前の夕暮れ時。雲の色が一層濃くなっている。

「ハレテル」に戻り、夕食は手づくりの糀調味料をつかったスペシャルプレートを。車麩の糀からあげカレー風味、大根の和風ガレット、かぼちゃのゴマ風味、菊芋ともち麦の玉ねぎ糀スープ……。
食卓を囲んだ方々と、益田への愛を熱弁する。

この日はこれで終わらない。ヨガと写経もやったのだ。しかも、カフェで美味しいごはんをつくってくれたユミコさんが、どちらのガイドもしてくれた。
すっかりゆるんで、22時前にはうとうと……。

ユミコさん。このうえ占いもできるという。多芸多才。

この旅のきっかけをくれた、ハレテル・オーナーのモリイさんとの乾杯を辞退し、そのままバタンキュー。
だって、このゲストハウスは寝具がすごいんだもの。世界各地を旅してきたモリイさん。「ドミトリーでも個室でも、寝具がよければぐっすり眠れる」という彼のこだわりによって、選ばれたベッドマットと枕なのだ。
それはもう、堂々と10時間眠った。


2月8日

海と雲と太陽に、おはようございます。
誰もいないカフェスペースで、残りの写経を書く。差し込んでくる光。

9時、ユミコさんが出勤してくる。昨日の御礼と感想を伝える。
「ゆるむと、生まれるものってあるよね」
たしかに。いま、この体験を書きたくってしょうがなくなっている。

ハレテルのふたりにすすめてもらって、隣のコワーキングスペースへ。そこで、これを書いている。
ハレテルも含め、ここ一帯は「NALU」という複合スペースになっている。ゲストハウス、コワーキング、2棟のコテージ、そしてサウナ。

昨日からの滞在で、おおいにゆるみ、英気を養い、満喫させてもらった。

……そういえば、一昨日は経理の沼にはまって、泣いていたな。これは兆しだったんじゃなかろうか。そう思えば、苦手な経理処理、これからもがんばれる気がする。


special thanks :ゲストハウス&カフェ ハレテル
モリイさん・ユミコさん
一般社団法人 益田市観光協会
「心も身体も癒す旅 ヒーリング*リトリート」


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