腕を組んで歩く
自分ひとりで生きている、そんな気になっていた。
先日、祖母・やえばあと築地にある浜離宮朝日ホールで行われたランチタイムコンサートに行ってきた。
ソプラノ歌手とピアノ伴走によるコンサートで、「笛……?」と思われるような自在な歌声と、柔らかなピアノが心地よい。指で拍子をとったり、たまにうとうとしたり。
なかでも、ラフマニノフの「前奏曲 作品32-5」のピアノ独奏がよかった。繊細な音がホールに響き渡る。
終演後、やえばあと腕を組んで築地を歩く。このあたり(東銀座)はやえばあの生まれ故郷。
「前はね、『木挽町』という素敵な名前だったのよ」
「子どものときは、この橋を渡って向こうには行っちゃだめって言われてたの。なんでかしらね、花街だったからかな」
いま首都高になっているところは、昔川が流れていたらしい。
やえばあと歩きながら、この場所のかつてを想う。
お昼は「つきじ宮川本廛(本店)」をごちそうになる。
ここでもたくさんおしゃべりをして、お腹も心もいっぱいに。
やえばあが会計に立ったすきに、メモをする。
「家族、友達、仕事仲間を分類するのは、違うんだ。等しく対ひと、ということで、敬意をもっていたい」
わたしは一人では生きていない。
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