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昼の夜市に行ってみた(台北・臨江街觀光夜市②)

朝の夜市を離れ、しばらく散歩をした。
定点カメラのように朝、昼、晩の夜市を見るつもりだったが、緩急も大事である。

その間、偶然見つけた近代中国の父、孫文を祀る「中山記念堂」を見てまわったり、庭園を眺めたりした。
だがその辺りの話はまたいつかにしよう。
言えるのは、そうこうするうちに、腹が減ってきたということだ。

中山記念堂内の孫文像

勇み足で「夜市」に向かう。
その途中、餃子スタンドがあった。
「Green mustard − 酢漬けの」
などメニューもちょうど良く怪しい。
気にはなるが、昼の夜市で何かを食いたい。

昼の夜市

昼の夜市にたどり着く。
人口密度は朝の数倍になっている。
雨もちょうど良く止み、なんともいえない蒸し暑さが市場の熱気と一体化している。

雨上がり、蒸し暑くなった昼の夜市

客層も少し変化した。
朝は買い物をするおじさんやおばさんだったが、昼になると昼休みのビジネスマンや若者も増えている。
とはいえ、観光客は少なく、台北で生きる人たちの熱気に包まれている。

店も、朝は果物やナッツを売っていたが、昼になると料理屋が活気付く。
どこも行列である。

おばさんの店

私はなかでも人気があり、かつ、回転が速そうな屋台に並んだ。

その区画にはいくつか屋台が並び、その向かいにはいくつかテーブルと椅子があって、そこで食べられるようになっていた。
私の並んでいた店では、何やら茶色っぽい丼ものが人気のようだった。
「魯肉飯(ルーローファン)」というらしい。

その店は目つきの鋭いおばさんが一人で切り盛りしていた。
注文を聞くと、ささっと食べ物を用意し、ささっと提供する。
見ていて気持ちが良い。

回転が早いのであっという間に私の番になった。
「ウォ・シャン・ヤオ・ルーロウファン」
と覚えたての中国語でオーダーをした。

おばさんは鋭い目つきで、
「ア?」と聞き返す。

初めはこの「ア?」は割合怖いのだが、台湾人はよくこうした反応を返してくるので、なれればなんてことはない。

何度か発音を変えて、試してみると、「ああ、魯肉飯ね」という感じで頷き、何やらこちらに質問を返した。
わからないので、私は顔に「?」マークを浮かべた。
おばさんの身振りからして、「テイクアウトか、店内か」を聞いているらしい。

店内といっても隣の椅子に座るだけだが、おそらく容器が違う。
私は大地を指差し、店内である旨を伝えた。

さっと魯肉飯を用意し、ご飯茶碗に盛り付け、私に手渡す。
そして、おばさんは身振りで「隣のスペースで食べるんだよ」といった趣旨のことを伝えた。
私は頷き、お碗を手にテーブルへと向かった。

おばさんの屋台。
「イートイン」コーナーより。

魯肉飯

魯肉飯はゴロゴロとした肉と豆腐のような何かをご飯の上にかけたものだった。

ワイルドな魯肉飯。
台湾で食べた中でも一二を争うお味。

漂ってくるのは八角のいい香り。
台北の街は八角の甘い香りが充満しているので、まさに台北味である。

一口レンゲですくって口に運ぶ。
すると、とろとろになるまで煮込まれた肉が口の中で崩れる。
これがご飯と豆腐とよく合う。
台北で食べた中で一二を争う美味い食べ物だった。

夢中で魯肉飯をかきこみ、「フゥー」と一息つく。
これで30台湾元。当時でいうと、だいたい90円。とんでもない値段である。

「イートイン」の場合、お椀は店のものなので、返却口のようなところに置いて帰る。
ちょうどおばさんがテーブルを拭いていたので、
「シエシエ(ありがとう)」と伝え、市場に戻った。

魯肉飯は最高に安くて最高にうまかったが、少々量が少ない。
なにせご飯茶碗一杯分なのだ。まだいける。

何を求めて歩くのか

とはいえ、しばらくの台湾生活のせいか、1分経つごとに高まる人口密度のせいか、私は少々気疲れを起こしていた。
ほとんどわからない中国語を使って会話する、ということに対して億劫さを感じるようになっていた。

凉麺、総統饅頭、胡椒饅頭…

気になるものは目に飛び込んでくるが、なんとなく買うまでには至らないまま、私はひたすら昼の夜市を歩いた。

蒸し暑さの中、幾許かの空腹を抱えながら歩いていると、喉が乾いてくる。
何かちょうど良い飲み物などないか。

愛玉

そう思いながら歩いていると、果物屋が目に止まった。
見た目は少々ボロくて、初老の夫婦が2人でやっている風情ある店である。

そこには「檸檬愛玉(リーモンアイユー)」なるゼリー上の飲み物が売られていた。
それがたまらなく美味そうだった。

「ウォ・シャン・ヤオ・リーモンアイユー」
と頼むと、痩せた主人のおじさんは頷き、プラコップに液体を入れ、パックをしてストローと一緒に渡してくれた。

檸檬愛玉

コップの下にゼリーがあり、上にはレモンジュースがある。
ストローでゼリーをジュースごと啜る。
さっぱりして、ツルッとしてうまい。

時折ストロー内で愛玉が詰まるのは玉に瑕だが、暑い日にはぴったりの飲み物だ。
いや食べ物か。


愛玉の原料はわからないのだが、飲み終えたらかなり満腹だった。
ひと歩きして、また夜になったら戻ってこよう。

次は大トリ、真打登場。
夜の夜市である。

夜の夜市を予感させるぼんぼり

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