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S字カーブ理論を使った国内NFT界隈の動向[2021〜2023年]

2021〜2023年頃に起こった、日本のNFT界隈の動向を、S字カーブ理論を使って説明します。

「S字カーブ理論」とは、技術開発の進展と製品性能の成長の関係を表す。技術開発の初期は製品性能はゆっくりと向上するが、しだいに性能の向上の幅が大きくなる。しかし次第に技術開発が成熟段階に入ると、性能向上は逓減していく。この技術開発と製品性能の関係がS字に表されるため「S字カーブ理論」と呼ばれている。
該当技術が次世代技術に追い抜かされるまでを競争優位期間と考えることができる。しかし、追い抜かされるタイミングと技術の変遷は一致しないこともある。

図示:S字カーブ理論

今回は、このS字カーブ理論を使い、私自身が体験してきた2021年頃〜現在(2024年1月)までのNFT活用の状況を説明していきたいと思います。

内容は、
①個人クリエイターによるNFTアート市場(2021年〜)
②PFP:プロフィールピクチャー(2022年〜)
③ビジネス活用(2023年〜)
と、大きく3つに分類して、説明をしてみます。


第1段階:個人クリエイターによるNFTアート市場

NFTの最初の主要な応用分野は、デジタルアートでした。
米国人アーティストのビープル(Beeple)のNFTアート“EVERYDAYS: THE
FIRST 5000 DAYS”が約75億円で落札されたのが2021年3月。

“EVERYDAYS: THEFIRST 5000 DAYS”

2021年は「NFT元年」と呼ばれるほどの盛り上がりを見せた1年となりました。

私がNFTに興味を持ち始めた2021年後半。
日本国内のNFT界隈でニュースになっていたのは、Zombie Zoo Keeperさん(草野絵美さんの長男・当時小学3年生)でした。

2022年上半期までに国内NFT市場で盛り上がったのは、個人クリエイターが制作した作品で、発行が1枚しかない「1点ものNFTアート」でした。
(特に、かわいい女の子が描かれた作品が多かったと感じています)

アーティストたちはブロックチェーン技術を使ってデジタル作品の唯一性と所有権を証明し、作品に新たな価値をもたらしました。初期の大きな成功例には、ビープルの作品の高額売買などがあります。

現在のNFTアート(イラストや音楽など)市場は、大きな盛り上がりを見せることなく、落ち着きを見せています。
今後も大きな市場成長は期待できないかもしれませんが、アート(×デジタル)本来の素晴らしさだけでなく、ファン(コレクター)やクリエイター同士の交流によって、一定の需要が期待できます。


第2段階:プロフィールピクチャー(PFP)

次のS字カーブは、ジェネラティブ(自動生成)NFTの登場です。

海外では2021年頃から、Crypto Punksを筆頭に、BAYC(Bored Ape Yacht Club)、CLONE Xのようなジェネラティブ(自動生成)NFTが飛ぶように売れていました。
ジェネラティブNFTのなかでも、特に、SNSのアバターとしても使えるポートレート作品で構成されるProfile Picture(以下、PFPと表記)NFTが人気を博しました。

日本国内では、2022年になって急速にNFTプロジェクトが増加していきました。
国内で、大きな流れを作ったのは、Neo Tokyo Punks(2022年3月)、Crypto Ninja Partners(2022年5月)、Neo Samurai Monkeys(2022年5月)、MEGAMI(2022年7月)あたりでしょうか。
NFTへの関わり方が大きく変わってきたと感じた時期が2022年中盤くらいからでした。

PFPが人気を博した要因は、いくつか挙げられます。

・所有による感情的な効果
NFTをPFPにすることで、NFTを所有していることを他人に示すことができます。(※厳密には、NFTオーナーは「所有している」わけではない)所有欲や自己顕示欲を満たすと同時に、PFP(NFT)に愛着を持つことを促進します。
特に、twitter Blueという有料サービスを契約すると、保有するNFTをアイコンにした際に、NFTホルダーであることを示す六角形に表示されます。PFPが認知されることにより、アイデンティティが確立されます。

・コミュニティ形成
人気コレクション(コミュニティ)の一員として認識されやすくなります。こうしたコミュニティ参加の機会は、新しい友人や共通の趣味を持つ仲間との交流を促進し、NFTコレクションとコミュニティの相乗効果を生み出しました。所属や仲間意識、共通の話題でできる新しいコミュニティがたくさん登場しました。

・売買による投資や投機の活性
さらに、PFP NFTはマーケットプレイスを通じて個人間で売買され、PFPブームによりNFT売買が活性化しました。これは投資家やコレクターにとって、将来の価値上昇を期待できる魅力的な選択肢となりました。

PFP NFTは、このような特性から、2021年後半(日本国内では、2022年後半)にNFT市場を席巻し、その多様性、表現力、アイデンティティの構築、そしてコミュニティの形成において重要な役割を果たしました。

「NFTの冬時代」の要因

しかし、PFP分野も成熟段階を経て、「NFTの冬時代」と表現されるほど、トレンドは収束してしまいました。

その理由として、以下のようなものが挙げられます。

プロダクトアウト時代の終了

マーケティング視点は、プロダクトアウト時代が終わった、と言えます。

プロダクトアウト ⇔ マーケットイン

プロダクトアウトとは・・・
先に商品(プロダクト)を作ってから、それをどうするかを考える、作り手が作り手自身の利益を中心に据えて行う思考や行動のことです。

マーケットインとは・・・
消費者の利益を考え、先にマーケット・市場・消費者の気持ちになって、商品を開発していく思考や行動のことです。

プロダクトアウトの事例として、物が不足していた時代のテレビや白物家電がよく取り上げられます。(私自身、まだ生まれていなかった時代の話です)
消費者の需要が生産者の供給を上回っていたので、作れば作るだけ売れていたる、生産思考と呼ばれる考え方です。

次に、ある程度商品が行き渡り、需要と供給が均衡してくると、商品の品質を向上させることで、単価を上げて売上を上げていくことになります。製品思考と呼ばれる考え方です。
テレビの画面を大きくしたり、画質を良くしたり、他社製品よりいいものを作れば買ってもらえる、ということです。
他社との製品比較では違いが出しにくくなってくると、販売思考と呼ばれる販売方法を変えることで需要を掘り起こしていきます。

当記事で取り上げたPFPプロジェクトのブームは、まさに生産思考、製品思考を一気に駆け抜けた時代でした。
「買えば儲かる」ような投資アドバイスに近い盛り上がりがあったり、コミュニティを作って入ってもらったり、WL/ALムーブメントが起こっていたり、といった取り組みが該当します。

これまで、マーケティング本でしか見聞きしたことがなかった1960年〜1980,90年代までのプロダクトアウト時代を、2021年から2023年までで一気に体験をできた、ということになりました。。。


バブル相場の終了

上記のとおり、2021年から2022年までは、一定のマーケティング活動をするプロジェクトを立ち上げれば、「どのようなプロジェクトでも数百万円〜数千万円の売上を稼ぐことができた、ただ単にイージーモードだった」ということでした。

私自身も、コレクター(投資・投機)の立場として、わけもわからず盛り上がっていそうなプロジェクトのALを入手し、買えば値上がり、売れば利益になる、2022年はまさにバブルを体験しました。
2022年は、ある程度の利益を確定させましたが、現在では含み損を抱えた状態になっています・・・


生き残るプロジェクトは?

バブル相場が終了し、投資・投機目的の人が大幅に減っていった結果として、2022年にリリースしたプロジェクトの7〜8割は恒常的な収益がなく、休眠状態(実質的にはクローズ)になってしまっているでしょう。

少し古いデータではありますが、中小企業白書2006年に掲載されている「個人事業所の生存率」というデータがありますので、参考として抜粋します。

創業1年後の生存率:62.3%、創業5年後の生存率:25.6%、創業10年後の生存率:11.6%のデータを、2022年に登場したNFTプロジェクトと比較してみると、同等か低い生存率になっている、というのが体感値です。

これは、「NFTが悪い」「NFTは終わった」というNFTの本質に対する悲観論ではなく、「ちゃんと運営しているプロジェクトはNFTを活用して稼ぐことができ、適正に評価されているプロジェクトだけが今後も生き残る」という本来あるべき企業経営の姿になった、というだけで、生き残れるかどうかは、プロジェクトの本質が問われることになります。


第3段階:Web3のビジネス活用

S字カーブ理論の話に戻ると、これまで市場はNFTアート、PFPといった活用を通してWeb3の事業展開を模索してきた企業が、2024年に、いよいよ事業化するタイミングが到来したと感じています。


Web3やNFTの機能的な付加価値を提供する

ビジネスオーナーの視点では、「NFTを使って何をするか」を考えるのではなく、「顧客 or エンドユーザーの課題に対して、どのような商品・サービスが必要か?」「魅力的な商品・サービス(これ自体はWeb2でもよい)があったうえで、その機能の一部にWeb3やNFTで、どのような付加価値が提供できるのか」といった、本来の起業・新規事業が求められます。

Web3/NFTは、企業やブランドがNFTを顧客エンゲージメントのツールやロイヤルティプログラム、限定商品の販売などに利用し始めており、ビジネス分野での展開に期待です!


普及の鍵「簡略化・低コスト・安全性」が揃ってきた

これまでは、とにかくWeb3に対するハードルが高かった、のが実態です。

「NFTを取引するまで」を例にすると、暗号資産取引所で口座を開設し、日本円を入金し、暗号資産を購入。NFTが売買できるウォレットに、購入した暗号資産を送付する。送付先を間違えると、やり直しができずに、回収もできない。NFTを購入するときには、ガス代と呼ばれるブロックチェーンを処理するための手数料がかかる(2021年末、私が初めてNFTを購入したときのガス代は日本円換算で7000円超でした)数百円、数千円のNFTを購入するのに、高いと言われる銀行ATM手数料よりも高い手数料がかかってきては、一般消費者に手に取ってもらうことは到底難しい領域でした。
このように、NFTを取引するだけであっても難易度の高い、そして、コストもかかる、といったハードルがありました。

しかし、昨今は、技術的な解決策やサービスが登場によって、ハードルが大きく下がってきています。

スマホアプリのダウンロードやいくつかの簡単な手続きだけで始められるアプリなどのサービスも豊富になりました。暗号資産を持っていなくても、クレジットカード決済(日本円)で購入することもできるようになっています。
コストについても、「レイヤー2」と呼ばれる新しい技術を組み込む動き(※詳細は省略。私も理解しているわけではない・・・)が進んでおり、簡単に開発導入できる、ガス代を無視できるレベルの低コスト化が実現できるようになります。


暗号資産も一般化!?

2024年1月に、米国証券取引委員会によって、ビットコインETF(上場投資信託)が認可され、厳格に規制された金融の世界においても、ビットコインが一定の地位を確立するに至りました。
※2024年1月時点で、日本から対象となるビットコインETFを購入することはできません。


Web3やNFTは、何気ない、当たり前の存在になる

「NFTがなくても、できるよね?」と言われるようなサービスであっても、「NFTがあると、便利・簡単・安価にすぐできる」「複雑なしがらみを解消したり、手続きが簡略化できる」というような機能的役割が期待されてくると思います。

特に、リアルとデジタルが組み合わされて、これまでできなかった新しいサービス、web3時代に合わせたマーケティング、顧客ロイヤリティを高めるコミュニティ形成など、どんどん登場してくると考えています。

そのうえで、今後は、NFTが火付け役となって盛り上がるのではなく、単に機能として当たり前に使用され、付加価値の高い事業(商品やサービス)そのものに対してユーザーが付いて、お金が動いていくようになるでしょう。

NFTが使われない、ではなく、生活のなかで、実はこれがNFTだった、という事例が増えてくるでしょう。


2024年は事業化にベストなタイミング!?

NFTをはじめとするWeb3のテクノロジーは、技術的なハードルも解決してきています。
Web3の時代に対応し、未来のビジネスシーンをリードするためには、今が学びと準備を始める絶好の機会です。
時代が変化する最前線を見届けたい、私自身もなにか関与したい、ライフワークとして楽しみたいと思っています。

Web3のビジネスチャンスは、今まさに掴むべき瞬間なのではないでしょうか!?



重要な免責事項

本記事に含まれる情報は、一般的な情報提供を目的としており、いかなる形での金融アドバイス、法的アドバイス、またはその他の専門的なアドバイスを意図したものではありません。市場は変動するため、本記事に記載された情報は時とともに変化する可能性があり、本記事の情報が最新かつ正確であることを保証するものではありません。本記事の著者や関連する人物は、読者が本記事の情報を使用して行ういかなる行動に対しても責任を負いません。

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