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独立記念日

12/5

原田マハさん著の短編集。
ほーーんとうに素敵なお話。

お話が24個もあるから、ひとつひとつの軽い要約は今回はちょっとサボる。

表紙に惹かれて買った本。読むまで短編集なことも知らなかったくらいだし、原田マハさんの作品も初めて読んだ。独立記念日というからちょっとだけ重たい部分もあるのかな、なんて思っていたけど全然だった。様々な女性が恋愛、仕事、家族等々いろんな部分で独立をしていくお話。1つの物語を通して1人の女性が独立する、その背景に少し登場する人物がその次の物語の主人公になっている構成。最初はK市N町に住む、境界線が嫌いな女性がメインの物語から始まって、ぐるっと回って最後もこの女性、夏摘の物語で終わる。

私は普段人間観察が好きで、街を歩いては意識せずともすれ違う人の顔や姿を観察して、この人にはどんな人生があるんだろう、これからどこにいくんだろう、なんて想像してしまうくらいだから、次々と物語が繋がっていってそれぞれの人生が垣間見える構成がとっても気に入った。私は自分の人生の主人公が自分であるように感じられないことが多くあるから、この作品を通してひとりひとりがちゃんと自分の人生の主人公であれるんだなと少し信じることができるようになった。

1番好きな物語は選べないけど、『ひなたを歩こう』で出てくる一節、「ひなたの道を歩かなくっちゃ、なんだか人生もったいない。」はなんだかとても心に染み込んで行く感覚があった。日焼けも嫌だし眩しいのも苦手だから、本当に寒い時以外は基本的に日陰に行くようにしている自分とは全く逆の意見で、でももったいないっていう表現がすごく納得というか、なんだろう、じわーっと染み込んでいった。確かに、暗い道と明るい道があったら明るい道を歩いている方が健康的にも精神的にも良いかもしれない。このお話を読んでからはなんとなく、ひなたを歩くようになった。気持ち的にはいつかもし自分に子供ができるなんてことがあったら、名前はひなたにしたいくらいだったけど、どうしても2文字の名前にしたいからそれはやめておく。

それぞれの物語は全てが温かすぎるわけではなくて、たまに命の根が揺さぶられるくらいの出来事を抱えた女性や環境も描かれている。そこもまたリアリティがあった。実際私が街を歩いていてすれ違う人の中にはきっとそういった難しい問題を抱えている人もいて、自分の人生は今生きているこの世界だけだからわからないけど、同じ時間を過ごす中、今にも持ちきれないくらいの苦しみを抱いている人もいる、という残酷さを少しだけ体感することもできた。

生きていく中でたまに本当に独り感じてしまう瞬間があるけど、この作品を読めば、全ての人ってやっぱり繋がってるんだな、なんて随分綺麗すぎる考えを持ってしまうくらいの心持ちになれる。

全てを通して本当に素敵な短編集だった。これからも愛していきたい作品。

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