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正欲

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最初の最初まで戻って伏線回収。面白かった。
セリフの間にその場で起きてる全く他の出来事や音を入れる表現がすごく臨場感があって、惹きつけられた。最後作者の語りがないのも好感。みんな本当にこの世界に生きている人みたいだった。
佐々木佳道が何年もかけて書いた文章から始まる。この文は最初作者がただ書いてるものだと思ってた。「明日死なないことを前提に進んでいる世界」確かに。自分は彼らから見て向こう岸の人間だから気づかなかった。
次に3人の児童ポルノ事件の記事が書かれている。最初に読んだときはただのそのまんまの事件だと思っていたけど、読んでいくと違うことがわかっていく。全然知らない、事件と関係のない人たちの物語から始まるため、なんの話なんだろう?と思いながら進めていった。最終的にみるとこの本は一冊を通してこの事件の起こる経過を大きく書いていったものだった。
性的対象が異性ではないだけで、ここまで生きる方法が、価値観が、全てが変わるんだと衝撃だった。
捕まるシーンははっきり書かれておらず、終わり方もあっさりしていて、結局3人がどうなったのかはわからないが、最後の八重子とよし香の話から見ると矢田部を除いて2人は、越川に理由が違うことを気づいてもらってそんなに長く投獄されなかったのではないかと思う。
彼らにとってそれが最善だったのかはわからない。
綺麗事ではあるが、どんな人でも生きてはいけない理由はなくて、自分の世界に自分以外の誰かが必要なんだと思い知らされた。

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