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【是枝監督映画「真実」】映画「真実」は何も真実を語らない映画である

※以下ネタバレを含みます。また映画館での鑑賞をもとに記事にしていますので内容が正確でないことがあります。

是枝監督の最新作品「真実」。
ある日何かがキッカケで一家が再び集まる(「海よりもまだ深く」)、母が使っていた部屋を娘が使う(「海街dairy」)、劇中劇のSF感(「distance」)、何が真実か判らない(「三度目の殺人」)。
随所に是枝監督らしさが散りばめられていた。

その中でも1番印象に残ったシーン。
娘リュミエール(ジュリエット・ビノシュ)は、母ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)を許さないと公言している。優しくて大好きだったサラおばさんを死に至らしめたのは母ファビエンヌが原因だ。仕事ばかりで娘の自分の芝居に観に来ないどころか、学校の迎えなど自分に一切構ってくれなかった。そう娘リュミエールは思っている。ところが、母ファビエンヌは、映画の中盤で、娘リュミエールが幼い頃に演じた「オズの魔法使い」をこっそり後ろの方で観ていたと打ち明ける。さらに、サラおばさんに嫉妬していたのだと告白するのだ。娘リュミエールに絵本「森の魔女」を読み聞かせてばかりいるから、映画の「森の魔女」は私が出演しようと思ったのだと。ここで、娘リュミエールは母ファビエンヌに抱きしめられながら泣く。「お母さんを許してしまいそう」。その顔が急に幼い娘のような顔でこれまた素晴らしい。

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と、ここまでであれば母と娘の和解の感動シーンで終わりなのだが、ありきたりな関係は描かない。すぐに、ファビエンヌが「あーっ!この気持ちを撮影に活かせないのが悔しい」「昨日の撮影やり直せないか」と1人で興奮し出すのだ。母から離れて呆気に取られるリュミエール。その後、脚本家であるリュミエールは、自分の娘シャルロットに一芝居打たせてファビエンヌの気持ちをコロッと動かして喜ばせるという仕返しをする。
さてさて、ファビエンヌがリュミエールに伝えた、“実は「オズの魔法使い」を観ていた”だとか“エマおばさんに嫉妬して「森の魔女」に出演した”というのは「真実」だったのだろうか。

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