忍者は現代のコンサル業?
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小説「梟の城」(司馬遼太郎)
自らの職業人生を振り返って、出世欲がなかったと言えば噓になるでしょうか。若い頃はほとんどなかったように思います。むしろ、周囲にそれが旺盛な者を見ると、ケーベツしていたような気がします。
しかしキャリアを積むにつれて、組織の中では出世しないことには給料も上がらないし、やりたい仕事もできないことが分かってきます。よって、中堅どころの頃はそれなりに出世欲もあったかもしれません。
とはいえ、ある一定以上の地位になると、今度は自分の仕事とは別に経営者の論理に与することが求められるようになりました。その時点で私はこれ以上の肩書は要らないと思いました。自分の職能をより一層磨くことの方が自らの承認欲求は満たされると思ったからです。
本書を読んでいて、忍者とは私の平日の仕事──コンサルタントの職能に似ていると思いました。忍者は報酬をくれる者ならいかなる側にもつき、仕事が終わればその敵側にもつくと言います。まさにコンサル業そのものです。
武士のように、自らが出世して天下を取るなどという野望はありません。むしろ「そうした出世欲を侮蔑し、ただ己の職能の熟達に喜びを憶える」とあります。まさに!
組織立てて仕事をするときには、下忍を自由に使える上忍の立場にあることが彼らにとって重要ですが、それ以上は意味がありません。
彼らは伊賀者であろうが、甲賀者であろうが、組織の看板やその地位でなく、個人のスキルに応じた評価が得られます。
かてて加えて、この主人公・葛籠重蔵が秀吉の寝所にまで押し入ったことなど誰も知らぬように、コンサルタントはどんなに世間を騒がすような仕事をしようと、黒装束を纏ったまま表に出ることはありません。