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タナカタツヤの仕事場

イクカラニハ!第3回のゲストスピーカーはタナカタツヤさん。
グラフィックデザイナーでありながら、
大阪・天神橋5丁目にあるギャラリーhitotoのオーナーでもあるタナカさんに、
リモートでお話を伺いました。

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イクカラニハ!チーム(以下イクカラニハ)
今日は宜しくお願いします

タナカさん
宜しくお願いします。

イクカラニハ
タナカさんのことはデザイン書やwebサイトなどで、昔から拝見しており、
イクカラニハメンバーの間でもタナカさんのお話を聞いてみたいと
話題にあがっていたので、今日は楽しみです。
いきなりですが、簡単にプロフィールをお聞きしてもいいですか。

タナカさん
奈良県出身で、今年で41歳になりました。
元々は制作会社で働いていたのですが、
2008年に退職し、フリーランスとして活動を始めました。
ギャラリー「hitoto」は2009年の暮れからはじめました。

イクカラニハ
グラフィックデザイナーを志したのはいつ頃からですか?

タナカさん
小学生の頃に父が年賀状を木版画で作っているのを見て、
ゴム版でせっせと年賀状を毎年つくっていました。
今思うとそれがデザインの原体験なのかもしれません。
高校生の時、有名ミュージシャンのアートワークなどを手がけられていた
信藤三雄さんの作品集「シーティーピーピーのデザイン」を見て、
はじめてグラフィックデザイナーという職業を意識しました。
その後大学へは、最初こそ芸術系の学校を希望していたのですが、
心理学系に進学しました。

イクカラニハ
デザインとはまた別の分野ですね。

タナカさん
そうですね。大学では心理学や社会学などを学んでいたのですが、
建築やインテリアのデザインを学ぶ
生活デザインコースというのが隣にあって、
そのコースの人達と仲良くなって、よく遊んでいました。
この頃から、やっぱりデザイン関係に進みたいと思っていました。
一度は就職活動もしたのですが、
大学卒業後に専門学校に進む道を選びました。

イクカラニハ
デザイン系の専門学校へ進まれたんですね。

タナカさん
インターメディウム研究所(以下、IMI)に進学し、
1年間、奥村昭夫先生のもとで、グラフィックデザインを学んだり、
美術史や雑誌編集なども学びました。
「デザインはアイデアです」という奥村先生の言葉は印象に残っています。

イクカラニハ
そこでグラフィックデザインを学ばれたんですね。
卒業後はデザイン事務所へ?

タナカさん
卒業して、主に旅行パンフレットを制作している会社に就職しました。
情報満載なパンフレットを短期間で制作しないといけなかったので、
鍛えられましたね。1年間勤めたのですが、他のことも経験したくて、
自社で飲食などのショップを複数運営している会社へ転職、
そこのショップの販促物などを手がけていました。
4年勤めた後、一人でやってみたいと思い、28歳の時に独立しました。

イクカラニハ
独立した当初はどんなお仕事をされていたんですか?

タナカさん
当時は、以前勤めていた会社関係の方からお仕事いただいてました。
それから独立して1年くらいたったあたりで、hitotoをスタートしたんですけど、
その頃から徐々に仕事も増えてきました。

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↑ hitotoで初めて開催した自主企画展
 「おじいちゃんの記憶と記録」(2010年2月)

イクカラニハ
グラフィックデザインのお仕事をしながら、
ギャラリー運営をするというのは大変そうに思うのですが、
hitotoをはじめられたきっかけを教えていただけますか。

タナカさん
hitotoが今の場所(天神橋5丁目)に移ってからは、
主にギャラリーとして様々な展示の企画・運営をしているのですが、
hitotoを始めた当初は、ギャラリーという感じでは無くて、
週末に集まって遊べる、趣味の部屋みたいなスペースがあったらいいな、
と友人と話してたんです。
タイミングよく、スペースを貸したいという方と知り合い、
IMI時代の友達と、建築家の友達、今の奥さんの4人で一緒に
hitotoをスタートしました。
当時から展覧会も開催していましたが、
それとは別にアコースティックライブを定期的に企画・開催していました。
自分たちの好きなことをする場所だったので大変ではなかったですね。
同じビル内に、BMC(ビルマニアカフェ)という
1950-70年代のビルをこよなく愛するビルマニア集団や、
雑貨店や古本屋、音楽家の作業部屋なんかがあったりと、
面白い方がたくさんいて、そこで人との繋がりも増えてきました。
hitotoをやったことで知り合いが増え、
結果的に仕事の幅も広がったと思います。

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↑ ギャラリーhitotoの一角にあるタナカさんの仕事場

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↑ 山本理恵子「真昼の星々 The stars at noon」(2019年)

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↑ 曽田朋子「部分の服を着る途中」(2020年)

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↑ ミヤザキ「mornin’ モーニン」(2021年)

イクカラニハ
hitotoというとギャラリーのイメージが強かったんですが、
そういった経緯があったんですね。
タナカさんのグラフィックデザインのお仕事についても
お聞きしていきたいと思います。
最近のお仕事をご紹介いただけますか?

タナカさん
きょうと障害者文化芸術推進機構さんのお仕事で、
共生の芸術祭「距離のみちのり」イベント告知ツールのデザインを
担当させていただきました。

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クライアントから、展示作品の画像は使わずに
デザインしてほしいという要望がありました。
そこで、タイトルに注目し、アイデアを膨らませていきました。
京都の碁盤の目をモチーフにグリッドを背景に敷き、
タイトル文字を回遊するような配置にすることで、
文字通り「距離のみちのり」を表すデザインにしています。

イクカラニハ
一見、シンプルで綺麗なデザインに見えるのですが、
見ているといろんな仕掛けがあるようで、楽しくなるようデザインですね。
デザインされる時は手書きでラフとかを書かれるのですか?

タナカさん
アイデアやラフを書く用の決まったノートがあるのですが、
そこにラフを書いていきます。
手書きのラフはそこまで、きっちり書かずに、アイデアレベルです。
あとは、パソコン上でパズルのように、
一度きれいに組んでからずらしたり、調整していくことが多いです。
その上で、気持ちいいバランスをさがして仕上げていくイメージです。

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↑ 手書きのラフスケッチ

イクカラニハ
タナカさんといえば、hitotoのデザインワークが印象的です。
『Graphic Design In Japan』(JAGDAが発行しているデザイン年鑑)
でも拝見しました。シンプル且つインパクトがあって、
年鑑の数多いデザインの中でも印象に残っています。

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↑ hitotoのフライヤー、ポスターなどの広報物

タナカさん
ありがとうございます。
2015年にJAGDAに入会してから、年鑑にも出品するようにしています。
入選したらやっぱり嬉しいです。
画家・安藤智さんの個展「DOG DOG DOG DOG」の広報物は、
タイトルの4つのDOGを犬が走り回ってるようなイメージでレイアウトしました。

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↑ 安藤智 「DOG DOG DOG DOG」ポスター

イクカラニハ
小檜山貴裕 写真展「もうこわくて目があけられない」のフライヤーは
JAGDA年鑑でThis One!(廣村正彰・選)にも選出されてましたよね。
かっこいいですね〜。そして写真展なのに写真が入っていないという。
※This One!とは各選考委員が、
全作品の中から最も興味を持った1作品に自由にコメントを寄せるシステムです。

タナカさん
このデザインもタイトルからレイアウトをイメージしていて、
最初は表面に大きく写真をレイアウトしていたんですが、
最終的に写真を削除して、空のフレームだけが残った状態を見て
完成だと思いました。
写真家の方もこれでOKを出してくれました。
裏面にはちゃんと写真入ってますよ(笑)。

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↑ 小檜山貴裕 写真展「もうこわくて目があけられない」フライヤー

イクカラニハ
横山裕一展のフライヤーも記憶に新しいです。

タナカさん
2015年の展示です。
こちらは、はじめてJAGDA年鑑に応募して掲載していただいたんですが、
JAGDA賞候補作品に入っていてびっくりしました。
作家の方から、漫画の1ページ・4コマのイメージが提供されたので、
4コマに分割したフライヤーを作って、
合体するとポスターになったら面白いなと思って作りました。
フライヤーを発送する際に、各所に1種類だけ送って
「集めてポスターにしてください〜」とSNSで告知していました。

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↑ 「横山裕一展」ポスター

イクカラニハ
hitotoのお仕事以外にもたくさんの仕事を手がけられていますが、
今後、挑戦したいお仕事などはありますか?

タナカさん
建築や美術関係など、
自分が興味のあるジャンルの仕事を続けられたらいいですね。
エディトリアルデザインも続けていきたいと思っています。

イクカラニハ
今日は長い時間、どうもありがとうございました!

タナカさん
こちらこそ。ありがとうございました。

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タナカさんのデザインからは、世界観が一瞬で身体に染み渡るような印象があり、
シンプルながらも、一度見たら忘れられないデザインが多いと感じていました。
「デザインはアイデア」の精神が、染みこんでいるのかも知れないな、と
今回お話を聞いて思いました。
本来なら直接お伺いしてお話したかったのですが、
今大阪は3度目の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言中で、
今回もリモートでの取材とさせていただきました。
JAGDA OSAKAでも、企画していたイベントが軒並み中止となっており、
皆さんとお会いする機会も減ってしまいました。
早く収束し、皆さんと直接お会いして、
楽しくデザインの話ができることを願っております。

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タナカタツヤ(Tanaka Tatsuya)(下段左)
グラフィックデザイナー

1980年奈良県生まれ
滋賀県立大学人間文化学部卒業
大阪を拠点に、ロゴ・ポスター・書籍・ウェブなどのデザイン業務と
ギャラリー・スペース「hitoto」で展示の企画・運営を行う

HP
http://www.designsalad.net

Facebook
facebook.com/designsalad.net

hitoto HP
https://hitoto.info

イクカラニハ!スタッフ
(上段中央)編集 / 佐藤大介 @daiskesato
(上段左)濱村桃嘉 @eva_artwork
(上段右)竹広信吾 @shingo1978
(下段右)外賀寛子 @sinwagraphic






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