ッパねぇよ、ウルトラマンZ‼

 昨日、最終回を迎えたウルトラマンZ。ウルトラマンティガから始まる平成3部作(ティガ・ダイナ・ガイア)以降、通して見ることは無かったウルトラマン作品だが、今回久々に全話をリアルタイムで視聴した作品だった。
 このウルトラマンZが、ッパねぇ作品だったので伝えられるか分からないがとにかく文章にしてみたのが今回のnoteだ。
※ネタバレ要素を含むので、作品を事前情報なく見たい人は注意です。

目次
・見せ方の革命
・圧倒的肺活量オープニング
・俳優の好演・怪演
・歴代ウルトラ作品とのクロス
・「かわいい」の癒し
・ニコニコ動画による「面白い」の共有

◯見せ方の革命
 10数年振りのウルトラマン作品、まず心を掴まれたのが「見せ方」だ。
 人間の目線から見上げる構図の怪獣は、その迫力と人間の無力さを思い知らしめる。怪獣の攻撃で巻き上げられた、回転する車の車内からの目線は「なんだかとんでもないことが起こっている」ことを感じさせた。ミニチュアの車や自転車をアップにして、怪獣の動きに合わせて跳ね上がる瞬間を映し、体重数万トンの物体が動く衝撃を具体的に視覚させた。
 これらは今まで自分が見ていたウルトラ作品には無かった見せ方、すなわち「迫力を体感させる」という見せ方だった。この見せ方は、視聴者を一気に戦闘シーンへ没入させる効果がある。
 さらに、CGの表現も「これは劇場版では⁈」というクオリティを週一の作品に突っ込むという、円谷の予算が心配になる使い方をしている。特に、第19話のバラバ戦はグルグル視点を回転させて光線が乱れ飛ぶ、とんでもねぇCGを入れてきて、「こりゃ気持ち悪くなる視聴者でも出るのでは……」というレベルだった。

 ウルトラマンZは、まず「見せ方」で革命を起こしてくれた。

○圧倒的肺活量オープニング
 ウルトラマンZのオープニング曲「ご唱和ください 我の名を!」は、冒頭の圧倒的肺活量による絶唱で、歌を歌おうとする子どもたちを絶望させた。歌を歌う遠藤正明さんは、とんでもない肺活量と大ボリュームの声量が特徴の歌手であり、十数秒にわたる

「ウルトラマンぜえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっっっっっっっっっっっっっっっっと!」

は、遠藤さんにしかできない芸当だ。
 歌の歌詞も引き込まれる。自分は特に、2番の「最強の力を手に入れたものは どこへ向かい誰と戦うの教えて」というフレーズが響く。誰もが力を求める中、力を手にした「後」はどうなるのか。これは本作品の根底を流れる1つの大きなテーマだった。オープニング曲は、タイトルと同じくその作品のテーマを伝える大切なプロローグであり、この歌詞はがっちりその役割を果たしている。

○俳優の好演・怪演
 本作は俳優さんの演技も素晴らしい。主人公の夏川遥輝を演じた平野宏周さんは、まっすぐ熱血スポーツ男を完璧に演じつつ、第24話にて負傷しながらも再度戦いへ向かおうとし、チームのおやっさん的存在であるバコさんから、なぜお前が行かなければならないのか問われたとき、「目」で自身がウルトラマンZであることを伝えるという難しい演技をやってのけた。
 遥輝の先輩である中島洋子を演じた松田リマさんは、先輩らしい頼りがいと経験からくる言葉の重み、ウルトラマンという年上男性(?)への乙女なはしゃぎ、さらにアクションでは女性のしなやかな強さを見せつけ、「強くてかわいい」を体現した演技だった。特に、第24話で異星人に乗っ取られた際の「怪演」がすごい。凶悪な狂気とはどのように顔へ溢れるのかを見せつけてくれた。視聴した子どものトラウマになっちゃいそうなレベルの演技、すごいです。
 遥輝の所属するチームの隊長、蛇倉正太を演じた青柳尊哉さんは時に部下を思いやり、時にお寒いギャグを放ち、時に上司にも屈しない理想の上司を演じられた。さらに、異星人へと姿を戻した際の語り口調の変化は、微妙に隊長時と重ねた部分があり、二人が同一人物であることを感じさせる。怪獣に変身する際の、悪の爽やか顔は絶妙な色気を醸し出していた。

○歴代ウルトラ作品とのクロス
 本作は、歴代のウルトラ作品とのクロスも巧みに行われていた。自分は特に、第19話のウルトラマンAとのクロスが印象的だった。復活した超獣バラバとの闘いに苦戦するウルトラマンZを救うべく、ウルトラマンA(エース)が駆けつけかつて自身がウルトラ兄弟たちの力を借りて生み出したスペースQを、新たにZへ託した。これは、単に技の継承かと思いきや、その後の二人の会話で「宇宙に平和をもたらす最後の戦士として、エースが『Z』と名付けた」という驚きの経緯が判明する。AからZへと、名前と技が受け継がれていくという熱い展開を見せてくれた。
 他にも、第6話・第7話ではZの先輩にあたり屈指の人気を誇るウルトラマンジードとともに戦い、第18話では初代ウルトラマンのさらに前の作品に当たるウルトラQからケムール人という走り方にクセのある異星人が登場しているなど、最古参クラスのファンや最近のウルトラ少年にも嬉しいクロスを見せてくれた。

○「かわいい」の癒し
 ウルトラ作品とは、ウルトラマンという圧倒的な善の存在であり、崇高の念も含めた「カッコイイ」の象徴を題材としており、これまではその崇高性を念頭に置いていたのではないかと思う。しかしながら、本作では随所に「かわいい」がちりばめられており、作品を見ながら心に癒しも与えてくれるという、魅力の厚みを持たせている。
 まずは頑張るかわいさの「セブンガー」だ。遥輝が所属する防衛チームの戦闘用ロボットなのだが、ブリキ感の漂う充電式のロボットで動く際に「ジーゴー」と音がなる。さらに、非戦闘時はしょぼんとした八の字の目をして、戦闘時はきりっと頑張る逆八の字の目に変わる。動く際に音を鳴らしつつ、表情まで変えて頑張るセブンガーの姿はかわいいとしかいいようがない。
 さらに、カッコイイの象徴である「ウルトラマンZ」にもかわいさがある。Zは、遥輝と出会ってからたびたび会話を交わしているのだが、時々「おかしな敬語」を使う。この「おかしな敬語」には、初めての地球における言語に苦労するZの努力と、間違いに気づかないお茶目な性格を表現している。特に第24話では、最後の敵に致命傷を与えられ遥輝と強制的に変身を解除するという絶望的シーンなのだが、最後におかしな敬語を使いつつ消えていくという、しまらないかわいさをもたらしている。これは一重に、Zの声を担当された畠中祐さんによる完璧な演技があってこそだ。畠中さんは、シリーズ後半のエンディングも歌っているが、澄んだ中に情熱を感じる声としゃくりの上手さで耳に残る歌を届けてくれている。

○ニコニコ動画による「面白い」の共有
 ウルトラマンZは、テレビや円谷公式YouTubeにより放送されたが、私は特にニコニコ動画での視聴をお勧めする。
 ここまでに上げた作品の魅力は、誰かに共感してほしいものばかりだ。そんな時、既存の動画提供サービスの中でライブ感を持ちつつ視聴者の感想を共有できるのは、動画中にコメントを掲載するというニコニコ動画が一番である。
 オープニングにおける、遠藤さんの圧倒的肺活量ウルトラマンZ絶唱におけるコメントの息切れは、単純な文字打ちですら敵わないという粋な負け演出として作品の風物詩となった。俳優さんの作中における演技に対する称賛のコメントは温かみがあり、セブンガー等のロボット登場時の絵文字表記はかわいさを倍増ししてくれた。そして、作中の特撮シーンや歴代ウルトラ作品とのクロスシーンにおける、光の巨人ならぬ「知の巨人」達による詳細な解説コメントは、作品の新たな楽しみを与えてくれた。
 ニコニコ動画にある「みんなで楽しむ」という文化が、魅力たっぷりの本作品を視聴する上で最高の相乗効果をもたらしていたと思う。

 ここまで整理なく書き続けてきたが、まだまだ魅力を伝えきれてはいない。私よりも、もっともっとこの作品の面白さを伝えてくれている人がたくさんいらっしゃると思うので、ぜひそちらも拝見して欲しいし、ぜひともウルトラマンZを見て欲しい。
 ッパねぇよ、ウルトラマンZ‼ 

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