資本主義をゲームに例えて考える⑤ ~「頑張っても報われない」を考える~

 今回は、「資本主義をゲームに例えて考える」シリーズになります。
 近年、仕事をする中で「頑張っても報われないことが多くなっているという話を聞いたことがあります。この「頑張っても報われない」という事象について、資本主義ゲームを基に考えてみました。

目次
・「頑張っている」とは?
・「報われる」とは?
・資本主義ゲームにおける「頑張っても報われない」理由
・三つの対策を考える

◯「頑張っている」とは
 「頑張っている」というのはどのような状態を指すのでしょうか。例えば、すでに長い時間労働をして疲れている上でさらに仕事をしたり、自分の能力よりも高いレベルが求められる仕事に取り組んだりと、「自分が普通と感じることを行う時よりも、困難さや労力のレベルが高いことをする」状態を「頑張っている」状態と定義します。
 ただし、「頑張って」いるかどうかの判断は「やっている本人」と「周りの人」で異なります。本人は、「自分が普段やるよりも難しくて労力がかかっており、頑張っている。」と思っていても、周りの人は「私たちが普通に出来ることができていない。頑張ってはいない。」と評価が分かれてしまいます。この逆も当然あり、本人は普段よりも楽だと感じていても、周りの人は自分達が困難と思うことをやっていて「すごく頑張っている!」と評価することがあります。

◯「報われる」とは
 次に、「報われる」ということを考えます。「報われた」状態とは、例えば仕事ぶりが評価されて給与が増えたり、出世して役職が上がったりと経済的に利益を得ることや、他の人から感謝されることも当てはまります。このように、「自分の取り組みに対して、何か得られること」を「報われる」と定義します。
 この「報われる」ことは、「取り組みを行った本人」ではなく「周りの人」からの行動によって成立します。「自分で自分の取り組みを褒める」ということもありますが、これは「報われる」というより「報む(?)」という別物です。自分ではなく周りの人が行ってくれないと報われることがありません。

 以上のことから、「頑張って報われる」とは「『頑張っている』ことを周りの人が評価して、本人が『報われる』ように周りの人が行動すること」だと言えます。本人ではなく周りの人が主体となって行われることですが、このことが「頑張っても報われない」という問題を引き起こします。
 「頑張っている」ことは、本人も周りの人も評価することができます。しかし、「報われる」ことは本人が周りの人からやってもらえなければ成立しません。本人がいくら「自分は頑張っている」と評価していても、周りの人がそう思ってくれなければ「報われる」ことが無いため、「自分は頑張っているのに報わない!」という状態になってしまいます。

◯ 資本主義ゲームにおける「頑張っても報われない」理由
 資本主義ゲームは、「自分が自由に使えるお金を増やすこと」を目的としています。このゲームにおける「頑張って報われる」とは、「普段よりも労力や困難さのレベルが高いことを行い、より多くのお金を得ること」です。
 多くの人に当てはまる例としては、会社で困難な仕事をしたり高い成果を上げて給与が増えることです。しかし、ここ近年は会社で頑張っても給与が増えないという、「頑張っても報われない」ことが多くの人に起きています。
 これは、資本主義ゲームの「人の欲望を原動力、お金を材料にして無限に競争を行い、欲望を満たすものを無限に創造していく仕組み」が原因となっています。人が持つ「もっと良いものを、もっと早く、もっと安く手にしたい」という欲望を満たすために、会社同士、個人同士で無限に競争を行って商品やサービスを提供していますが、この流れが続いていくのに従い、仕事における「普通の程度」の水準が上がっていきます。「前よりも品質が良かったり、早くて安いのは当たり前だ」と消費者が考えているならば、会社は「前よりももっと社員に安い給料で早く高い成果を出してもらわなければ」と考えざるを得ないからです。
 給与を増やすための仕事の基準がどんどん上がっていけば、例え自分自身としては「頑張った」と評価しても、給与を決める周りの人は「昔なら昇給に値するけど、今の水準には届いていないな」と評価して給与をなかなか上げてもらえません。これが、資本主義ゲームにおける「頑張っても報われない」理由です。

◯三つの対策を考える
 「頑張っても報われない」ことに対して、三つの対策を考えてみました。
1 今よりももっと頑張る
 昇給の対象となる水準が上がり続けるのであれば、水準に達するまでもっと頑張るという対策があります。
 長所は、自分の能力を高めることもできること、頑張りを増やすという分かりやすい対策であることです。
 短所は、すでに自分では頑張っているのに報われていないと不満を感じているのに、さらに頑張らなければならないこと、永久に頑張り続けなければならないということです。

2 評価の水準が低いところを探す
 競争により報われるための水準が上がり続けるという仕組みですが、実はこの仕組みは全ての仕事や会社に「均等に」適用されているわけではありません。業界や会社によっては水準が上がるスピードが遅く、今の自分の「頑張り」と「報われ」が納得出来る関係のところがあるかもしれません。そうした、まだ水準が低いままの業界や会社を探し出し、そちらに移って仕事をするという対策です。
 長所は、自分が「頑張っている」という評価と周りの人からの評価が一致、又は周りの人の評価が高く、報われる可能性が高くなることです。
 短所は、いつか「頑張っている」と自分が評価する水準よりも、昇給の対象となる水準が上がってしまう可能性があることです。

3 「頑張る」をやめる
 ゲームへの参加度合いを減らすという観点から、「頑張る」をやめるという対策があります。自分の親や周りの大人が、不況により頑張っても報われない状況を見て、「会社でずっと仕事を頑張っても報われないなら、そこにかける労力や時間が勿体無い」と、頑張ることをやめてプライベートを楽しむというものです。
 長所は、頑張っても報われないことに対して、「頑張ってないから当然だよね」と気持ちが楽になることです。
 短所は、周りの評価が気になる性格の人は頑張らないことが難しい、給与が上がらない状況が続くため節制した生活を送る必要があることです。

皆さんは、他にどのような対策が考えられるでしょうか。

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