白衣と『ガリレオ』(1)
皆さんは白衣を着たことがあるだろうか?僕の家には少なくとも3着の白衣がある。それぞれ中学、高校、大学の頃に買ったものだ。だから僕は中学生のころから白衣を着ていたことになる。
僕は小学校の高学年くらいから、いわゆる科学の実験が大好きな子どもだった。特に福山雅治主演のテレビドラマ『ガリレオ』は食い入るように見ていたことははっきりと覚えているし、僕のその後の進路に少なくとも影響を与えたことは間違いないだろう。不可解な事件を天才物理学者である湯川学が科学を用いて解決する。彼は白衣を着て大胆な実験を行い、黒板に複雑な数式を書き連ねて事件を解決する。そんな科学者になりたい。湯川は物理学者であったが、僕が最も興味を持っていたのは、分野で言えば化学であった。僕は自分の部屋や庭でいろいろな実験をしていた。お小遣いをためて東急ハンズでビーカーやフラスコを買った。食塩水の電気分解をした時には塩素ガスを吸って気分が悪くなったようなこともあった。
中学生になった僕は科学部に入部した。そして初めての白衣を手に入れた。僕はとてもうれしかった。放課後には白衣を着て、たくさんの実験器具を使って実験をすることができるようになったのだ。先生の許可を得ればガスバーナーや薬品を使うこともできる。憧れの科学者に一歩近づいた気がしたという気がした。そして一番好きで得意な教科はもちろん理科だった。中学理科では元素記号やオームの法則などが登場する。黒板に書かれる化学反応式や数式を見て、僕は興奮した。そして週末は市立図書館の科学書コーナーで難しそうな科学の本を借りては熱心に読んでいた。それはいわゆる中二病のようなものだったのかもしれない。世界には未知の現象が数多く存在し、科学を知っている僕にはそれを理解する能力がある。ほかの人とは違うことに興味を持っている自分は特別だと思っていた面があったことも否めない。
また、僕の中学では当時朝読書の時間があり、その時間はドラマの原作である東野圭吾の『ガリレオ』シリーズの文庫本を読むこともあった。それまでの僕にとって、本というものは科学や地理・歴史などの事実に基づいた情報を入手する媒体であるという面が大きく、フィクションの物語として登場人物の心情や関係の変化などに興味を持って物語を読むという経験はあまりなかった。そんな僕にとって、科学的に事件を解決するという軸を持ちながらも、湯川や草薙をはじめとする登場人物の関係性や心情の描写もしっかりとなされている『ガリレオ』シリーズは、科学とフィクションの融合という物語の面白さを気づかせてくれる作品だった。
科学への興味と中二病が入り混じったような状況ではあったが、それでも僕の知識は確実に増えていった。理科のテストでは学年トップクラスだったし、高校受験の模擬試験では偏差値70以上を取ることが多かった。そして僕は、科学者になるという夢への第一歩として、理数科のある高校を受験することを考えるようになっていた。
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