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物語「魔術師のたとえ」

 グルジェフがよくした小話「魔術師のたとえ」を物語風にしてみました。

魔術師=( ・∀・)  羊=( ´∀`)( ´Д`)

( ・∀・)あ~あ、羊の世話なんて、タリ~な~。羊飼いを雇うのもメンドくさいし、金がもったいないしな~。でも、管理しないと、あいつら逃げるからな。なんか、効率的ないい方法ないかな。僕が寝て過ごしていても、あいつらが勝手に食事して、楽々と皮や肉を取りにいける方法が。

( ´Д`)あの羊飼い、僕らの皮や肉が欲しいんだよね。いやだよ~、逃げよう~

この牧場から羊が逃げるのがよく目撃されました。

( ・∀・)!!!そうだ、いいこと思いついたぞ!!さすが、僕だ。頭いいな。よし、早速、実験してみよう。

羊のいるところに行ってみました。

( ・∀・)よしよし、まずはこのグループでやってみるか。

魔術師は、優しそうな声音で、こんな風に、羊たちに言葉をかけました。

( ・∀・)おまえたちは不死身であり、皮をはがれてもだいじょうぶ。それは健康によいことで、気持ちいいぐらいだ~。おまえたちは不死身だ~、皮はぎは気持ちいい~

( ´∀`)僕たちは不死身だ。どんなことをされても平気。皮はぎ、気持ちいい!!

不死身!不死身!

( ・∀・)お!うまく催眠術がかかった。よし、今度はあっちのグループでやってみよう。

魔術師は最初の成功に気を良くして、他の羊のところへ行きました。

そして、同じことをしました。

( ・∀・)魔術師の僕は良き主人であり、羊たちが大好きだ。羊たちのためなら何でもする。

( ´∀`)魔術師さんは、僕たちの良い主人。僕たちのためを常に思ってくれているすばらしい方

善き羊飼い

( ・∀・)うむ、順調順調。よし次だ!

二番目のグループにも、うまく催眠がかかりました。

( ・∀・)何が起こっても、それは今日のことではないので、心配はいらないよ~。ル~ルル~

( ´∀`)今日なら怖いことは起きないな。じゃあ、もっとのんびりしていよっと。

果報は寝て待て

( ・∀・)今度はあっちだ!

( ・∀・)おまえたちは羊ではないよ~。君たちはライオンなのだ。

( ・∀・)君たちはタカだ。お前たちは人間だ!

魔術師は次々と、羊たちに催眠術を施していきました。

( ´∀`)そうか!僕はライオンだ、ガオー

( ´∀`)僕はタカだ!

( ´∀`)僕は人間だ~、メェ~


( ・∀・)よし!これで、もう何の心配もいらないぞ。

 全てのグループの羊に催眠をかけ終わって、魔術師の心配はなくなりました。

 悩みがなくなって、その日は、いつにも増して、ぐっすり眠れました。

 こうして、羊たちは、ニコニコして、魔術師のところに留まるようになりました。

 魔術師からどんな無理難題を吹っ掛けられても、すべて「健康のためにいい」と捉え、嬉々として従いました。

 また、たとえ、逃げようとする羊がいても、タカにクラスチェンジした羊や、ライオンに変身した気になって態度のでかくなった同族に、阻まれ、逃げることは不可能になりました。

 柵の必要がなくなったので、取り除かれました。

 やがて、タカとライオンの睨みに恐れをなして、誰も、逃げようという気を起こさなくなりました。

 柵なしでも、羊たちは決められた範囲で、過ごすようになりました。

 それどころか、大人しく言うことを聞いていれば、タダメシにありつけるので、逃げようとか、逆らおうという気は徐々になくなっていきました。

 病気になっても、大切にされ、ハッピーになる薬を打たれて、すぐに元気になるので、野生に戻ることが、段々怖くなっていきました。

 たとえ、そのタダメシの陰で、どこの誰の皮が剥がれようとも、自分さえ、無事なら、それでよかったのです。

 

数日後。

魔術師は、羊たちの皮と肉を取りに行きました。

それは、羊たちが、心待ちにしていた日でもありました。

( ・∀・)ひっひっひ、これから皮を剥がれるとも知らずに、ニコニコしやがって。

( ´∀`)皮剥ぎは健康にいい~


 この話のオリジナルをこちらに記載します。

小話「魔術師のたとえ」

 グルジェフがよくしたこんな小話がある。

 「むかし、とても裕福な魔術師がいて、たくさんの羊を飼っていた。この魔術師は、とてもケチだった。羊飼いを雇いたくない。羊たちのうろつく草原に柵を設けるつもりもない。羊たちはよく森に迷い込んで、断崖から落ちることもあった。それによく逃げ出した。魔術師が自分たちの肉と皮を欲しがっているのを羊たちは知っていて、これは勘弁してもらいたかったからだ。

 ついに魔術師はいいことを思いついた。彼は羊を催眠にかけ、羊たちに暗示をかけた。第一に、おまえたちは不死身であり、皮をはがれてもだいじょうぶ。それは健康によいことで、気持ちいいぐらいだ。第二に、魔術師は良き主人であり、羊たちが大好きだ。羊たちのためなら何でもする。第三に、何が起こるにせよ、それは今日のことではないので、心配はいらない。さらに魔術師は、おまえたちは羊ではないのだと暗示をかけた。何匹かには、おまえたちはライオンなのだと言った。何匹かには、おまえたちはタカなのだといった。何匹かには、おまえたちは人間だと言った。何匹かには、おまえたちは魔術師だといった。

 このすべてを終えた後、魔術師はもう、羊のことで気をもんだり、心配したりすることがなくなった。羊たちはもはや逃げようとせず、魔術師が彼らの肉と皮を必要とする日が来るのをおとなしく待つようになった。 」

和尚のコメント

 和尚は、グルジェフのこの小話にしばしば言及します。

 『黄金の華の秘密』の最初、この小話を紹介した後、グルジェフがこの寓話をこよなく愛していたと述べて、こう続けます。

彼の哲学全体がこの小さな寓話のなかに含まれている。そしてこの寓話は、通常の無意識状態にある人間を表している。この話は、あるがままの人間を最も美しく描いてみせている。
(中略)人間はまさに生まれ落ちた瞬間から催眠術をかけられてゆく。社会は人間の味方であり、人間の幸せのために存在するのだと信じるように催眠術をかけられてゆく。それはまったくの誤りだ。人間は自分が不死であると信じるように催眠術をかけられてゆく。そうではない。人間は不死になりうるが、今はちがう。催眠が解けずに残っているかぎり、人間はけっして不死にならない。

和尚『黄金の華の秘密』めるくまーる、1999、p,8-9

 去年の「グルジェフ:苛烈な目覚まし時計」で、グルジェフについて、簡単に紹介しました。

 実際、グルジェフ、また和尚や、他のマスターや覚醒者といった存在は、人々を催眠状態から目覚めさせるために働きました。

 方法は異なれども、目指すところはその一点です。

 人々が目覚め、真に自立したら、支配できなくなるので、彼らは全員、何らかの形での排斥・迫害を経験しています。

 しかし、時の試練に耐えて残ったのは、彼らが語った言葉であり、行ったことです。

 彼らの言葉は、常に洞察に溢れ、自分の蒙を開いてくれる目覚し時計です。

 なお、郷 尚文さんが、グルジェフの本や研究書を書かれ、電子書籍で出されています。

 グルジェフの主著『ベルゼバブが孫に語った物語』『注目すべき人々との出会い』『生は私が在るときにのみリアルである』が電子書籍で読めるのは、郷さんのおかげです。

 ただ、最初に読むなら、小森健太朗『グルジェフの残影』(文春文庫)という、小説がお勧めです。

 
  こちらの記事でも、グルジェフとこの小話に触れています。


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