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記事翻訳「少数派のルール:科学者たちが発見した、アイデアの広がりの転換点」

 しろのさんがこちらの記事で、「人口のわずか10%が揺るぎない信念を持っている場合、その信念は必ず社会の大多数に採用される」という研究に言及していました。

 Physical Review誌に掲載されていますが、こちらはアカウント登録が必要なため、論文本体を見ることができません。

 しかし、科学ニュースでは大手と言える、サイエンスデイリーにも取り上げられており、この記事の翻訳を以下に掲載します。

「Minority rules: Scientists discover tipping point for the spread of ideas(少数派のルール:科学者たちが発見した、アイデアの広がりの転換点)」

翻訳者jacob_truth 翻訳完了日:2021/11/22(月)

原文:

日付:2011/07/26
出典:レンセラー・ポリテクニック・インスティテュート
要約:科学者たちは、人口のわずか10%が揺るぎない信念を持っている場合、その信念は必ず社会の大多数に採用されることを発見しました。科学者たちは、コンピュータや分析手法を用いて、少数派の信念が多数派の意見になる転換点を発見したのです。


 レンセラー工科大学の科学者たちは、人口のわずか10%が揺るぎない信念を持っている場合、その信念は必ず社会の大多数に採用されることを発見しました。レンセラー大学の社会的認知ネットワーク学術研究センター(SCNARC)のメンバーである科学者たちは、コンピュータや分析手法を用いて、少数派の信念が多数派の意見となる転換点を見つけました。この発見は、イノベーションの普及から政治的イデオロギーの動きまで、社会的相互作用の研究や影響に、密接に関わります。

 「熱心な意見保持者の数が10%以下になると、アイデアの普及に目に見える進歩が見られなくなる。この規模のグループが多数派になるには、文字通り宇宙の年齢に匹敵する時間がかかるだろう」と、SCNARC所長のボレスワフ・シマンスキー氏とレンセラー大学のクレア&ローランド・シュミット特任教授は述べています。「逆に、その数字が10%以上になると、アイデアは、燎原に広がる野火の如く広がっていきます。」

 例えば、現在進行中のチュニジアやエジプトでの出来事も、同様のプロセスを示しているように見えると、シマンスキーは言います。「これらの国では、何十年も政権を握っていた独裁者が、わずか数週間で突然倒されたのです」。

 この研究成果は、2011年7月22日発行の米国物理学会誌「Physical Review E」の早期オンライン版に「Social consensus through the influence of committed minor(献身的な少数派の影響による社会的合意)」と題して掲載されました。

 この発見の重要な点は、意見保持者が活動しているネットワークの種類にかかわらず、多数意見を変えるために必要な関与をした意見保持者の割合は、大きく変わらないということです。つまり、社会に影響を与えるために必要なコミットをした意見保持者の割合は、その見解が社会のどこでどのように始まり、どのように広がっていくかにかかわらず、約10%に留まるのです。

 この結論を導き出すために、科学者たちは、様々なタイプのソーシャルネットワークのコンピュータモデルを開発しました。あるネットワークでは、一人一人がネットワーク内の他の全ての人とつながっていました。2つ目のモデルでは、多くの人とつながっている特定の人を、オピニオンハブやリーダーとしました。最後のモデルでは、モデル内の全ての人に、ほぼ同数の人脈を与えました。それぞれのモデルの初期状態は、伝統的な見解を持つ人たちの海でした。それぞれの人たちは、ある見解を持っています。しかし、重要なのは、他の見解に対しても心を開いていることです。

 ネットワークが構築されると、科学者たちは、それぞれのネットワークに何人かの真の信奉者(true believers)を「散りばめ」ました。この人たちは、自分の考えを完全に固めていて、その考えを変えようとしても動じない人たちです。真の信奉者たちが、伝統的な信仰体系を持つ人々と会話をするようになると、潮目が徐々に、そして急激に変化し始めました。

 「一般的に、人々は不人気な意見を持つことを好まず、常に局所的にコンセンサスを得ようとするものである。私たちは、それぞれのモデルにこのような力学を設定しました。」と、SCNARCのリサーチアソシエイトで論文の著者であるサミート・スレイニヴァサンは述べています。そのためには、モデルの各個人が自分の意見について「話す」ことが必要でした。聞き手が話し手と同じ意見を持っていれば、聞き手の信念を強化することになります。あるいは、その意見が違っていれば、聞き手はそれを検討し、別の人と話をすることにしました。その人も新しい信念を持っていれば、聞き手はその信念を採用します。

 「変革の担い手がより多くの人々を説得し始めると、状況は変わり始めます」とスレイニヴァサンは言います。「人々は、最初、自分の意見に疑問を持ち始めます。次に新しい見方を完全に取り入れて、さらに広めていきます。割合が10%未満の場合に見られたように、真の信奉者が隣人に影響を与えるだけでは、大きなシステムの中では何も変わらないのです。

 この研究は、意見がどのように広がるかを理解する上で、幅広い意味を持っています。「ある意見を効率的に広めたり、発展途上の意見を抑制したりする方法を知ることが役立つ状況は、確かにあります。」と、物理学の准教授で論文の共著者であるギョルギー・コルニスは、述べています。「例としては、ハリケーンが発生する前に、町に移動するよう迅速に説得する必要があったり、地方の村で病気の予防に関する新しい情報を広める必要があったりする場合です。」

 研究者たちは現在、自分たちの計算モデルを歴史的な事例と比較するために、社会科学やその他の分野のパートナーを探しています。また、彼らは、社会が二極化しているモデルを入力した場合に、その割合がどのように変化するかを研究したいと考えています。従来のように1つの伝統的な意見だけではなく、2つの対立する意見を持つようになります。二極化の例としては、民主党対共和党が挙げられます。

 この研究は、ネットワーク科学共同技術アライアンス(NS-CTA)の一部であるSCNARCを通じて、陸軍研究所(ARL)、陸軍研究局(ARO)、海軍研究局(ONR)から資金提供を受けています。

 この研究は、レンセラーのSCNARCで行われている大規模な研究の一部です。このセンターでは、社会学、物理学、コンピュータサイエンス、工学などを含む、幅広い分野の研究者が参加し、社会的認知ネットワークの研究を行っています。このセンターでは、ネットワーク構造の基礎と、その構造が技術によってどのように変化するかを研究しています。このセンターの目的は、ネットワークをより深く理解し、新たに生まれたネットワーク科学という分野のための確固たる科学的基盤を築くことにあります。

Szymanski、Sreenivasan、Kornissに加え、数学科のChjan Lim教授、大学院生のJierui Xie(筆頭著者)、Weituo Zhangが研究に参加しました。


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