統合失調症の私が、『救急精神病棟』を読んだ感想と病気を振り返る
最近、『救急 精神病棟』と言う本を読んだ。救急精神病棟に泊まり込みで取材をしたドキュメンタリー本。
自分が実際に精神病院に強制入院した経験から、それから今もまだ付き合っている統合失調症という病気について知りたかったから。
自分の過去を振り返りながら、うろ覚えで感想を書いていく。
この救急精神病棟という名の千葉にあるセンターには、今すぐ治療が必要な患者だけを入院させる施設。派手な患者が運ばれてくる。統合失調症の急性期なんかも多い。
印象に残っている患者は、仕事で大きなミスをして、そこから様子がおかしくなり、「ナンバーワンを呼んでこい!」「世界が終わるんだよ!」などなど叫んでいる。「世界が終わるからみんなに教えなきゃ」と思い駅の構内でアナウンスしようとマイクを奪い取って通報を受け家族に運ばれてきた男。
周りで見ている看護師曰く、急性期が派手なほどあっさり回復していく事が多いらしい。この男の人は、数週間したら落ち着きを取り戻し、新聞を見る横顔は普通のサラリーマンと変わらないように見えた、と書いてあった。実際に通っている病院の看護師に「そうなの?」と聞いてみると「そうだね〜確かにあるかもね」との事。ちょっと安心した。
急性期の私はといえば、何か悟ったような気分になり、医者の意見がまともに聞けなかった。「私の方が詳しい」って何故か思ってた。なので入院にも反発した。私は病気じゃないって。「とりあえず病棟に行こう、それから話を聞く」と言われるも話を聞いてくれず、行った先は家族とも会えない閉鎖病棟なんだと知った時はなんとなく騙された気分になった。悲しいのと悔しいのと現実を受け入れきれないのと色々な感情があったがうまく表現できずに、言葉にならない声が抑えられず、就寝時間を過ぎても「あーーー」とか「うーーー」とか言ってた。施設中にティッシュを撒き散らして歩いた。物に当たった。暴れたら病院側が預かり拒否みたいになって解放されるんじゃなかろうか、とその時は何故か思ったから。当然だけど保護室という鍵付きの牢屋みたいな部屋に入れられた、大人8人ぐらいに引きずられながら全身全力で抵抗した。不満がたくさんある、あるけど、出し方がわからない。なんだか世界中全てが敵に見えた。
私は入院中、幼少期をやり直した気分でもあった。衝動で動いて抑制が効かない自分をどこか俯瞰的に眺めながら、でもここでも我慢をしたら壊れそうだとも思っていた。長年の我慢が噴出して病気になってしまったのではなかろうか?とも思っている。
担当の看護師にめっちゃ怒られた。最初は福島訛りの怒り方がなんだか母親そっくりで、「何も言わないで」と反発した。「そんなんだったら帰るね」って部屋を出ていってしまった。が、私が少し落ち着いたのもあって、それから、「寂しい!」と正直に伝えたのもあって、ちょこちょこ顔を出し話を聞いてくれるようになった。入院に納得できないこと、医者が話を聞くと言ったのに全然来ないことを伝えた。言われたのは、「それは納得できないわ。でも暴れてはダメよ。涙を流しても良い、上手く言えなくてもいい。でもちゃんと自分の言葉で伝えるの。味方だから。急に暴れるんだもん、そんなの知らなかった〜。」以後、この看護師とは不満も全て相談するようにして、おしゃべりもできるようになった。いまだに病院でたまに見かけるが、大好きになってしまって見かけると手を振りたくなる、というか振る。
ベッドを改造してまた怒られる。病棟では怒られることがたくさんあったけど、ホワっと何か母親の愛みたいなものを感じるのでした。怒られ慣れてない私にはホワッと。なんか上手く言えない。また、母親像をひとつ塗り替えた気分でもあった。何か言っても責められるだけではないのね、相談しても良いのねと。まだまだ、傷はあるけれど。
もうひとり、本の中の印象的な患者。その人は若い少年。ほんわかしてるけど、急に神様モードになる。「僕は神になったから薬はいらないのです」とか「我は大日如来なり!毒殺しようものなら地獄に落ちるぞ!」とか。でも、本人にはその記憶がない。両親に話を聞くといわゆる「良い子」で、一流と呼ばれる大学にも合格していた。勉強しようにも頭に入ってこず、引きこもるようになり、幻聴と独り言が増えたところで両親に連れてこられた。
周りの看護師曰く、「神様モードにならないと表現できないことがあるんじゃないかなあ」との事。良い子を演じて、ずっと本音が言えなくて爆発してしまったのではなかろうか。
この人、食べ物も自分で食べられなくなり、昏睡状態になっていく。昏睡状態って、頭が真っ白になる瞬間だったり、あれ?何しようとしてたんだっけって思う瞬間だったり、普通の人でもよくある事らしい。つまり自分を表現できなくなる状態のこと。こうなると、治るまでに時間がかかる。だから周りの看護師曰く、気持ちを汲み取って代わりに表現してあげることが大事だと語る。自分がモヤモヤ悩んでいた事が言語化されて救われたような気持ちになった経験は私にも何度もある。
それからしばらくして一言二言ぐらいは口を聞けるようになり、ふとした瞬間に「うるせえ、あっちへ行け…」と神様モードにならなくても看護師に悪態をつけるほど回復していった。病気になってみて、本音に蓋をしないって大事だなあと思った。
病気になっていなかったら、と思うことがある。我慢を続けていたのではないか、人に頼ることができなかったんじゃないか、一生本音で話すことがなかったんじゃないか、相談できずに一人で抱え込んでいたんじゃないか…
ECTという脳に電気を流す、電気けいれん療法も本の中には出てくる。実は結構効果があるらしい。が、あっけなく治ってしまうため患者が自分の病気について振り返ったりしないし、再発率も高い傾向にあるそうだ。
ここまで回復するのに約1年ぐらい費やしたが、大変な思いをしてやっと人間って自分のことを振り返ったり見直したりするのかなと思う。この病気と付き合っていくしかないのか、とちょっと覚悟ができないが、仕方ない!という感じ。嫌だったけど、得たものはあったよ。
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