英文学の書き出しその2:「穴」
こんにちは。
「英文学の書き出し」ということで毎週ひとつの作品の冒頭を取り上げ、解説や感想をはなします。と言いながらまだ二回目なので、どれだけ続けられるか分かりませんが、ご了承ください。
冒頭以外のストーリーの大きなネタバレはないのでご安心ください。
前回の投稿ではシャーロック・ホームズの「ボヘミアの醜聞」の最初のパラグラフについて話をしましたが、今回はもう少し新しい作品について感想を述べたいと思います。今日扱う作品はルイス・サッカーの「穴」という作品です。
「穴」(原作タイトル:holes)は1998年に出版されたルイス・サッカーによる小説で、ニューベリー賞を始めとする様々な賞を受賞しています。若者を対象としたいわゆるジュブナイル小説で、英語がそこまで得意ではない方も楽しめる小説かと思います。また、若い人向けの作品ではあるものの、複雑なストーリーと人間関係が交差した、大人から子どもまでが楽しめる小説です。
なお、先週紹介した「ボヘミアの醜聞」とは違い、この作品はまだ著作権法によって保護されていますので、著作権に則って紹介をせねばなりません。そのため、引用元を明確にし、引用部分も最初の数行にとどめています。よって、少々量的に物足りない解説になるかもしれませんが、ご理解ください。続きを知りたい方はリンクを貼っているので、ぜひ買ってください。もし、引用方法が不適切、不十分だと思われた場合はコメントなどで教えていただければすぐに直します。
原文
見てわかる通り、作品の舞台となる"Camp Green Lake" がどれだけ魅力のない殺風景な場所かが如実に伝わってきます。なお、"Camp Green Lake"は作中では少年院のような施設で、そこに送り込まれた子どもが本作の主人公です。そこでどんな事件が起こるのか、タイトルの「穴」が何を意味するのか、それは読んでからのお楽しみに…
若年層をターゲットに書かれているため、難しい文法や語彙はほとんどなく、大変シンプルな文章ですが、筆者の端的かつ秀逸な描写、特徴的な文体がこの冒頭だけから伝わってきます。まず、一文目。「キャンプ・グリーン・レイクにレイク(湖)は無い」という矛盾した文章から始まります。やはり、はじめの一文を読んで読者の頭に「?」が浮かんだら作者の勝ちだというのはどの言語でも黄金のルールなのでしょう。一文目で読者をひきつけた後、この場所の過去と未来を対比し、昔は巨大な湖と町があったものの、今となってはどちらも消えてしまって賑わいを失った味気のない荒地となっていることが分かります。町や住人の衰退を湖と同じように"shriveled and dried up"すなわち「縮んで干からびた」と表現するのも分かりやすいです。
最後にその土地の気温について記述があります。日陰にいても華氏で95度、すなわち35℃。そして最後にさりげなく、"— if you can find any shade. There's not much shade in a big dry lake."と付け加えられています。日陰でさえ35℃もあるのに、このキャンプには日陰さえほとんどないわけですから、実際にはそれ以上の灼熱地獄で生活を強いられるわけで、多くの読者が主人公を不憫に思い、同情してしまうことでしょう。シンプルな言葉で状況を端的に伝え、読者をひきつけられるのはさすがだなと思います。
以上、ルイス・サッカーの「穴」について見てきました。冒頭だけですが、この作品の魅力が少なからずわかっていただけたら幸いです。続きを知りたいかたのためにリンクを貼っておきます。また、2003年には映画化もされたみたいなので、興味があればみてください。(私は見たことありません。)
ちょっと短いですが、今日はこの辺で。頑張って来週も書きます。おそらく。
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