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シンガポールで子供を育てるべきか?~タイ起業10年記④

起業当時、我が子の年齢は5歳と1歳。

それまでの2年をシンガポールで過ごし、外国人のお友達が出来たり、英語を学ばせることが出来たりと、「海外での子育てっていいな」と思っていた。東南アジアでのキャリアを継続したい理由の一つは、子育て環境という面も大きかった。

ただ自分にとってシンガポールは「子供を育て続けたい」という思う場所では無かった。シンガポールではなくタイを選んだのはそういう理由からだ。

先日、ある方との会話でこんな話題が出た。

シンガポールって"路地裏"が無い国ですよね。

私もそれに深く同意した。

もちろん、魅力的な通りも、味わい深いお店もある。だけども、人工的に造られた感じのある町はどことなく深みが無い。毎日が「お台場に住んでいる」ような感覚を覚えてしまうのだ。

そして、アジアでありながらアジアではない雰囲気が漂うシンガポールには「文化の香り」がしない。文化というのは、歴史の厚みによってしか作られないのだ。

スティーブ・ジョブズは、創造性を養いたいなら「スタンフォード大学に行くよりも、パリで詩を学べ」と言ったという。

文化というのは、その街にいないと体感できない。
そして、教育というのは様々な刺激を"毛穴から取り入れるように"して実現されるものだ。そういう、体感的な学びがシンガポールにいると得られないような気がした。

反対に、タイはアジアで最も文化が残っている国の一つだと思う。
よく言われるように、日本とタイだけがアジアで植民地になっていない。それゆえに、文字や文化が保存されているのだ。豊かな文化があることで多くの観光客が訪れたい国なのも、そういう理由が大きく関係している。

結果としてアジアで最も英語が苦手な両国になってしまっているのは皮肉な話だが、全てがキレイに整ったシンガポールよりも、街がデコボコしていて足元を気をつけて歩かないと困るようなタイの方が、子供たちは豊かな感性を持てるんじゃないかと思った。
そして海も山も、タイの方が多い。自然は子供にとって最高の学び場だ。

もちろん、ビジネスのことだけ考えたらシンガポールは最高だ。お金と情報が集まり、"優秀な"人が多く集う街。有名なインターナショナルスクールも沢山ある。

だけど、アジア人として子供を育て、自分自身の感性も磨いていくのであれば、我が家にはタイの方が合うんじゃないか、直感的にそう思った。そんなことを考え、起業の場、家族で暮らす場としてタイを選んだ。


そして、会社の名前を "Asian Identity" (アジアらしさ)にしようと決めた。

そこには、アジアの文化に誇りを持ち、欧米のモノマネに陥ってはいけないという自分のこだわりと、ある人物からのインスピレーションが大きく関係している。

(つづく)

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