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タイ起業10年記②~心が震えるアドバイス

時間軸が少し前後するが、タイ生活をスタートする前に、一度日本に帰国することにした。

一つは、日本に法人を立てるため。

タイは独資で会社を設立することが出来ないので、いきなり法人を立てるのはリスクがある。であればタイの事業は当面は友人の会社を借りて行うことにして、自分の納税などは日本法人を立てそこで行うのが良いと判断した。(なぜタイにしたのかはまた別途書きます。)

もう一つは、起業についてアドバイスをもらいたかったから。

「起業する」と決めたものの、本当に自分がそんなチャレンジををしてよいのかにまだ不安があった。カッコ悪い結末にもなりたくないし、家族を路頭に迷わせるわけにはいかない。

そうした不安を追い出すために、お世話になった上司や先輩など、既に起業している諸先輩方にアドバイスをもらいに行った。私にとっての「賢人」たちだ。

起業プランを資料にまとめて、ボコボコにされてもいいからフィードバックをもらおうと思って臨んだ。

今でもそれぞれの打ち合わせの風景をよく覚えているが、一つ一つがとても緊張する時間だった。

結果として、その時間がメチャクチャ良かった。

起業プランは甘い部分も多くたくさんのフィードバックをもらったが、トーンは非常に好意的で温かいものばかりだった。

僕が人生の節目に決意を持って臨んでいることを感じ取ってくれたのかもしれない。勇気を持って相手の懐に飛び込むことの大切さをそこから学んだ。

いくつか金言だと思ったアドバイスを紹介する。

「撤退ラインを決めろ」
際限なくお金をつぎ込むことになる不安が、挑戦をしり込みさせる。自分の中で「ここまでお金を使ったら、この挑戦は終わり」と決めておけば、泥沼に入り込む不安は軽減され、メンタルが安定する。

「資本を簡単に譲り渡してはいけない」
資本構成を間違えると、後悔しても後戻りできない。それほど資金がいるビジネスじゃないんだから、まず100%で始めなさい。資本をお渡しする場合は、自分が汗水たらして働いたお金を渡してもいいと思えるか?をよく考えろ。それが無理なら、資金を出してもらうのではなく「貸してもらえませんか」と勇気を持って言え。

「なるべく早くチームを持て」
起業すると社長の手はすぐに塞がって動けなくなる。また、一人だと精神的にもキツクなる。早期に信頼できるチームを持つことの優先順位を上げろ。

「ビジネスプランを描きすぎるな」
ビジネスプランは後からコロコロ変わっていく。最初からキレイに描こうとせず、また描き切れないことに悩むのも無駄。仕事をする中で、ビジョンとビジネスモデルは徐々に"にじみ出て"くる。

「誠実に仕事をすれば、絶対に潰れることは無い」
ビジネスは最終的には信頼。目の前の期待に全力で答えようとする人で、失敗した人は見たことが無い。だから、一つ一つ全力でやっていれば、それでOKと自分に言い聞かせろ。

など、今思い出しても肝に銘じたいことが沢山ある。(私はこういう言葉を自分の金言ノートにまとめている)。

とにかく、総じて肯定的にアドバイスをくれた。
「人ってこんなに優しいんだ」と震えるような時間だった。
中には、「とりあえず応援したいから〇〇〇万円発注するよ」という人もいて、その場で涙が出そうになった。

あれから10年経ち、自分自身もまだ挑戦中の身ながら、他人の起業を応援する立場にもなってきた。改めて、僕もこういう姿勢で人の力になれるようになりたいと思う。

そんな豊かな時間を過ごし、エネルギーを得てシンガポールに戻ってきた。

空港に降り立った時、「起業するべきかどうか?」という不安はもうすっかり無くなっていた。

(つづく)


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