【終活110番032】 痛くも痒くもないのに切るな

個人的には、高齢者ともなったら、安直にメスを入れないほうがいいと思っていますが…。

後期高齢者を対象に、自治体が盛んに行っている無料のがん検診。タダだから行かなきゃ損だとばかりに、あるいは、どうせ用事もないのだからとばかりに受診して、予想外にがんの疑いありと告げられて精密検査に回される。そのなかから一定割合で、「本当にがんだとまずいから」と摘出手術を勧められるままに首を縦に振ってしまうシニアが必ず出てきます。何の自覚症状もないのに、です。

疑わしきは切るのが外科医の王道です。医者にしてみれば所詮は他人事ですし、商売にもなるから、「今なら成功するから、大きくならないうちに取っちゃいましょう」と軽く言いますが、この「手術の成功」という言葉には大いなる注意が必要です。たしかに、目に見えるがん細胞を切除すれば、医者にとっては手術成功となります。しかし、患者には術後の「生活=苦難」が待っています。ひとことで言えば、繰り返される抗がん剤治療と放射線治療によって、日々、苦しみもがきながら生きていかねば(死んでいかねば)ならないのです。

これでは、医者にとっては手術成功であっても、患者にとっては手術という選択は失敗だと言わざるを得ません。何ら自覚症状もないのに摘出手術に踏み切って、結果的に、後遺症や合併症でその後の暮らしが気の毒なまでに悲惨だったケースをたくさん見てきました。何十年とシニアの人生を支えてきたことで疲弊して機能低下してしまった五臓六腑には、健康な細胞まで瞬殺してしまうほどの劇薬である抗がん剤の威力に耐えられる力はもう残っていないのです。

そもそも、がんは生活習慣病です。少し冷静に考えれば、がん細胞をはびこらせてしまった原因である悪しきライフスタイルを改めない限り、いくら目に見えるがん細胞だけを切り取っても根本的な解決にはならないことはわかるはずです。でも、人間という弱い生き物は、自分ががんと告げられると、「ガーン!」と動揺してしまって、白衣を身に着けた医者の前にひれ伏して、ついつい手術同意書にサインをしてしまいがちです。気をつけましょう。

がんというのは、年齢が上になるほど進行が遅いし、痛みもほとんど感じない病気です。なので、医者の言葉に惑わされず、じっくり作戦を練るべきです。本当に摘出手術を受けるのが得策なのかどうか。他の方法がないのかどうか。あるとすれば、それぞれのメリットとデメリットは何なのか。少なくともふたり以上の別の医者の見解を聴くべきです。そう。これがセカンドオピニオンであり、サードオピニオンなのです。

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