介護地獄から脱出するための7つのステップその2「医療相談室のMSWと面談する」

誰でもできる介護地獄から脱出するための7つのステップ…。           ステップ2です。

あなたの苦しみ(限界まで追い込まれていて、家族の入院を強く望んでいること)がどうにか伝わったとすると、医師は言うでしょう。

「そういうことでしたら、一度、医療相談室に相談してみてください」

医師は電話で段取りをすると、あなたに医療相談室の所在を教えてくれます。そこであなたは、MSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)なる職員と面談することになります。

そこでは、診察室で医師と向き合っていた時間と比べれば、たっぷりと話を聴いてもらえますから、いかに老親または配偶者の問題行動に悩まされているか、それが仕事と家庭にどのような不具合をもたらしているか、実の親(または配偶者)に対してどんな感情を抱いているか等々を、ちょっと大袈裟くらいに訴えることが大切です。相手が女性であれば特に、です。

そして、さいごにこう言ってください。

「何とか自分のできるところまではやってみようと思ったのですが……。もう限界です。仕事も家庭も滅茶苦茶になってしまって、自分がなにか良からぬことをしてしまいやしないかと……不安でならないのです。緊急避難的な意味合いで、少しの間、入院させてくれるところなど、ないものでしょうか???」

いいですか?ここはとっても重要なところです。

このMSW、「ただの相談係だろ」なぁ~んて、軽く見てはダメです。こと入院病棟のMSWというのは、あなたの今後の浮沈を握っているといっても過言ではありません。

というのも、入院病棟では、定期的に入退院判定会議というのをやっています。限りあるベッド数です。だれを退院させて、だれを入院させるのかを関係専門職で協議して決定するための会議です。認知症病棟は人気が高いです。競争が激しいです。順番待ちを飛び越えて、一日でも早く入院の権利をゲットしなければなりません。で、入退院判定会議の場で、あなたの親御さんを入院させるべきだとプッシュしてくれる存在、それが他ならぬMSWなのです。
 
肝に銘じてくださいよ! 本当に重要なのでしっかり理解してください。毎週一回の頻度で開催されるこの会議に出席するのは、入院病棟の医師のほか、看護師長、看護課長、管理栄養士にOT・PT・ST(いずれもリハビリ系の専門職)、ケアマネジャー、介護系のフロアリーダー。場合によっては事務長。そしてMSWです。

医師をはじめとする専門職というのは、検査データ等、科学的根拠に基づいて意見を言うわけです。これに対して、唯一、あなたと接点を持ち、あなたの置かれた苦境に感情移入して、唯一、情緒的な側面から意見を言ってくれる人。それがMSWなのです。

だからこそ、あなたは絶対にMSWを味方にしなければならないのです。嫌われないまでも、「この人……、なんかなぁ~」などとネガティブな印象を与えてしまったら元も子もありません。医療相談室に配属されているMSWは、キーマンだとしっかり覚えておいてください。

そういった意味では、初回面談のとき、スーツをビシッと着こなして仕事できそうオーラを出していたり、逆にチャラチャラとした軽い感じを出していたり……というのは考え物です。はじめてMSWの前に登場したあなたを見て、どんな第一印象を与えたいのか。そこを考えておく必要があります。いや、もっと言えば、あなたを見てどう感じてほしいのか。MSWの胸中にどんな感情を抱かせたいのか。そこから逆算したビジュアルとデリバリーとシナリオを考えて演じる必要があります。

『まあ!そうとう追いつめられている感じね。何とかしてあげなきゃね』

そう思ってもらいたいということです。そんな感情が掻き立てられるような立ち居振る舞いをしたほうが得策だということです。もちろん、あなたの置かれた状況が、本当に切羽詰まったものだとしたら、自然とそれは相手に伝わる確率が高いです。でも、いざその段になって、緊張のあまり、思いを十分に伝えられなかったという相談者がいることも、また事実なのです。それはちょうど、診察室で医師と向かい合った後期高齢者患者が、うまく真意を伝えられないのとよく似ています。しっかりと対処してください。

「入院待ちの患者さんも多くいるのですが……。この場でどうなるかを明確にお伝えすることはできませんが、入院に向けて検討してみましょう」

こんな趣旨のコメントを引き出せたら大成功です。あなたの思いの丈がMSWにきちんと伝わったとしたら、事態は好転するはずです。もしも、その場で認知症病棟の空き状況を確認してくれたならしめたものです。空き状況によっては、何日か待たなければならないし、もしかしたら、一か月後の外来受診まで我慢しなければならないかもしれません。しかし、必ず前には進みます。その病院ではなくとも、別の病院と情報交換して、入院可能なところに繋いでくれることもあります。

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