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海外介護教育2つの発見

海外介護教育最前線に身を置く者として、毎週木曜日のチャレンジは、ストレスでもあり、喜びでもあります。

昨日も2つの大きな発見がありました。1つ目は、午前中の特定技能介護オンラインクラス@モンゴルでの発見です。

決められた枠組みの中で、粛々とマニュアルに沿って進めていく教育ではなく、オンラインの良さを活かした、新しい海外介護教育のあり方を模索しています。

以前も申し上げた通り、特定技能介護試験の合格が簡単になったため、それを教える教師の価値が下落しました。試験それ自体が簡単になったというよりは、試験合格のためのノウハウが各社蓄積されたのでしょう。

とはいえ、その未来は最初から見えていたので、試験合格は最低限の仕事、それ以外に現場で役立つ知識と考え方をどうやって伝えていくかが、自らに設定した課題でした。逆に言えば、それができなければ、教師としての価値がなくなるなと思っていました。

ところが、コロナによってそのハードルがさらに上がり、『オンラインで』という条件が加わりました。学習者一人一人のインターネット環境と学習ディバイス(ほとんどがスマートフォン)に問題があるため、なかなかオンラインだけで教育を行うのが難しいのが現状です。

なので、私の解決策としては、送り出し国での介護教育は試験合格までとして、あとは学習アプリなどを使って各自知識の暗記に集中すること。

そして、それら知識の応用は、来日後の隔離期間を有効に活かして、集中的にオンライン教育を実施するのはどうかと考えています。そうすればネット環境は整い、学習ディバイスも、日本の受入れ施設が貸出してくれれば、十分に学びの環境は整います。

新たにコストが掛かることですので、受け入れ施設が『Yes』と言ってくれるかどうかが最大の関門ではありますが、コロナ禍の現状では最適解ではないでしょうか。

ただ、コストが掛かるといっても、オンライン教育なので人数制限はなく、1人当たりの費用でいえばそんなに高くならないと思います。

大切なのは、何を教えるかのコンテンツですね。そのヒントが昨日のモンゴルオンライン教育で見えました。

【軸は認知症ケア】

昨日の教科は『こころと体の仕組み』でした。その中で、〝障がい者の理解〟〝認知症の理解〟を教えました。ところが、〝認知症の理解〟を教えていた時に違和感を覚えました。



〝この説明だけではきっと認知症の理解はできないだろうな〟と心の中で思ってしまったのです。



厚労省が作った特定技能介護テキストはとても良くまとまっていますし、限られた紙面の中で、認知症について最低限の知識は盛り込まれています。

しかし、これだけで認知症を理解するのは不可能に近いなと気づきました。試験教科には、『こころと体の仕組み』以外にも、『介護の基本』『コミュニケーション技術』『生活支援技術』があります。どの教科にも、認知症が関わってくるのですが、認知症を横断的に学ぶ教科がないため、断片的な知識としてしか身に付かないのでは、という懸念が生じてきました。

これは、私自身がDementia Care Expert(認知症ケア専門士)の勉強をして、徹底的に認知症ケアを学んだからこそ、見えてきた視点でした。

逆に言えば、認知症ケアを中心に学ぶことで、各試験科目を横断的に学び直すことができるのではないかと気づきました。

したがって、来日後の隔離期間中のオンライン教育は、認知症ケアを軸にカリキュラムを組むのが良いのではないかという考えに至りました。

またしても私の悪い癖で、まだ誰からも依頼が来ていないのに、未来を先取りして、準備をしてしまいそうです(^^;)

【異文化理解力の必要性】

2つ目の発見は、毎回誰が参加するのかわからないアドベンチャー的なDementia "Design" Careのオンラインクラスでのものです。

外国人介護人材受入にあたって必要な教育は、



外国人向けの日本語と日本の介護の教育

日本人介護職員向けの、異文化理解力の教育、です。



その両軸で教育を行って初めて、外国人介護士が日本の介護現場で活躍できるようになると思います。日本人介護職員向けの、異文化理解力のコンテンツはすでに準備をしているので、しばらくは遠ざかっていましたが、昨日のDementia "Design" Careのクラスで、改めて異文化理解力の必要性を痛感しました。

当初の毎週木曜日のオンラインクラスでは、介護現場で使う英語力向上に力点が置かれていましたが、今では異文化理解力を高める場へとシフトしています。

日本に就労予定の学生はほとんど参加しておらず、純粋に日本の介護や認知症ケアを学びたいフィリピン人が集まっています。昨夜も20人程度集まりました。

介護や認知症ケアについて彼らと議論を深めていくと、各国の文化に深く根差していることが分かってきます。日本では先駆的な認知症ケアの実践であっても、一周遅れでフィリピンでは〝当たり前〟のこともあります。

例えば、認知症高齢者が地域イベントに積極的に参加するのが、日本では先駆的な取り組みになりますが、よくよく考えてみると、フィリピンの一般的なコミュニティの中には、普通に認知症高齢者らしきお年寄りや、精神障害と思わしき人々が一緒に暮らしています。

なので、彼らにとっては地域コミュニティの中のアクティビティよりも、むしろ高齢者施設内のアクティビティの方が斬新に映ることもあるでしょう。

各国文化背景を理解した上で、日本の介護や認知症ケアを伝えていかないと、認識に齟齬が生じてしまいかねないと、改めて気づかされました。双方向の学びの場に変換したことで見えてきた視点ですね。

異文化理解力の教育も、日本人だけで集まるのではなく、外国人も含めて行うことで、より質の高い教育が提供できるなと思いました。今後、是非とも実践していきたい取り組みです。



このように、毎週木曜日のオンラインクラスでは毎回大きな学びや気づきがあります。出来ることを繰り返すのではなく、出来なかったことや新しいことにチャレンジしながら、新し教育のあり方を模索していきます。

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