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中学生の前でお話してきたよ

お疲れ様でございます。
郡山市で要約筆記者として活動しているハナシチです。
最近いろんな顔を持ち出しすぎて自分が誰だかわからない。

中学生の前で要約筆記のお話する機会があったので、その内容を全文載せちゃいます。
どこでやったの?とか、どうしてやったの?とかはお話した学校に迷惑がかかってもイヤなので直接お会いしたときに聞いてください。

30分の内容です。
note用に修正しています。


みなさんこんにちは。
今日はこの分科会を選んでくれてありがとうございます。
今日は時間が30分しかないので、どのくらい要約筆記のことを伝えられるかわかりませんが、みなさんからいただいた質問を元にお話していきます。

まず要約筆記者とはどんなお仕事なのか。
聴覚障害を持つ方に話し言葉を要約し、文字化して伝える通訳になります。
通訳なんです。
みなさんが通訳と聞いて思い浮かべるのは外国語を日本語に訳して伝えるものだと思いますが、要約筆記は日本語を日本語にして通訳します。
イメージつきますか?
話し言葉は音による情報です。
音は目に見えますか?
見えないものですね。
聴覚障害者は耳からの情報が入ってきません。
視覚による情報がほとんどです。
音の情報を目に見える情報に置き換える。
外国語通訳は外国語を日本語に置き換える。
これが通訳、要約筆記は見えない情報を見える情報に置き換える通訳です。
情報保障という言い方もします。
同じく手話通訳がありますが、実は手話を使える聴覚障害者の数は少ないです。
なぜかというと、要約筆記を必要とする聴覚障害者は人生の途中で聴力を失った人たちがほとんどだからです。
元々は聞こえる人だったのです。
本当はあまりこちらから定義付けしてはいけないのですが、生まれつき耳が聞こえず手話を使う人をろう者、人生の途中で聴力を失った人を中途失聴者、難聴者といいます。
難聴者は手話が使えません。
それから難聴者は障害の程度がさまざまです。
高い音が聞こえにくい人、低い音が聞こえにくい人、電話が聞き取りにくい人、さまざまです。
難聴者の聞こえを補う、あるいは情報を正確に掴むために要約筆記者は存在します。
文字にして伝える方法には手書きとパソコン、それから音声認識、AIによるものがあります。
今日も要約筆記者が入って私の言葉を文字にしています。
百聞は一見にしかず、わかりやすいですね。

要約筆記者はどんな仕事をしているか。
消防士だったら消防署、介護福祉士だったら老人ホームのように勤務地が存在します。
要約筆記者には存在しません。
主な仕事場は難聴者の隣です。
決まった場所では仕事をしないんですね。
すなわち、難聴者から依頼があればどこでも駆けつけます。
今日のように学校に来ることもあれば、広いホールに行くこともあるし、病院の診察室に入ることもある。
特にコロナ禍ではリモートによる要約筆記も始まったので、自宅でも仕事ができます。
要約筆記者は今現在、仕事をほかに持っている方が多くいます。
まだ職業として確立しておらず、副業的面が大きいです。

次に要約筆記者に必要な資格です。
要約筆記者になるためには、各都道府県・各市町村で行なっている要約筆記者養成講座を受けます。
これが必要最低限の資格です。
学歴や職歴は関係ありません。
福祉の専門学校に行く必要もありません。
講座を受けて要約筆記の方法、聴覚障害について、対人支援の方法を学びます。
そして各自治体に要約筆記者として登録することで活動、仕事ができます。
もちろん資格もあります。
全国統一要約筆記者認定試験という、年に1回行われる試験があります。
これに合格すると、あなたは全国どこでも通用する力のある要約筆記者だと認められます。
少なくとも福島県ではこの試験に合格しなくても要約筆記の仕事はできます。
ただし、要約筆記は難聴者の社会参加を促し、人権を守るための福祉サービスです。
つまり、実力が伴っていないと信用を失います。
要約筆記者はみんなが同じくらいの能力を持っていないといけません。
人によって得られる情報の量に差がついたらいけないからです。
難聴者は生きるために情報を欲しています。
明日の天気がわからなかったらみなさんどうしますか?
雨の予報でも小雨なのか大雨なのか、いつ雨が降るのか、それによって持ち物や服装、予定も変更する可能性がありますね。
病院での受診で間違った情報を伝えれば命に関わることさえあります。
要約筆記者は難聴者に音の情報を正確に伝える責任があり、資格を持つことで難聴者から信用を得ることができます。
今は必要ないけど、というより人手がなくて資格がなくても仕事ができますが、いつかは必須になるかもしれませんね。
なお、この試験は合格率30%の狭き門です。
調べたところ、司法試験よりも合格率は低いです。

私は結構この仕事が気に入っています。
私は大学生のころに、難聴者の学生支援のアルバイトを行っていました。
ノートテイクといいます。
それまで聴覚障害を意識したことはありません。
ただパソコンのタイピングに自信があっただけです。
なんなら人と関わることすら苦手でした。
何回か学生課の前をウロウロしてやっとバイトしたんですね。
これが面白かった。
難聴者の学生支援に入ると、自分が受けていない講義を受けられました。
私は聞こえてくる話をひたすらパソコンに打ち込むだけなんですが、ただ授業を受けるより頭に入ったんです。
知らないことを知るのは楽しいです。
これは今も同じです。
要約筆記者に必要なこと、まずは日本語を好きなこと、これが大事だと思います。
パソコンが苦手なら手書きの方法があります。
機械の方が速いじゃない、そう思うかもしれませんが、パソコンはご覧の通り電気を使います。
スペースも取ります。
手書きは省スペース、電気要らず、そして災害時に役立ちます。
要約筆記には手書きもパソコンも両方必要です。

要約筆記者はずっと勉強し続けなければいけません。
文章をうまく扱えるようになるには、練習が大事だからです。
要約筆記者は心掛けていることがあります。
それは読みやすい文章を作ることです。
厚生労働省が出している要約筆記者養成テキストというものがあります。
この中に要約筆記の三原則が載っています。
「速く・正しく・読みやすく」
これが三原則です。
速くは話に追いつくため、そして同時性を保つための速く。
正しくは情報を正しく伝えるための正しく。
読みやすくは利用者が疲れないように、読みやすさを重視します。

話し言葉に追いつくのは大変なことです。
要約筆記者は話に追いつくために、実は2人がかりで入力をしていました。
連携入力という方法です。
1人で入力するより情報が増えます。
1足す1は2ですからね。

まだまだ要約筆記のこと、話し足りませんが時間がここまでのようです。
この分科会を聞いて、何か質問はありますか?

ありがとうございました。
それでは以上で私の授業を終わりたいと思います。
要約筆記のこと、少しでも理解してくれたら嬉しいです。



ここからはハナシチさんの与太話です。
今回のような機会をもらえたのは本当に嬉しいことです。
中学生たちも真剣に話を聞いてくれていました。
しっかり準備していった甲斐がありました。
ひとつ肩の荷が降りてほっとしています。

前回の記事から有料記事にしていますが、別に有料部分には文章は存在しません。
全文公開にしています。
このいただいた収益はiPad購入の資金にします。
購入したiPadは情報保障に使ったり記事を書くために使ったりします。
け、決してゲームには使わない…つかわ…使うかなあ…?

もちろん読んでくださるだけでも十分嬉しいです。
いつもありがとうございます。

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