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ムアーウィヤの髪の毛

イスラムの歴史に学ぶシリーズ(No.001)

ムアーウィヤ・ビン・アビースフィヤーンは、イスラム帝国が起こり、預言者ムハンマドの後継者(カリフ)争いが起きる中、最初の「王朝」であるウマイヤ朝をシリアのダマスカスに築いた人物です(在位661~680)。賢帝として知られ、その統治戦略の要諦を表す故事として、今日に伝わっているのが、表題の「ムアーウィヤの髪の毛」(شعرة معاوية)という言葉です。

イブン・ウマル(第2代カリフ・ウマルの子)が言った。「預言者ムハンマド(かれの上に平安あれ)を除けばムアーウィヤほど指導力の優れた人物は見たことがない。」人々は尋ねた。「(父君の)ウマルではないのか?」「ウマルは彼よりも善人だった。しかし、指導力においてはムアーウィヤが上だ。」・・・

ムアーウィヤにある男が尋ねた。「信徒の号令者よ。あなたは20年もの間、どのようにシャム(シリア)地方を治め、そしてその後はイスラム教徒の国をまた20年間も治めることができたのですか。」ムアーウィヤは言った。「私は、金で済ませることができるなら、舌(口)を挟むことはしない。舌で足りているときは、鞭を使うことはない。鞭で足りているとき、剣は使わない。剣は、どうしても必要なとき以外はしまっておく。もし私と民の間に一本の髪の毛があるとしたら、彼らが緩めたら私は引く。彼らが引くときは緩める。それが切れることはない。」

トランプ大統領のツイート「略奪が始まれば、発砲が始まる」は、暴力礼賛だとして、物議を醸していますが、この叡智とは真逆であることが分かります。トランプ大統領は「舌」の使い方を間違ったようです。

出典:
https://aal-alashab.net/?p=705

イスラムの歴史に学ぶシリーズ 

 エリコ通信社(https://erico.jp/)は、1994年に設立された発展途上の民間シンクタンクです。業務上、アラブ・イスラム世界の知識人の言説を読んでおりますと、しばしば、人間社会に潜む真実に対する深い洞察に触れ、感動します。このシリーズでは、そんなイスラムの叡智について、気づいたことを書き残していきたいと思います。

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