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2020年上半期ベスト諸々(書籍、映画、短歌)

書籍4選(上半期52冊読了)

上出遼平『ハイパーハードボイルドグルメリポート』2020
番組が面白くて本を読み出したけど、文章にする意義十二分にある。エンタメ感も残しつつ、ジャーナリズムが増されてて、筆者の実感も強く溶け込んで味わい強くなってる。

田中宗一郎・宇野惟正『2010s』2020
出てきた様々な言葉をしっかり噛みしめながら様々に向き合わねば。

郷ひろみ『紐育物語』1991
単純に読み物として、郷ひろみの誠実さ(読者に楽しんでもらおうというエンターテイナーとしての)がにじみ出て面白かった。

パトリック・ジュースキント 池内紀訳『香水 ある人殺しの物語』
ドルチェ&ガッバーナ関係ないやつ。文字から匂いがなんとなく伝わる面白み。


映画(今年放映4選・旧作8選)

上半期に新作は14本、旧作は49本観た。


『初恋』右肩上がりにキマってく染谷将太と戦闘力バカ高いベッキーが最高だった。
『音楽』「ただ鳴った」ことが全てを動かす、そして「向こう」に届いて歌として爆発する…岡村靖幸の声の使い方含めサイコーだった。
『架空OL日記』ドラマ版から好きだったけど、ディティールも、作品構造を示す終わらせ方もグレードアップしてたような気もした。あと、志田未来が最高すぎて…。
『フォードVSフェラーリ』レースシーンも、半沢直樹感あるストーリーも、人間関係(対立関係含め)などもどれもガツンときた。



『冷たい熱帯魚』2010 でんでん超怖い。「人生とは痛い」というセリフがガツンとクる。
『タクシードライバー』1976 自分が思う「善/正しさ」を他人に押し付けたり、必要以上に夢見ること、それゆえに撒く敵意と深まる孤独。
『キッズリターン』1996 どうしようもなく上手くいかない方に爽やかに転がっていく詩情よ。
『PERFECT BLUE』1998「自分」の位相のズレ、虚実入り乱れながら境界が曖昧になってく感じが怖面白かった。
『ANNIE HALL』1977 女性と、という以上に人との関わり方が見ててツラいものがあった。メタ的なものやアニメが急に挟まったりと映像的な面白みも多分にあった。
『HOUSE』1977 過剰にポップな脳内イメージ大暴れナイトメア。物語に戦争の存在と「愛」も添えつつ。
『愛がなんだ』2018 『ANNIE HALL』的なキツさはなかったものの、人との繋がりを通して自己を見つけることはかくも可笑しく悲しいものか、と思った。
『DO THE RIGHT THING』1989 今年のBLMを考える上で大きな作品となった。それと絡めずとも色を強調していたり、見応え十二分にある。


短歌10選

友の死を話題にしつついつになく生き生きと我ら菓子など食べぬ 栗木京子

牛馬が若し笑ふものであつたなら生かしておくべきでないかも知れぬ 前川佐美雄

何者か我に命じぬ割り切れぬ数を無限に割りつづけよと 中島敦

言はむすべ 為むすべ知らず 極まりて 貴きものは 酒にしあるらし 大伴旅人

改札機に券うらがへし入るること今日ただひとつの意思表示にて 安田純生

男らは罪ふかきゆゑみづからを縊る形にネクタイをする 桑原正紀

致死量の睡眠薬を 看護師が二つに分けて キャッキャと笑ふ 夢野久作

青春はたとへば流れ解散のごときわびしき杯をかかげて 大辻隆弘

風景を見るわたしを風景とする人がいる 背後に 伊吹藍

家族の誰かが「自首 減刑」で検索をしていたパソコンまだ温かい 小坂井大輔

上半期は基本怖い短歌にビビッとキた感じかな。

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