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【SDGs映画紹介】子どもたちが写すSDGsの根本 『未来を写す子どもたち』

「10年後の未来をつくるノート」編集部が、さまざまな視点からおうち時間をSDGsに触れる時間にするためのアイデアをご提案をしていく「おうちでSDGs」。今回は、SDGsの根本を考えさせる「映画」をご紹介します。

推薦者は、10年後の未来を作るトークでお話いただいた、映像クリエイターでWORLD FESTIVAL Inc.の近藤さん。エンターテイメントの専門家目線でSDGsを身近に感じられる映画をご紹介いただきます。

「未来を写した子どもたち」
作品情報
2004年製作/インド/作品時間85分/PG12(自主規制)
監督・編集・撮影 ロス・カウフマン
監督・撮影 ザナ・ブリスキ
編集 ナンシー・ベイカー
音楽 ジョン・マクダウエル

インド・カルカッタの売春窟に生まれついた子どもたち。彼らは外の世界を知らず、夢を持つ事も許されない。ある日、子どもたちはカメラと出会い、自分たちに無限の未来と希望がある事を知る。

■第77回アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞受賞作品
■文部科学省 特別選定(青年向き、成人向き、家庭向き)、選定(少年向き)

一部ではなく、全体として社会を感じられる映画

SDGsを考える際、ある一部の目標や問題だけを切り取りがちですが、その背景には人生や日常、文化、幸せ、様々な要素が絡み合っています。なぜ解決する必要があるのか、その先にある未来や希望とは何か。そんな「そもそも」を、子どもたちの視点を通して純粋な気持ちで発見させてくれるこの映画だからこそ、ぜひ多くの方に見てほしいと思い、おすすめします。

この映画の舞台はインド・コルカタ。売春窟に取材にきていた1人のイギリス人女性写真家が、現地に住みながら子どもたちに写真教室を開き、カメラを教えはじめることで、現状から抜け出してもらうきっかけを作りたいと思った気持ちから始まっています。最初は単純にカメラの楽しさを教えたいというシンプルなところから、次第にカメラを通して見えてくる子どもたち一人一人の才能や可能性の大きさに触れ、なんとかしてこの子たちの人生をよりよいものにできないかと奮闘するストーリーです。

元々、映画を作るためではなく日々の記録として撮り始めたことから始まったらしいです。だから、映像がすごくリアル。でも、なぜだか怖くない。現地のリアルな生活や日々の様子はしっかり捉えつつも、子どもたちの魅力や、かわいさ、無邪気さ、僕たちの身近にあるものとなんら変わらないようなシーンをたくさん、魅力たっぷりに映し出しています。映像は決して綺麗ではありませんが、だからこそのリアルさと、身近さがあります。なんだか観ていて匂いまでしてくるような映像です。

ソーシャルワーカーでもない、教師でもない。だけど、誰よりも子どもの可能性と希望を信じている、そんな写真家の彼女がつくったからこその視点と捉え方が、この映画全体の暖かくて優しい世界観と魅力を表しています。

世間で「SDGs」を語る際、社会問題ありきでその国や場所、人を切り取ってみてしまうことが多くあると感じます。捉え方によっては偏見やヒエラルキーを助長しかねません。実際現地に行ってみたら、そこにしかない幸せの形や、魅力、可能性、そしてリスペクトしあえることがたくさんあることを発見できるにもかかわらずです。

SDGsが掲げるカテゴリー別のゴールで分けて考えてしまいがちですが、現場にいくと様々な問題が複雑に絡み合い、根がとても深い。何から手をつけて良いのかわからなくなってしまい、途方に暮れる。僕たちもそういう現場にこれまで数多く立ち会ってきました。そんな中、何が本質なのかを捉えられるかが大切になります。

「SDGs」とは本当はどういうものなのか、その先にある希望の光とはなにか。そんな掴みにくい、答えの出しにくいものへのヒントが、この映画にはたくさん詰まっています。

自分ができるのは行動すること

いかがでしたか。映画は気軽に観られるものですが、そこには強いメッセージが込められています。おすすめされ、この映画を見た大学生は次のような感想を持ちました。

この映画を見て最初に抱いた感情は、「なんか楽しい」でした。子どもたちが写真を教えてもらいながら、自分が見た世界をいきいきと写していく、そんな様子に思わず顔もほころびました。

そんな写真家の卵たちが住んでいるのは売春街。抜け出そうにない生活にすでにあきらめを覚えている子も、何とか抜け出したいと考えている子もいます。私が小学生くらいのとき、いったい何を考えて生きていたのだろうと反省しつつ、今の私は売春街の外で生きるという選択肢を間接的にでも増やすことができるのかということを考えていました。ふと気づいたのが、「自分ができることの一つがSDGsの目標達成のため、行動することなんだ」ということです。

私たちは「SDGs、SDGs」と目標ばかりに目が向いてしまっていないでしょうか。もともと何をしたくてこの目標を設定するに至ったのか、世界の素敵な面も改善が必要な面も正直に写し、SDGsのそもそもにハッと気づかされる映画でした。

SDGsの各目標や取り組みを知ることと同時に、なぜこの目標を掲げているか、その意味を問い直すような本作品を見てみるのもよいかもしれません。