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詩) ゆく年くる年。ゆく牛くる虎。

さりゆくは牛。
やってくる虎。して、

虎は不用意に大きい自分の足跡を哀しんだ。
力任せに踏み込んできた道は荒れていた。
到底誰かが辿れるものではなかった。
虎は人知れず哀しんだ。
前途も独りであることを知った。

ならば虎よ、あの去りゆく牛を見たまえ。
ホモサピエンスの興じる喧騒をよそに
脇目も振らず
ただ向こうへ去っていくではないか。

そして見たまえ、牛の背を。
誰もが他人事よろしく背負わぬあの年月を
一人背負い込みゆくではないか。
後続を信じて
踏み均してゆくではないか。

そして虎よ、足元を見たまえ。
君がその後続ではないのか。
牛が背負いこみ一人歩いた道に
立っているのが君ではないのか。

虎は足に力を込めて歩き出した。
踏み鳴らす、踏み鳴らす。
しかしそれは誇示するためじゃない。
誰もが喧騒に身を投じているのを横目に
虎は独り行く。

相も変わらず虎は独りだ。
でももう虎は哀しくはなかった。
彼は牛を辿っている。
だからきっと誰かも
虎を辿っている。

いずれここに来るかも知れない
兎のことを想った。
踏み込む足に力がこもった。
虎は人知れず喜んだ。
独りではないことを悟った。




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