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詩のスケッチブック

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それとなく感じた詩の輪郭を、手元のペンとノートにササっと言葉で描いておく。そんな場所。エチュード集。
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記事一覧

詩のスケッチ)羞恥と諦念

とある大詩人のきらめく交友録であれ そこには暗澹が秘められているに違いない 広大なネガに、…

lino.
3週間前
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詩のスケッチ13)『優しさのすべて』を受けて

(※以下、若干ネタバレ注意?) 優しさのすべてなんてもらっちゃったら 気が狂って死んじゃ…

lino.
2年前
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詩のスケッチ12)梯子

雲間から 静かに伸びて くる梯子 雲色の 糸から梯子を 紡ぐは蚕 壺の底から 手が伸び梯子に 掴…

lino.
2年前
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詩のスケッチ11)震える秒針

泣き疲れて萎れた秒針が無謀にも進む
 ありふれた幸せが不遜にも空を包む 
かきくらす何某か…

lino.
2年前
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詩のスケッチ10)暗雲

暗雲垂れ込める夜には何を思おう 無力極まる四肢には何を希望しよう 半分ばかり顔覗かせるのは…

lino.
2年前
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詩のスケッチ9)水彩の記憶

雨に濡れた窓。 雨に濡れた窓越し。 雨に濡れた窓越しに見る。 雨に濡れた窓越しに見る景色。 …

lino.
2年前
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詩のスケッチ8)星の狭間に、鯨の背中をみた日には。

君を思えば 星々の狭間をのびのびと泳ぐ 鯨の姿が見えるのはどうしてだろう 暗がりに浮かぶ、星々が美しい そして光っているのだ、君の姿も 幸運にも君の姿を見た人は、 不思議と温かい気持ちに包まれる 自身も光であることに、 気づかせてくれる 君が行く先々に、咲きほこる花々が見える 君が行く先々の、光り輝く航路が見える とっておきの光をひとつ見つけた、いま 君はその光と一緒に、 どこまでもどこまでも広がる 星空の海をゆくのだ 静かに、穏やかに、けれども

詩のスケッチ7)寂しさ

ついつい自分のことを自慢げに話してしまうあなた それは、寂しいということ ついつい素敵な…

lino.
2年前
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詩のスケッチ6)なにもないとは言うけれど

口をそろえて 誰も彼もが言うのです ここにはなんにもないと。 不思議なくらい、 どこにい…

lino.
2年前
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詩のスケッチ5) 世界って美しくないじゃん

もういっそうっちゃりたいんだけど。 いい加減誰かに世界は美しくなんてないだよっていうこと…

lino.
2年前
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詩のスケッチ4) a sense of wonder.

ただ誰かの背を受け止める ベッドだけが置いてある部屋。 なだらかな凹凸が認められる白い壁…

lino.
2年前
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詩のスケッチ3) 哀しき人

自分の孤独に無自覚でいる人。そんな人のそばにいる時ほど、哀しいことはない。 孤独に無自覚…

lino.
2年前
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詩のスケッチ2) ありえたはずの私のブルース

「あ」と言えば 「い」と言わなかった私が悲しむ かと思えば 「う」と言わなかった私も悲しん…

lino.
2年前

詩のスケッチ1) Crisis

あなたは早朝に辿り着いた。 南欧の ぬくい空気を纏う街の とある安宿に。 あなたは目にした。 木製の玄関をくぐってすぐ アーチの向こうに見える中庭で なにかせっせと筆を動かしている彼を。  やあ。  ── やあ。  なにをしているの?  ── 絵を描いているんだよ。  見せて!  ── いいよ、ほら。 あなたは絵を思い出せない。 好きだと思ったことだけを 覚えている。  ── レコードを聴かないかい? 宿に置かれたレコードに あなたは共に耳を澄ませた。 ニーナ・