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-日本と西洋の身体をつなぐ橋②- サビン・シタドレー奥野さん


*サビン・シタドレー奥野さんへのインタビュー中編です。このインタビューは2020/12/5に開催されたWS前に行われたインタビューです。前編をご覧になりたい方はこちらから。


ーーー荒川:合気道のような対人練習では、緊張してしまったりとか、自分を感じる事が難しくなったりするということを先ほど言われていましたが、フェルデンクライスを通して、そういった人との行き来がある場合のことにも活用できたりすることはあるのでしょうか?

サビン: 例えば ATMのレッスンを受ける時、なんであの人のように出来ないのだろう?とつい自分と他人とを比べたり、だいたい人は自分より良く見えていたりしますよね。エリザベス・ベリンジャー先生(フェルデンクライストレーナー)は、そういった精神面に対しても言葉にしてくれたところがあって、からだの観察だけじゃなくて、所々感情の観察にも意識を向けてくれました。後にそれはとても役に立ちましたし、私自身も人間のすべての面を教え方に入れていくよう励んでおります。

そして、FIとなるとまさに合気道ですね。今度のワークショップのレッスンでも参照とさせていただいている、ジェフ・ハラー先生(フェルデンクライストレーナー)ですが、彼に出会ってもっと彼から学びたいと思ったのですが。ジェフ・ハラー先生も精神面も含めてのからだの使い方を考えて教えてくださりますし、FIを提供する際、自分のからだの使い方が効率く、癖のなるべく少ない使い方であればあるほど、FIの出来も良くなるように思います。なぜなら私たちは受ける人の「環境」に、一旦なってあげるのですから、その「環境」はニュートラルであればあるほど、受ける方のことが明快になりうるというのが、私の理解です。違う理解があってもいいと思いますけど、私にとって合気道をやるときと同じように肩に力を入れたりしないで、無駄な力を使わないで、姿勢良く、呼吸を続けて、心も落ち着かせて、何のことにも注意を向けられる、そういう良い武道家が身につけている身の使い方、精神の在り方と同じなんだとここ7、8年でどんどん気づいてきています。

だからフェルデンクライスをやりながら合気道の技も使うし、稽古できるような気もします。でも、スピードは違いますよね。大体FIだとゆっくりしたペースでやれますし、相手が急にかかってくるということもあまりないですから(笑)合気道の稽古はスピードがあって、勢いがある中での身体の使い方が、またもう1レベル高くならないといけないかなと思います。ちなみに、スピードのある動きによってエネルギーや新たな能力を得られるとかは、ATMでも経験できたりしますよね?転がったりして、かなりダイナミックな動きの中で意識を自分にだけ向けないで、環境にも向けるレッスンとか。

ーーー吉田:僕もものすごくその辺が興味あって、フェルデンクライスに最初に興味を持ったきっかけも武道からだったんですけど、動きとかフェルデンクライス自体に興味を持って、プラクティショナーの仕事をし始めて、僕自身の技術向上のためにいろんな武術を学びに行ったりしてたんですね。ロシアのシステマという武術とか、日本の古流の武術、中国の武術を研究している方々に習いに行ったりして、一つすごく面白いなと思ったのが、いろいろ対人でやりながらも自分に注意を向けながら、内観していくこと。その内観したものが自分の動きとして出ていくと、それが術とか技になるっていうのが興味深いなと思っています。今年コロナになって、なかなか外出られないときに、ネットでいろいろフェルデンクライスの情報をザッピングしていた時、さっき言っていたジェフ・ハラー先生がすごく僕の興味をえぐったというか、YouTubeで動きを見させてもらったり、彼の発言を聞いていると、自分の内側にあるものを身体で表現できる人だなと思って、僕もジェフ・ハラー先生から学んでみたいなと思っていたんです。そして、今回のジェフ・ハラーさんの研究テーマを元にサビンさんがレッスンをしてくださると聞いて、それが一体どういうものであるかも興味津々なので、今度のワークショップでやろうと思っていることについてちょっとだけ教えていただけますか?


サビン:まだまだ私も学んでいる最中ですけど、3年ほど前に彼が、IOPS=”Internal organization and profound strength”(内的組織化と広大な力)というアドバンストレーニングをスイスで開催していました。このようなテーマでもっと彼から学びたいと待っていたのです。それで、去年の12月からまたIOPSを7日間学びましたが、今年の6月に予定されていた継続の8日間はコロナで中止になり、12月にオンラインでの開催になりました。身の効率の良い使い方が体験できるレッスン、そんなテーマに関するATMレッスンを教えたいと思います。

ーーー吉田:確かに、ジェフ・ハラー先生のFIの動画とかを見ていても、彼の見ている明確なやり方っていうんですかね、何かあるのかなと思って、すごい興味深く見ていたんですよね。

サビン:いくつかのポイントがあります。例えば、足部(または別な床に触れている部分なら、その部分)より床半力をどのように脚全体に伝えて股関節に伝えて、背骨に伝えるとか、呼吸をどのように使えば不統一な緊張が身に走らないかとか。モシェ・フェルデンクライス博士が言っていましたようですけれども、人の頭を持ち上げる時に、腕の張力を変えない、と。ジェフ・ハラー先生はそれを一体どういう事だろう?と、何年も自分の中で研究されたようです。それを私も彼から学び始め、だいぶ誰かの頭を持ち上げやすくなってはいます。もちろんそれそのものは今度のワークショップでは教えることでできませんが、その基礎となるいくつかには触れることはできると思います。

ーーー吉田:ありがとうございます。ワークショップが楽しみです!


サビン:ハラー先生には了解を得ており、僕のATMレッスンをどんどん使ってと言っていただきました。

ーーー吉田:めちゃめちゃ楽しみです!

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サビン・シタドレー・奥野
(SFV認定フェルデンクライスプラクティショナー・ アシスタントトレーナー)
経歴
1994年 高校の交換留学生として初来日
2002年 ジュネーヴ大学修士課程卒業
2003年 再来日  
2006年 フェルデンクライス®養成コース入学。
      東京大学人文社会系研究課博士課程修了
      早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究員
2010年 フェルデンクライス®・プラクティショナーとして国際認定資格取得
以後フェルデンクライスやシェルハブメソッドの養成コースで通訳やインターンを行う
2013年 スイスへ帰国
2018年 フェルデンクライス®・アシスタント・トレーナーの国際認定資格取得


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