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OVER THE RAINBOW

メロディを大きく崩して演奏をしてカッコよくなる曲はあります。ができればあんまり崩さないで演ってほしいなーと思う曲の代表格がこの曲ですね。

美しすぎますよね。
メロディがもってる力がすごく強い曲なのでストレートに揺らさないで演奏してほしいなーといつも思います。
それでいうとジャズの演奏だとほぼやりすぎちゃうと思ってます。バドパウエルの演奏とか、確かにかっこいいんですけど、そんなバキバキ弾かんでも、と思います。

メロディはほぼダイアトニックで構成されていて、サビの後半だけ調整からみると増4度の音が使われていて、盛り上がる。その構成もすばらしく、もうアラもなにもない、本当に美しい曲だと思います。

まえにサックス仙人川嶋哲郎が美術館かなんかでアカペラで吹いてるYouTube動画があったような気がしましたが、記憶違いだったか。それすごいよかったです。

こんなにメロディがシンプルだとコードをいじれる余幅が多いからか、割とみなさんコードをいじりますよね。逆にいうとこれっていうコード進行はない。

で、僕は自分のバンドでも昔よくやっていたアレンジで非常に好きなコードアレンジがあります。

手嶌葵が映画曲集の中で歌っているんですが、このコードアレンジは非常に秀逸で、手嶌葵はほとんどメロディをそのまま、朴訥と歌うだけなんですが、細かいコードアレンジが飽きさせない仕組みになっていて素晴らしいです。
3回ともAが違う進行なのがジャズ屋では考えつかない感じでいいです。

もちろん楽譜はなかったので、当時使ってた譜面を引っ張り出して、少し修正してみました。

ちょっと怪しいとこもあります。すみません。



手嶌葵はAで歌ってますが、ここはジャズらしくEbで。

このアレンジをどなたがしたのかは存じ上げませんし、ひょっとしたら誰かの演奏の元ネタがあるのかもしれませんが、すごくいいです。
ただちょっとジャズ的にやるにはスッキリしすぎてるかもしれないなと、今回は思ってしまいました。
昔ピアノの人とこのアレンジを演奏してる時に特に3回目のAが魔法みたいだね、と映画(オズの魔法使い)に準えてちょっと気の利いた感動の仕方をしてました。

楽譜を検索していていくつか似たようなアレンジはあったので元ネタはあるのかもらしれないですね。
僕はそれは知らないです。

で、1箇所自分の好きなコード進行を足してるんですが、1小節めの後半にVII7b9を入れるやり方です。これ僕は何を聴いたのかちょっと思い出せないんですが、メロディがb9だし、VII7というノンダイアトニックのコードを通る感情の動きがすごく好きでして、手嶌葵アレンジに加えて使ってました。

メロディがb9になります。が、Ebdimのルートと考えます。

これはいわゆるあれです。Just the two of us進行ってやつです。YOASOBIの曲の99%はこの進行なんじゃないかと言われてる(冗談ですが、冗談抜きに多い)あれです。
たしかこの進行がある曲を探していたがスタンダードにはなく、当時僕のバンドに無理クリ持ち込んだのを思い出しました。

さて、この7度セブン、他の記事にも書いてますが、III7 VI7 VII7は他のセブンスと扱いが違いまして、これをセカンダリードミナントとか、一時転調みたいなこという人もいるんですが、いらないです。サンロクナナドセブンと覚えて、このコードのときはb9をコードトーンと捉えるとわかりやすいです。
ここはミクソリディアンb2b6(ハーモニックマイナーパーフェクト5thビローのことです)というスケールが第一選択肢なのですが、そのフレーズを始める時に、b9、3、5、b7から吹き始めると綺麗に次のマイナーコードに解決します。

ちなみにこのコードってなんですか?b9がルートと考えると実は元のVII7の半音上のディミニッシュコードなんです。
もう要するにサンロクナナドセブンは半音上のディミニッシュとおんなじ、と覚えてしまった方がいいです。

そしてその時はディミニッシュのコードトーンからミクソリディアンb2b6スケールをなぞるだけで、あら不思議、簡単にノンダイアトニックのサウンドを表現できてしまいます。

2回クリシェが出てきます。最後のAパートは平行調になって、ルートがクリシェしてます。
ところでこのクリシェというやつは何気にジャズではソロをとるときも非常に重要です。



クリシェというと半音の事をいうんですが、例えばキャノンボールアダレイのソロを研究してみると、音の山が非常に綺麗に加工していく八分音符とは別のラインが見えてきます。しかもそれがシンコペーションしていて躍動感がある。

ぜひ誰かの良いフレーズをコピーする際は一音一音、八分音符だけに目をやるのではなく、少し俯瞰で見てみると別の美しいラインが出てきて、それを実は我々は美しいと感じているんだなと気付かされます。

アダレイは特にメロディが重なっているようなフレージングが多いような気がします。いや、みんなすごい人はそうなんですけどね。

ただ八分音符を並べるだけでいい音楽にはならないということですよね。

話ずれました。
このマイナーコードでルートが下がっていくクリシェというのは実は別のコード進行のバリエーションです。

結論をいうと

Im Immaj7 Im7 Im6

Im V7 Im VI7

6度マイナーと考えると
VIm lll7 VIm II7
です。

これは一緒です。
マイファニーバレンタインなんかもそうですよね。

シンプルなメロディのなかで、さまざまなコード進行を使って、またそれもシンプルだが、飽きない工夫がある、という良い例だと思います。

久々にやってみたくなりました。

ご自由にどうぞ。

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