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「任天堂のゲームは面白い」は正しいのか?ゲーマーはメーカーより○○を注目すべき

昔から不思議だったのが、ゲームコミュニティは何故「企業名」で作品への期待や評価を変えるのか、ということだった。

任天堂でなくとも、フロム・ソフトウェア、スクウェア・エニックス、あるいはSIEやマイクロソフト。どこだっていいのだが、「あの企業が送る最新作!」というメディアやSNSの評判に反して、そもそもその企業が作ってすら無い事例さえあるのだ。

ブランドで期待する姿勢はオタクとして大いに共感できるが、ゲーム企業にばかり拘泥してゲームタイトルの中身を吟味しきれているのかという疑問が湧く。

ここで改めて、「面白いゲームは誰が作っているのか?」言い換えれば「面白いゲームが発生しうる条件・環境とは何か?」について、そろそろ考える必要があるのではないだろうか。

筆者が多くのゲーム関係者……メディア編集者、クリエイター、プロデューサーから直接うかがった話や、筆者自身の批評家としての経験から、「作り手」の正体を探りたい。


何をもって「任天堂のゲーム」とするのか?

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まず、特に日本国内でゲームを評価する上で問題だと感じているのが、同じゲーム企業でも「パブリッシャー」「ディベロッパー」という役割の違いが、あまり知られていない点だ。

「パブリッシャー」と「ディベロッパー」、直訳すると「出版社」と「開発社」で、前者がゲームの販売、広報などを請け負う企業で、後者がゲームの開発を担う企業、つまり「ゲームの面白さ」に直接繋がってくる企業だ。しかし両者は特に日本において混同されがちで、単に「任天堂が販売した」というだけなのに、何故か「任天堂が作った」と誤解する人が多い。

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Steamでは、はっきりと誰が作り、誰が売っているのか判別されて表記される

この誤解の根本には、そもそも日本と海外でゲーム産業の構造が違う点にある。かつて日本のゲーム企業は、自分たちで作り、販売することが主流だった。任天堂、カプコン、SEGAいずれも社内で開発と販売を両方行う。まぁこれは、元々任天堂が「初心会」という独自の流通が存在したり、そもそも流通そのものが特殊だった背景なども考慮しうるが、ここでは割愛する。

一方で海外ではパブリッシャー優位の時代が続き、Electronic Arts、Ubisoft、Take-Two Interactive等のパブリッシャーがお金を出し、それより小さなディベロッパーが作品を作って納品する、という関係性が多かった。(販売と開発を両立したBlizzardなどの例外もある)なので比較的、パブリッシャーとディベロッパーはそれぞれ別軸の評価で論じられてきた。

しかし現在の日本企業も大企業として成長した結果、EAやUbiのようなパブリッシャー的なビジネススキーム、つまり小さなディベロッパーを買収したり、あるいは投資することでゲームを作らせ、自分たちの流通や広報に乗せて販売するという手法を確立しているため、上記のように「販売しただけで作ったように誤解される」例が増えている。

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カプコン、スクエニは輸入代理店も務めているが、すこぶる評判は悪い


ところが、日本は未だにゲーム企業=ディベロッパーとみなされがちで、他社作品をパブリッシャーとして販売しただけの作品も「開発したもの」とみなされやすい。

今年、この論点で筆者個人が引っかかったのが『メトロイド・ドレッド』である。本作は確かに任天堂の坂本賀勇等が関わってる点で「任天堂共同開発」なので同じではないが、あくまで開発のメインはスペインにあるMercurySteamで、任天堂ではない。しかし、実際にはNintendo Directで大きく宣伝されたり、あの任天堂の伝説的シリーズの続編ということで、「任天堂の新作」と考えて期待し、評価したようなレビューが散見された。

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Engadgetのレビューでは、完全に「任天堂のゲームだから素晴らしい」という任天堂ブランドありきの褒め方で、MercurySteamの名前は一度も出ていなかった。

確かにMercurySteamを実績あるディベロッパーとして評価した人もいるだろうが、「任天堂」や「メトロイド」というブランドがなくても今のような高評価だったのかと言えば、筆者個人としてはそう思えない。実際、本作の発表時のトレイラーを見返してみたが、MercurySteamの名は一度も出てこず、代わりにNintendoの商標のみ表示されていた。

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当然ゲームの質を決めるのは、当然ながらゲームを作るディベロッパーであり、パブリッシャーではない。無論、そこで使われてるシリーズ名も何の担保にはならない。『ファイナルファンタジー』という名前がついただけの微妙な音ゲーとかも論外だ。『ポケモン』という名前のついたゲームも8割ぐらいはゲームフリーク以外が作ったゲームだし、UbisoftやEAは………………むしろパブリッシャーのせいで負のイメージが付いて作品が過小評価されてるような……。


もう1つ、同じような「誤解」を生みがちなのが、「ファースト/セカンド/サードパーティ」という概念だ。

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